よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

嫌われ成果主義の逆襲

2009年05月11日 | ニューパラダイム人間学


日経ビジネスの特集、「嫌われ成果主義の逆襲」はダイヤモンドの「大失業減給危機」と同じ現象を2つの異なった視点から眺めるものだ。

アンケート調査の結果はこんな具合だ。

・「勤務先が成果主義型の制度を取っている」と答えた944人を対象に、勤務先の成果主義の成否を聞いたところ、「失敗だった」とする回答は68.5%に達し、「成功だった」という回答(31.0%)

・「成果主義に基づく自身の評価に満足しているかどうか」についても聞いたところ、「不満である」は43.3%、「満足している」16.2%。

・「成果主義型の制度の導入後、仕事に対する意欲が向上したか」は、「向上していない」36.3%。「向上した」16.1%。

・「職場に何らかの弊害が発生したかどうか」は、「発生した」65.7%。

・「制度そのものより運用上の問題が大きい」が66.0%。「制度そのものの問題が大きい」は32.5%。


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筆者は1980年代後半からHay Management Consultantsにて、大企業の「嫌われ成果主義」の導入相談に応じてきた。独立してからも、この手の相談、コンサルティングは引きも切らなかった。

成果主義はそれを支える企業体質とのスリアワセで考えなければいけない。

社畜育成型の年功体質、共同体体質、職能資格インフレ体質、ポスト不足体質、中高年賃金コスト体質、曖昧評価体質の企業ほど、成果主義へのニーズは大きかったし、いまでも大きい。

もっと細かに見ていくと、上記のような企業組織には共通点がある。
・上層部ほど職務の定義があいまい。
・上層部ほど職務の成果責任の定義があいまい。
・社畜度が高い経営層が、管理職や一般職に成果主義を強いるといういびつ構造。
・経営層こそが成果主義とはほど遠い。

こういう会社ほど、成果主義へのニーズは大きいのだが、また体質としての乖離も大きい。だから、成果主義を導入したときのねじれ現象が生じるのだ。現場からの反発も強い。また問題をとらえそこなうと、「虚妄の成果主義」のような年功賃金逆行をよしとする、これまた被害者意識迎合型の論説もウケたわけだ。こういう議論に、やれ人本主義だ、新自由主義批判だのが混ざってきて、「嫌われ成果主義」のムードが醸成されてきたのはいかにも日本的だ。

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「転職経験がある」が66%、「会社が倒産するかもしれない」が42%、「解雇されるかもしれない」が30%をしめる35歳のロスジェネ世代が企業の中核をしめ、オジサン社畜世代が、定年、出向、雇用調整を受けている現在、新しい成果主義が再度復活する機会が訪れたのだ。

ロスジェネ世代は、その上の世代に比べ、成果主義をつきはなして冷静に受けとめる素地は格段にある。また成果主義をポジティブに個人で受け止め展開すれば、その創造的な行き先は、独立・起業・セルフエンプロイメントとなる。旧型成果主義には、この個人のキャリアを起業に発展させていくパスがなかった。

不況・恐慌の過程は創造的破壊が顕在化する。成果主義を貫徹するためは創造的破壊のための冷めた構えが必要だ。だれもがハッピーな成果主義はありえない。そんなものがあれば、それこそ、虚妄だ。

役員、役職者、正社員を聖域化せず、全従業員を成果主義の俎上に載せることによって、社会的にリスクを取らされてきたワーキングプアに社会資源が再配分されれば尚いいだろう。

逆張り起業家(アントレプレナー)のすすめ

2009年05月11日 | ビジネス&社会起業


不況・恐慌のときは、だれしもが不安を感じて大胆な一歩を踏み出せない。こういうご時世だからこそ、逆張り発想と時代への逆噴射が大切だ。

大学院の授業、講演、身の上(起業)相談などでよく語る起業に対する4つの新しいアプローチをちょっと紹介する。

(1)能力開発型起業(能力開発のため起業する)

そりゃ、起業してお金儲けできればいい。でも創業からイグジットまで一通りやった経験を振り返ると、お金よりも能力のほうがたまった気がする。もとがトロかったのでそう感じているのかもしれないが、身銭を切ってビジネスをすると、身の周りで起きることがすべて勉強の機会となる。

財務、ファイナンス、マーケティング、顧客開拓、人事・労務管理、PR、IR、統計学などの形式知系のスキルはもちろん、修羅場のくぐり方、葛藤処理、ケンカ、ナダメ、スカシ、シノギなど状況処理能力、人間関係スキル、コミュニケーション能力など暗黙知系、実践力系も知らず知らずのうちに伸びる。

起業というのは成長の場であり、その場を自分で創るというのは究極の成果主義の実行である。

(2)リスク軽減型起業(リスクを軽減するために起業する)

今の時代、規模の大小を問わず組織に雇用されているリクスは、独立して働くリスクより大きい。NHK「35歳を救え」という特集でも紹介していたが、35歳の平均的なサラリーマンは「転職経験がある」が66%、「会社が倒産するかもしれない」が42%、「解雇されるかもしれない」が30%。

内心大きな不安を感じながらビクビクしながら雇用されているのだ。ならば発想を変えよう。他人にコントロールされるリスクと自分でコントロールできるリスクを比べたら、どちらがいいか?明々白々、後者にきまっている。

自分でリスクを取ってコントロールするほうがすがすがしいし、精神衛生のためにもよいのだ。

(3)セルフヘルプ型起業(自分で自分を雇用するために起業する)

英語では起業、起業家的行動様式のことを"Entrepreneurship"っていうが、Self-employmentともいう。いずれもSelf-help(自助努力)の延長にある。自分の能力をテコにして、他者に雇用されるというフックをかければサラリーパースン(Salaried person)。逆張りで、自分が自分を雇用するようにすれば起業となる。

そのためには自分以外のモノ資産ではなく、自分の人的資源(スキル、技術、ノウハウ、人脈、商脈など)でジカに仕事ができるナレッジ・ワークを確立しよう。自分を盛り上げるために、自分に知的シャワーを浴びせることがセルフ・ヘルプに直結する。

自己責任で自分の人生は自分で切り開く。それは自分を雇用することから始まる。

(4)ビークルフリー型起業(ネタ優先、制度はあとで)

なにをレバレッジにして起業するのか?このレバレッジとなるものがビジネスモデルとビジネスプランだ。世の中にないなにかで、絶対的なニーズがあるものを金の草鞋を履いてでも探して見つけよう。市場のなかのムリ、ムダ、ムラ、ネジレ、スキマ、ウラガワなどは機会の宝庫だ。

そのあとで、ビジネスの出口イメージ、社会性、ボトムラインなどをじっくり考え、ビジネスのビークル(制度的乗り物)を選ぶ。個人事業、任意団体、NPO,株式会社などなど、ほんとうにいろいろあるので、ナカミ(コア技術、コアサービス、ビジネスモデルとビジネスプラン)をじっくり練ってから構想する。逆だと発想が狭くなりダメ。

絶対的に世の中に必要とされることだったら、社会起業でもゼニ儲け起業でもどちらでも成功するだろう。つまりビークル(制度的乗り物)を選ぶことができるナカミが大事。

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サービスの差別化に役立つコア技術をキチンと身につける。ただし、いい技術が市場で売れるわけではない。市場で売れる技術がいい技術なのだ。とくに、エンジニアバックグラウンドを持つ人は、この発想のギアチェンジが大事だ。

すくなくとも他人に雇われているより創造的だ。他人任せの人生(社畜)がいいのか、自分で切り開く人生(創造的人間)がいいのか。断然後者だ。不況・恐慌期に起業するヤツはホンモノだと思う。