よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

GM連邦破産法11条でGovernment Motors誕生は必至

2009年05月30日 | 恐慌実況中継

<GM中興の祖アルフレッド・P・スローン>

ゼネラル・モーターズ(GM)の債務帳消し交渉で、債権者の9割(債権額ベース)から同意を得る同社の目標達成が27日、困難な情勢になった。6月初めには大騒ぎになるだろう。

債権者のなかでも大口投資家は当然、債務削減には大反対。GMを破綻させてから再生の過程で、経営陣を法廷に引っ張り出して、ちょっとでも悪くない条件での債権回収を目指すほうがいいと判断したからだ。大口債権者は、政府資金という名前のキャッシュを当てにして回収を図るのである。

アルフレッド・P・スローンの卓越した経営手腕にリードされていたころのGMは規格大量生産型技術経営の鏡であった。

高い「擦り合わせ」度が必要な製品の自動車は、特別に最適設計された部品を微妙に相互調整しないとトータルシステムとしての機能が発揮されない製品。企業買収を繰り返してGMグループを垂直的に統合してきたのだ。

しかし、短期的にマネーメークするためには、次世代自動車へ至るイノベーションの追究よりは、ファイナンスで儲けた方がよいとGMは判断した。非常に手厚い、雇用者用の企業健康保険、企業年金制度を維持するためにも。

そしてGMはサブを含めるプライムローンをフル活用してガソリンをガブ飲みする自動車を売って、それを証券化してウォール街で転売してきた。つまり、自動車メーカーとしての、イノベーティブな車作りよりもファイナンスの世界で儲ける会社にかわってしまったのだ。

今回、多くの大口債権者がチャプター11の方を選好した理由は、皮肉なものだ。貸し倒れに対する保険であるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)に多くの債権者が加入しており、GMが正式に債務不履行に陥った場合には、債権者に保険金が支払われて儲けることができるからだ。

そもそもサブプライム・ローンを実質的に裏書きしたパンドラの箱=クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を野放しにしてきた金融系貪欲キャピタリズムが今回の不況・恐慌の背後にある。

この悪性の循環構造には、大口債権者は十分自覚しているはずだが、結局は自分の損切りをCDSを使って確定させることに走っているのだ。ここにCDSという仕組みのタチの悪さがある。

再建策の要である過剰債務の帳消ができなくなったことで、GMは連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用申請に踏み切る可能性しかオプションがなくなった。

不況のさなか、アメリカを代表するGMを破産させるのは、オバマ政権としてもどうしても避けたかった。来週あたり、なんらかのコメントがオバマ大統領から出るだろう。しかし、GMのステークホルダである債権者がNoと言ったのだから、もう手のつけようはない。

そして、米政府は500億ドル以上をGMにつぎ込み、新GMの普通株式の約70%を取得することとなる。実現すればGMは事実上の国有メーカーとなり、名実ともにGovernment Motorsとなる。

米国政府、寡頭勢力にしてみれば、米国自動車はすでに覇権産業でもなんでもない。しかし、短期的にはGMの破産はよくない話だ。雇用への影響も同様に大きい。GM、フォード、クライスラーは3社で25万人近く雇用。部品メーカーでは約10万人が雇用されている。米国の失業率は現在6.7%で、1993年以降の最悪。これを機に、失業率は上がってくる。