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 「Hoshino Parsons Project」のブログ

映画「奇跡のリンゴ」と自然農法の明日

2013年07月05日 | 映画・音楽・舞台・美術などの評

映画「奇跡のリンゴ」を観てきました。

久しぶりの映画で、当然、わたしたちの会員カードも期限切れ。

1年あまり、これといった映画がなかったのもありますが、この作品は、縁遠くなっていた映画館に足を運ばせるだけの期待感がありました。

こういう場合、しばしば原作に比べて映画は、スピード仕上げによる粗さや脚本の手抜きなどが気になるガッカリ作品が多いものですが、今回は期待を十分上回り映画作品としての出来映えもすばらしいものでした。

ストーリーなど泣かせどころは予想どおりでしたが、それでも、わたしは打ちのめされ、また、大いに励まされた。

そして、奥さんの大きな支えがあったことは、読んだ本でみていましたが、あんな立派なお父(義父)さんに支えられていたことは、この映画を観るまで知りませんでした(涙)

 

 

映画化が決まってからなのか、私も知らない間に、木村秋則さんの本も「奇跡のリンゴ」以外にも随分たくさん出ていました。

 

「奇跡のリンゴ」幻冬舎文庫

「すべては宇宙の采配」 東邦出版

「奇跡を起こす見えないものを見る力」 扶桑社文庫

「百姓が地球を救う」 東邦出版

「ソウルメイト」 扶桑社

「木村秋則と自然栽培の世界」日本経済新聞社

「自然栽培ひとすじに」創森社

「リンゴの心」佼成出版

「土の教室」 幻冬舎

 

 

本もたくさん出て、すばらしい映画も出来て、自然農法の影響力もこれでかなり広がることを期待したいところですが、私が行った映画館には、私たち以外の観客は2組だけ。

 

考えてみれば、私が福岡正信の『わら一本の革命』に出会ってのめり込んだのは20年以上前のこと。

手元にある本をみると、初版は1983年。

その後、世界各国で翻訳されて、大きな流れとなっていくと思いましたが、有機農業との違いもあまり認識されないまま、予想したような広がりは長い間見られませんでした。

福岡正信の語る世界は、自然農法という農業の領域だけでなく、無為自然のタオ(老子)の哲学として、多くの人に衝撃的な根本哲学を示すもので熱烈に支持されたものですが、この30年もの間は、結局、広がり度合いをみると「異端」のままであった気がします。

それが、今、自然栽培のなかでもひと際難しい果樹のリンゴで奇跡をおこした木村秋則さんによって、ふたたび注目を浴びる機会を得たことは、長い時の流れをみると感慨深いものがあります。

時代の変化で、やっと社会がこうした思想を受け入れる器ができてきたような感じがします。

それでも、木村さんが10年近くの年月をかけてようやく答えをみつけたのが1985年。

大きなうねりとなって広がりはじめたものの、自然農法は、農業全体からみればまだごくほんの一部のこと。

 

著作や映画に感動した者の側からすれば、こんなにすばらしい世界なのにと思いますが、現実のまわりのリンゴ農家、その他のあらゆる栽培農家は、まだこの農法そのものを知らない現実もありますが、それを知っても切り替えには、大きな覚悟と実際に収穫を得るまでのリスクがあります。

すべての農薬を止めて、土の生命力を取り戻し、作物のまわりの環境とともに生命の循環が再開されれば、コスト、労力ともに大幅に減らして、より美味しく身体にも良い作物ができる。

これは、単なる新しい技術をひとつ導入するといった話ではなく、自然に対する考え方、農業に対する考え方を根本から、自然本来の姿に転換するものであるだけに、時間は当然長くかかるものです。

 

しかし一時の流行とは明らかに違うので、後戻りすることはなく、長い時間はかかっても確実にこれからは広がっていくものと思います。

 

早く結果のでるものは、すぐに廃れるものです。

かといって単純に、結果を出すのには時間がかかるというものではありません。

 

大事なのは、10年、20年後、さらには100年後のすばらしい未来を、

心に描けた人だけが、

さらに、その未来像に向かってあきらめずに頑張れた人だけが、

「答え」を得ることができるのだと思います。

 

ほんとに、いい映画でした。

みなさん、本も映画も是非、みてください。

 

 

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