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 「Hoshino Parsons Project」のブログ

「分散」と「集中」ロングテールの実体(その3)

2008年07月16日 | 出版業界とデジタル社会

もう一度、恐竜の姿をイメージしてみましょう。
前回書いたように、ロングテールといわれる尻尾の長さが長くなったことは間違いありませんが、もう一方で恐竜の首、頭の部分にあたるベストセラー商品も、尻尾が長くなっていることに劣らず、細く長く上に伸びているのも今の特徴です。

ベストセラーのなかでミリオンセラーと言われる商品が、書籍に限らずCDの売り上げなどでも同じように市場が縮小していると言いながら、過去10年20年前のいかなる時期よりも最速で次々とその記録は塗り替えられています。
次々と塗りかえられているそれらの記録の商品は、昔であれば日本国民の誰もが知っている歌であり、誰もがその話題だけは知っている本でしたが、今、私たちがそれらのCDタイトルを聞いてもまったく知らないことが多いのです。
100万部を超えるベストセラーと言われても、その作者も書名もまったく知らないもということも、読書家を称する人々の間ですら珍しくはありません。
これは必ずしも、そうした情報を見ても知らない人々が年配者だからそうだということでもありません。

あっという間にミリオンセラーの記録を塗り替えるそれらの商品は、瞬く間にトップの位置を占めるようになるのですが、同時に、瞬く間にヒットチャートのなかから消えていくのも今の特徴です。
つまり、それらの商品は先の恐竜の姿でいえば、昔以上に限りなく細く長く伸びた首としてその姿をあらわしているのです。



尻尾も限りなく長く伸びた。
首も限りなく細く長く伸びた。

これは、最初の「分散」と「集中」という台風の渦のエネルギーの考えかたからみたら、どういうことでしょうか。

求心力、遠心力ともに最大限まで発達した回転する駒のような形がイメージできます。
それは、回転する軸の部分が細く上下に長く延びている一方、駒の胴体の輪の部分も限りなく薄い円盤状に拡大している姿ということになります。



このいかにも壊れやすそうな薄く細いかたちは、経営資本のかたちととらえても同じです。
アマゾンやグーグルに代表される現代の最先端企業の姿をみると、パソコン画面上にあらわれるそのシンプルな姿からは想像もつかない莫大な研究技術開発費を投入し続けています。
ところが、そこには昔の重厚長大型の大企業のイメージからは遠い、これまでは想像もつかなかった世界があります。

そこの経営を支えているのは、莫大な技術研究開発の部門とともに、アドワーズ、アドセンスといった無数の小口の広告スポンサーたちであり、ひとつひとつは小口でありながら、世界市場をターゲットにした大企業の要望にも応えられるものです。

また、アマゾンの書籍データを開くと、そこには同時に新刊情報とともに、その書籍の古本出品情報が出る。定価1,500円の本と同時に下は1円から600円、800円と、絶版品切れ本であれば時には5000円、7000円といった情報が同時に表示されて、ワンクリックでそれを買うことができる。
それらの出品者は、必ずしも古書店とは限らず、個人の蔵書でも登録さえすればそこに出品することができます。

私の管理サイト「かみつけの国 本のテーマ館」も書誌情報はアマゾンのデータをリンクしていますが、それを通じて購入されるものの9割は新刊の定価販売商品ではなく、「古書」です。

こうした法人、個人を問わず、世界中のユーザーを簡易なシステムで取り込んで、既存のいかなる巨大書店よりも大きなビジネスを築き上げているのがアマゾンです。

これらの例のどこをとってみても、かつて私たちが高度経済成長時代に学校で学んだトラスト、カルテル、コンツェルンなどのイメージはありません。
強いて言えば、出資から販売まで、小さな個人を寄せ集めた裏(闇)カルテルのようなものでしょうか。

まさに、これらの姿は、細く長く伸びた軸のまわりを、これまた薄い円盤がとてつもなく大きく広がった駒のかたちであるといえます。
もう少し正確に言うならば、その円盤は土星の輪のような形というよりは、銀河系の広がりのような薄い層や厚い層のムラのある円盤状の広がりといったほうが近いでしょう。


この広がりこそ、現代の「分散」の特徴なのですが、残念ながらこれも、分散一方の優位というわけではなく、軸に集中する設備投資や技術開発の領域で桁外れの「集中」を前提として成り立っていることを見落としてはなりません。

にもかかわらず、この水平方向に広大な広がりを見せた「分散」こそ、これまでにはなかったものだといえるのです。

もう少し続けなければならないので、また次回に続けます。

 

その1 http://blog.goo.ne.jp/hosinoue/e/d6849961bd583b9dc851ad074e812adf

その2 http://blog.goo.ne.jp/hosinoue/e/f82e08f492d2f3e6289027b4a2317c7d

その4 http://blog.goo.ne.jp/hosinoue/e/9ec1a58f2db44441d85e30781400e9a3

 

コメント
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