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 「Hoshino Parsons Project」のブログ

「多様性」を語る前に。

2010年04月23日 | 言問う草木、花や何 〜自然・生命の再生産〜
このところ私は、公私ともに県内各地の桜を見る機会に恵まれていますが、
この季節になるとどこへ行っても、山々にはあんなところにも沢山の桜があったのかと驚かされます。

とりわけ新緑シーズンよりも前の、木々の葉がない山々なだけに、
遠くからでもその存在はすぐに確認できます。

桜とは、なんと目立ちたがり屋の植物なのでしょう。



新緑のなかに埋もれて咲く桜なども、もしあったならば、
それもさぞ美しかろうに。
ひたすら自分が目立つことだけを優先して咲いているようにも見えます。


春になると、梅、桜にはじまり、いっせいに生命が輝きはじめて、
たくさんの草花があちらこちらに咲き誇ります。

このときとばかりに、私たちも自然界の生命の豊かさや多様性を実感します。


ところがです。

これほどまでに目立つ桜ですが、
この季節以外、一年の350日あまりの期間、
公園などの有名な場所以外は、その幹に近づかない限り、どこにあるのかなど
あまり意識されることはありません。

よく考えてみれば、桜ほど短命ではないにしても、多くの花の咲く期間は1年のうちのほんの僅かな間です。

花に限らずとも、紅葉シーズン以外のカエデやモミジは、どこにあるのでしょう。

私たちが、植物や動物など生命の多様性を語るとき、
それらの盛りの時期、花が咲いている1年のうちの極めて短い間の姿だけをみて、
あそこにも、ここにもこんなに沢山の草花が咲いていると感じます。

しかし、それら多様な生物たちの大半の生活は、花のない、どこにあるのかまったく気付かれないような姿でずっと同じ場所に生き続けています。

うれしいことに、このことが現代になってようやく注目されるようになりました。

真冬の葉っぱひとつつけていない立木は、生きているのか、それともすでに死んでしまった枯れ木なのか、遠くから見て区別することは簡単ではありません。

多くの植物の生涯の圧倒的部分は、花をつけた輝かしい時期ではなく、
ひたすら寒さに耐えて地中や雪の下に埋もれていたり、ただ葉を繁らせ、その他おおぜいのなかに埋もれているだけの人生。

それでも確実にそこで生き続けていることには変わりないのですが、
それらの生命が運よく、花を咲かせ実を実らせるかどうかは、
おそらく想像もつかないような状態で普段は生きているのです。

咲き誇るたくさんの草花を見て、生命の多様性を感じることは簡単ですが、
この時期の枯れた草木を見て、わたしたちはどれだけ生命の多様性を感じることが出来るでしょうか。

ここが、これからの時代は問われているのだと思います。

まだ花を咲かせる前の木を見て、
その木に花が咲かないのは、
季節がまだ早いから咲かないのか、
日当たりが悪いから咲かないのか、
害虫に食われてしまって咲かないのか、
待てばどんな花が咲くのか、

そうした情報を読み取ることこそが大事になってきているのを感じます。

そんなこと植物のプロでなければわかるわけがない、と言われそうですが、
これからの時代、教育の現場や地域や職場のなかで、人間の「多様性」を語るのならば、
花咲き誇る時期の姿だけを見て比べるのでは、大事な多様性のほんの一部しか理解出来ていなことになります。

まだどんな花を咲かせるのか、想像もつかないような時期に、
ただ待てば咲くのか、
肥料を与えることが必要なのか、
日当たりのよい場所へ移すだけでよいのか、
専門家に頼ることなく、その判断を求められているのだと思います。

それには、花のない時期の樹皮を見て
葉っぱをみて、
その木がどのような木なのか判断できなければなりません。
どのような花を咲かせ実をみのらせるのか知らなければなりません。

それにはまず、日常の姿、かたちから名前を知ることです。
それをよく観察することです。
より多く実物に接することです。
足を運んでそこに行くことです。

忙しく、効率に追われる現代人に、「時間軸」の「多様性」も取り込むことは、とても難しいことです。


「多様性」を認めてそのなかで生きるということは、こうしたことが必然として求められるのではないかと感じています。


よって、当店では連休明けより、
「知ってますか? この顔、名まえ」と題して
植物図鑑、鳥類図鑑のフェアを行います。




「正林堂店長の雑記帖」より転載


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