よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

社畜とイノベーション

2009年05月08日 | ニューパラダイム人間学


非正規社員の比率は一貫して上昇傾向を示している。雇用主はコア人材を長期雇用で確保しながらもオペレーション人材の固定費を変動費化してきている。人材派遣に関わる規制緩和もこの趨勢を後押ししてきたとよく説明される。



雇用形態別に年収の分布を見ると、高額年収者は正規従業員であり、派遣社員、パート、アルバイトは相対的に低い。



人類が長い歴史を通して形成、維持してきた結婚という制度。その制度を活用するかしないのか、について男性の正規・非正規従業員の間には差(あえて格差とは言わない・・)が存在し、その差は年齢が高まるに従い大きくなっている。

かくして新卒者は正規従業員となるべく内部市場を目指すことになる。相対的に高額な賃金(結婚という制度を活用するに足る)を安定的に確保しようというのは合理的な判断であると、これまたよく説明される。

しかし正規従業員には終身雇用制度が適用される、というのは共同幻想のようなものだ。そんなもの実体のある制度として存在したことはない。もとはといえば、もう亡くなってしまったがジェームズ・アベグレンが発案したある種のキャッチ・ワードである。この件については、本人と会ってきちんと確認した

だから目先の利く新卒者は3年くらい勤めて外部労働市場でも通用するポータブルなスキルを身につけてとっとと会社をクイットするのが近年の傾向だ。

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「会社に人生を預けるな」(勝間和代)という本があるそうだが、中身はともかく題名には賛成。そもそも、被雇用者として人生を会社に預けてもロクなことはないからだ。

その幻想に比較的素直に寄り添ってきた大企業のサラリーマン(というと女性差別なので、最近ではサラリー・パースンなる便利な言葉もできている。いわゆる長期雇用されてきた被雇用者)の内面には暗い病巣が巣食うことになるからだ。

労働経済の小池和夫『日本産業社会の神話』によると、日米の企業で正規雇用の社員に質問すると、答は次のようになる。

・「この会社をよくするために、いわれたよりよく働く」:日54.3%、米74.3%
・「私の価値観はこの会社の価値観とまったく同じだ」:日19.3%、米41.5%
・「いま知っていることを入職時に知っていたら、もう一度この会社を選ぶ」:日23.3%、米69.1%

「通説」では日本人は集団帰属性が強く、会社第一主義と言われてきたが、実はアメリカとの比較において、会社のことが好きではないし一体感も感じていない。ようは、長期雇用のメリットをせこく確保しながらイヤイヤ仕事をやっているのだ。楽しく働いていないのだ。社畜と呼ばれてもしょうがない。

楽しくもない、かったるい、イヤイヤ仕事をやっている会社にはフロー経験が発生する場も生まれないし、イノベーションの創発を期待すべくもないだろう。かといって、新規開業率(創業率)は廃業率を大きく下回ったままだ。

イノベーションを疎外しない人的資源・雇用政策やいかに??技術経営(MOT)にとって、その方法論の実行レイヤーである人的資源管理、雇用が鬼門なのである。