散歩日記X

札幌を中心に活動しています。食べ歩き・飲み歩き・ギャラリー巡り・読書の記録など

春の東京(2)

2015年04月19日 16時01分45秒 | ART
速足で歩くと少し暑い。そんな中、上野公園内を歩いて、東京藝術大学美術館へ。今回やっているのはボストン美術館と東京藝大の所蔵品を並べた「ダブル・インパクト 明治ニッポンの美」である。ダブル・インパクトと聞くと、ロードウォリアーズやヘルレイザーズを思い浮かべる私は、プロレスファンである。



河鍋暁斎「蒙古賊船退治之図」:船が大爆発、やり過ぎだと思う。
歌川芳虎「蒙古賊舟退治之図」:こちらは上空から四天王が降りてきて、蒙古船に鉄槌! とんだ国粋主義だ。
歌川芳虎「万国名勝尽競之内仏蘭西巴里須府」:完全にパリを想像で描いてしまったという大胆な作品。

高橋由一「花魁(美人)」:以前は「この花魁、鬼婆みたいだな」と思っていたのだが、そうでもなく見えて来た。これは私が年を取ったせいか。多分、40前後なんだろうなあ。
鈴木長吉「水晶置物」:台座が波と龍でダイナミックな形の上に、球形の水晶が鎮座。向こうを歩く人が天地逆に見える。
高石重義「竜自在」:金属製の自在置物で160センチ以上はあるだろうか。何となく「ジャンボマシンダー」という言葉が思い浮かんでくる。

柴田是真「野菜涅槃図蒔絵盆」:お釈迦様の姿は大根になり、その周囲に野菜たちが。これは精密でいい作品だ。
濤川惣助「七宝瀟湘八景図額」:墨絵に見えるほどの七宝。さすが。
河鍋暁斎「地獄太夫」:三味線を弾く骸骨の頭上で坊主が踊りを踊るというアバンギャルドな作品。

河鍋暁斎「狂斎百図」:「人を呪わば穴二つ」「一寸先は闇」等のことわざにカラフルな画をつけた作品。
作者不詳「猿蒔絵盆」:猿が百匹は描かれているだろうか。服を着て遊んだり、掛け軸を観賞したり、楽しい作品。
作者不詳「半諾迦尊者蒔絵置物」:人物が手にした鉢から象牙の龍が立ち上がるという工芸作品。

豊原国周「泰平有名鑑」:明治の有名人図。岩倉具視の名前は書いてあるが、さすがに明治天皇の説明書きは無い。
揚州周延「チャリネ大曲馬御遊覧之図」:陛下、サーカスを見るの巻。片足の曲芸師が多く、当時の団員の様子が分かる。
安達吟光「貴女裁縫之図」:ピンクでヒラヒラの服を着た女性たち。もう「カワイイ」化は浸透している。

五姓田義松「自画像」:光と影の自画像。カッコいい。
狩野芳崖「谿間雄飛図」:空間に向けて飛び立たんとする鳥の図。異次元への飛翔にも見える、すばらしい作品。
小林永濯「菅原道真天拝三祈祷の図」:祈りとともに帽子を飛ばし、背後には雷が落ちる。道真がいわゆる「JOJO立ち」している作品。

橋本雅邦「雪景山水図」:木々の立体感が凄い。
狩野芳崖「暁霧山水」:芳崖にYESのレコードジャケットを描かせるべきだった。
狩野芳崖「岩石」:これなんか「リレイヤー」を思い浮かべてしまう。

横山大観「海」:くねくねと海。大胆な表現。
菱田春草「月の出」:手前の少し濃い山、奥の山は薄墨で表現。そして月が描かれ、深い景色が想像できる。
竹内久一「神武天皇立像」:明治天皇の顔を重ねて表現したものだそうだ。かなり巨大な立像で神々しさはともかく、威厳は相当ある。

今回は何と言っても狩野芳崖だ。もちろん「悲母観音」も出品されていたのだが、それ以外にこれほどいい作品があるとは思わなかった。また隣に岡倉秋水の「悲母観音」があったのだが、素晴らしく精密に模写されているのに、あの空気感というか漂う気配が出ていない。比較しては申し訳ないが、芳崖の「悲母観音」が実に高度な傑作であることが分かるのだ。

なお、藝大の陳列館では「研究報告発表展」として仏像の修復・模刻の出品がされていた。奈良県円成寺「四天王立像」なんかは大変私の好みであった。

さて、次は東京国立博物館表慶館の「インドの仏」展である。随分久しぶりに表慶館の中に入る(2005年以来か?)。



 

「菩提樹(カナカムニ仏)の礼拝」:菩提樹は仏の象徴で、カナカムニ仏というのは釈迦以前に現れた仏様らしい。そんな人がいるとは思わなかった。
「ムーガバッカ本生」:人生を異時同図法で描いたもの。
「仏伝「托胎霊夢」」:天から白い象が下り、胎内に宿ったのが釈迦になるらしい。

「仏伝「誕生」」:マヤ夫人というのはインドではかなりの肉体派(ボイン)なのだ。
「仏伝「出家踰城」」:白馬に乗り出家する釈迦。足元で小さい人が馬を支えているのだが、もしかしてこれが邪鬼の原型だったりして。
「仏坐像」:釈迦のイメージも時代によって変わり、2世紀頃クシャーン朝時代のこの作品では髪の毛にウェーブがかかっていて、いわゆる螺髪ではない。

「仏頭」:これは精神性が表現されており、釈迦の肉体を感じない。
「仏三尊像」:こちらはマッチョな肉体派である。表現の決まりごとがあったのか、地域やブームで変わってくるのか興味深い。
「焔肩仏坐像」:タイトルの通り、仏の肩口から火炎が飛び出している。これが光背の原型?

「弥勒菩薩坐像」:こんどはどう見てもインドのオッサンにしか見えない、弥勒である。
「観音菩薩坐像」:10世紀頃の作品だが、体にひねりが入ってきた。
「摩利支天立像」「仏頂尊勝坐像」:方や四面八臂、方や三面八臂。いずれも超ボイン。胴のくびれが後ろから良く見てとれる。こういう肉体派に流れた理由って、何故なんだろう。

表慶館はあまり展示向きではないので、順路が分かりにくく見やすいとは言えなかったが、なかなか面白い展覧会であった。ただ、時代や地域で仏像の傾向を把握していると、もっと面白い展覧会なのだろうと思う。

ショップではみうらじゅん考案の、お釈迦さまと花まつりをもっと盛り上げたいという像「花まつり 4月8日(←シャカと読む)」が飾ってあった。

さあ、高速度で東博の常設展を見よう。途中で初めて裏庭に出て見た。気温も寒くはないし、のんびり散歩をしている人も結構いた。

 

続いて、国立西洋美術館へ。前回の「グエルチーノ展」の際に常設展が閉まっていたことから、常設展のみの無料券をもらっていたのである。こちらも急いで展示会場を回る(いくつか作品を撮影したので、後日記事にしたい)。

興味深いのはヨハネス・フェルメールに帰属するという作品「聖プラクセディス」(寄託作品)が展示されていたことだ。調査中であり、研究者の意見も分かれているようだが、フェルメール作という可能性が無くもないらしい。

さて、これで今日の展覧会巡りは終了。疲れたので、一度ホテルにチェックインしよう。ホテルでは新聞無料、ウエルカムサービスのコーヒー無料ということで、ちょっと嬉しい。


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