よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

フロー体験から眺望する人的資源

2009年06月18日 | 日本教・スピリチュアリティ


昨日は、Beyond Boredom and Anxiety : Experiencing Flow in Work and Play
By Mihaly Csikszentmihalyiなどを題材にしてプレゼンテーション+わいがやディスカッション。面白かった点、コメントなどのノート:

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Mihaly Csikszentmihalyi:
ハンガリー出身のアメリカの心理学者。幸福と創造性の研究における彼の仕事で有名。
Flowの提唱者としての長年調査をし、このトピックに関する多くの書籍と記事の著者である。

バックグラウンド:
1934年、ハンガリー外交官を父としてイタリアで生まれる。
1956年、アメリカに渡り、1970年よりシカゴ大学心理学科教授、教育学科教授。
1999年、シカゴ大学を定年退職後、カリフォルニア州クレアモント大学院大学教授。
現在アメリカでもっとも注目される心理学者の一人であり、社会学、文化人類学、哲学等広い守備範囲をもつ。
全米教育アカデミー、全米レジャー科学アカデミー会員

出版物
[1975] Beyond Boredom and Anxiety: Experiencing Flow in Work and Play
→ 楽しみの社会学
[1978] Intrinsic Rewards and Emergent Motivation in The Hidden Costs of Reward
[1988] Optimal Experience
[1990]Flow: The Psychology of Optimal Experience
→ フロー体験 喜びの現象学[1996]
[1996]Creativity : Flow and the Psychology of Discovery and Invention
[1998]Finding Flow: The Psychology of Engagement With Everyday Life
[2002]Good Work: When Excellence and Ethics Meet
[2002]Good Business: Leadership, Flow, and the Making of Meaning
→ フロー体験とグッドビジネス―仕事と生きがい[2008]

※コメント:チクセントミハイはサーファーでもある。彼によるとサーフィンもフロー経験をもたらしてくれるそうだ。学会でハワイにいったときサーフィンで事故に巻き込まれ瀕死の重傷を負ったところをコリン・ウィルソンに発見されたという逸話がある。

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フロー体験、成果主義などを脳機能の観点からとらえたもの。

フローと言う考え方を提唱した事で有名である。フロー(英語:Flow )とは、人間がそのときしていることに、完全に浸り、精力的に集中している感覚に特徴づけられ、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における、精神的な状態をいう。ZONE、ピークエクスペリエンスとも呼ばれる。

フローとは
○ 一つの活動(行為・行動)に没頭して、他の何事も見えない・問題にならない状態
○ その活動(行為・行動)が純粋に楽しいから時間・労力を惜しまない

組織におけるHRM観点でのフロー
○ 一つの活動(行為・行動)に没頭して、他の何事も見えない・問題にならない状態
 → ある時期、ある部分、ある人材、….など極所では大いに有効である
  → それら極所を大局的にビジネスに結びつけるマネジメントの下で

○ その活動(行為・行動)が純粋に楽しいから時間・労力を惜しまない
 → 特定のスキルを身に付ける場合に有効である
  → 自身の設計スキル、デバッグスキルは、(不謹慎だけど)楽しんで向上
   → 人材育成における、目標を絞ったOJTに有効である

昨今のあらゆる意味で多様化された人材に対して、組織のベクトル
に合わせた成長が望める育成戦略が必要である。

個別に気づきを促すサポートを続け、擬似的フロー状態をつくる


本の中では、極限状態や自己の限界に挑む時に、人間は楽しみや喜びを感じると
記載されている。

ITエンジニアは、うつ病になりやすい職業だといわれている。
- 短納期
- 作業時間
- クライアントからのプレッシャー
- 職場環境
など様々な要因がある。
上記の事から、ITエンジニアはフロー状態が長く続き、限界を超えすぎる傾向にありフロー中毒の結果から“うつ状態”になる事が予測できる。

満足感、充実感のようなマイクロフロー状態が職場では必要であると感じる。

※コメント:この文脈でのマイクロフローの重要性の指摘はもっとも。企業の場には、マイクロフローづくりが必要だ。→新しいMOTマネージャの役割。


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1)外発的動機(新皮質的)
外から与えられる報酬に欲求が満たされる行動や思い。物質的欲求を満たす。

新皮質
・理性的、理論的
・金銭、名誉、地位、
・人気を求める。
・出世欲など。
・法律に反しない。
・競争に勝つ。
・他者より優位にたつ。
・評判
・食欲、性欲

2)内部的動機(古皮質/旧皮質的)
外部から与えられる一切の報酬とは無関係に、心の底からこみ上げてくる喜びや楽しみ。

古皮質
感情(喜怒哀楽)

旧皮質
本能的な欲求
情動(安心、不安、恐怖)
恋愛、性愛

3)成果主義
・人参ほしければもっと働きなさい。
新皮質活性化
   ↓
・旧皮質から込み上げてくる喜びや楽しみがわからなくなる。
   ↓
・仕事の義務化。
やる気がないので集中力が減り、ミスが増える。
   ↓
・フローに入ることができない。
   ↓
合理性を超えたところに確かな満足感と、生活に楽しさを与える。
旧皮質的な現象に、フローの真髄!!

※コメント:脳生理学や脳科学は認知心理学の隣接分野。さらにこの議論に脳の「左右」論が加わると面白いだろう。ex. コリンウィルソンの「右脳の冒険」などの文脈。あと、エンドルフィンやセロトニンなど神経伝達物質の分泌との関係も面白いか。

資本主義の暴走課題もこの論点から掘り下げてゆくといいだろう。

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人的資源管理の立場からフローを仕掛けることはできるのか?

意見
・すべての仕事に対してできるわけではない。
・外的報酬を求める人や、営業は難しいのでは。
・内的報酬を求める思考の人に対しては仕掛けることができるのでは。
・外的な報酬を求める人は淡々と仕事をする。
→ 外的な報酬でも、フローに入れる人はいるのでは?
きっかけは外的報酬でも、仕事の達成感といったものが、内的報酬につながるのではないか。
チャレンジがスキルを上回りはじめると、不安になり、逆にスキルが、チャレンジを上回りはじめると、退屈を感じるようになる。

結論
・外的報酬で仕事をする人も、フローへ達することはできる。
・能力やスキルとチャレンジする取り組みによって仕掛けられる。
・ただしバランスが大切。バランスが悪いとフローにはならない。
・また次の何が起ころうとも対処できる状態は必要。
・常にスキルとチャレンジのバランス状態を仕掛けられれば、外的報酬がスタート
・でもフロー状態へ仕掛けることは可能。
・ただしバランスは非常に難しく、常に結果を求める企業では難しいのではないか。

※コメント:ともすれば儀式化しやすいorヤラサレ感覚が増しやすいマネジメントサイクル内のイベントにマイクロフローを発生させる工夫などあればいいだろう。

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知的刺激に満ちたディスカッションだったと思う。
2010年代のHRM,人事制度デザインには以上のような論点を埋め込むべきだろう。

後でMOTカフェの飲み会に合流。