英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

なぜ「NHKをぶっ壊そう」とするのか   「優秀な社員だった」立花氏の心の闇 

2019年09月03日 16時08分11秒 | 時事問題
  なぜ、立花孝志参院議員が「NHKから国民を守る党(N国)」を立ち上げたのか?私はこれまで理解できなかった。しかし、私の信頼できる人の話では、立花氏はNHKの「闇の部分」を知っており、そこから、NHKが公共放送の資格がないと思っているのではないかと感じる。
  2005年4月14日発刊の週刊文春に立花氏が寄稿した文章によれば、彼は高卒後、1986年4月にNHKに入局し、和歌山局の庶務部に5年、大阪局の経理部に1年、大阪局の放送センター編成総務で経理担当を6年、東京の本局の報道局・スポーツ報道センターで経理担当を6年、2004年7月に編成局(経理)に異動になった。
  週刊文春の見出しには<NHK現役経理職員、立花孝志氏懺悔実名告白>≪五輪での飲食代から機材盗難の穴埋め処理まで、皆様の受信料流用の許されざる実態≫とある。
  立花氏は「私が初めて不正な経理処理の存在に気づいたのは、大阪局の経理部の一年目、1991年のことです」と記し、そのとき以降のNHK職員の「裏金づくり」を暴露している。
  一例として、彼は「私は2002年ソルトレーク五輪の現地経理担当でした。大会期間中は、現地でバンク・オブ・アメリカにNHKの口座を作り、お金の管理を引き受けていました。そこで恥ずかしながら、約300万円の裏金を作ました」と述べている。
  NHKはスポーツ放送権料の秘密を公開したとして、立花氏に懲戒停職1カ月を命じ、「オリンピックで裏金を作った」と本人が言っているため、これについても7日間の懲戒出勤停止処分にした。彼は2005年7月、NHKを依願退職した。
 私の信頼する人の話では、立花氏はNHK時代、たいへん優秀な社員で、仕事を人よりも「早く、正確に、能率良く」処理していたという。部下からの人望はすこぶる良かったともいう。
 立花氏は参議院選に立候補するとき、NHKに対する感情は複雑だったと思う。公共放送局の幹部への怒りは癒えないのだろう。ただ、現在、NHK記者の取材を快く受け入れ、現場の人々に温かい姿勢を示し、現場の社員には何の怒りもないと言っているという。
 依願退職した元NHKの社員は現在、あらゆる手段を使って世間の注目を集めようとしている。それによって党勢の拡大を図っているふしがある。
 立花氏がTOKYO MXの番組「5時に夢中!」でN国党へのマツコ・デラックスさんの発言について反論したこと、同放送を提訴する方針を明らかにしたこと、北方領土や竹島(韓国では独島)を武力で取り返せと叫ぶ丸山穂高・衆院議員を支持することは、彼の目的ではなく手段だと理解できる。立花氏が本当に丸山氏を支持しているのかどうかはわからない。ただマキャベリストだと思う。
 立花氏はあらゆる手段を利用して、メディアと世間がN国党に注目することを願い、「NHKをぶっ壊す」という目的を達成しようとしている。具体的に言えば、「NHKのスクランブル化」だが、それは決して荒唐無稽な主張ではない。今回の参院選で、賛成する有権者がかなりいたのは事実だ。
 「NHKをぶっつぶせ」と叫ぶ元NHK社員は弁がたつ、有能だが、民主主義をあまり理解していない、独裁的な手法をもつプロパガンディストだ。NHK幹部はこの人物の過去を思い、N国党の党勢を心配しながら見守っていることだろう。
  
  

ハーバード大合格の少年の入国拒否    トランプ米政権らの反民主主義を思う

2019年09月02日 10時42分52秒 | 時事問題
  米ハーバード大学に合格したパレスチナ難民の少年の入学が危ぶまれている、と9月2日付朝日新聞国際面が伝えている。「大学から近いボストン空港に着いたところ、米税関・国境警備局の職員から、友人がフェイスブック(FB)で反米的な投稿をしていたことが理由とみられるという」
  少年は、大学の学生新聞などによると、パレスチナ難民のイスマイル・アジャウィ君。医師を志している17歳の少年はレバノンの難民キャンプの高校を今春卒業し、ハーバード大学で物理生物学や化学生物学を専攻する予定だった。しかし、入国管理局職員は8月29日、ボストン空港で8時間に及ぶ尋問をアジャウィン君にして取り調べた。
  アジャウィン君の友人がFBに米国に反対する政治的な書き込みをしていることを問題視し、入国ビザを取り消したという。アジャウィン君は友人のFBに「いいね」などの反応を何もしていなかったという。かれはレバンノンに帰国した。
  ハーバード大学当局はアジャウィン君を入学させたい意向を示しており、大学の学生は彼の入国活動を求める署名を始めている。4千筆以上が集まっているという。
  朝日新聞によると、米国務省はオバマ前政権時の2015年、約64万4千人に学生ビザを発行したが、トランプ政権の18年には4割減の約36万2千人しか出していないという。朝日新聞は新入生(18)が「生まれ育った環境や時の政権によって勉学の可否が決められるなんて、正しいとは思えない」と話したと報じている。
  ドナルド・トランプ大統領の反民主主義的な言行は目を覆うばかりだ。与野党を問わず、一般市民でも、自らの見解と違うのなら、容赦ない糾弾の弾丸を浴びせ、話し合おうとしない。すべてを利害に置く商売と見立て、「ディール」という言葉でくくる。これほどアメリカ第一主義で民主主義と自由を軽視する大統領は建国の父ワシントン初代大統領からオバマ前大統領まで見渡してもいない。
  米国だけでなく、日本に非合理きわまりない批判を浴びせている韓国の文在寅大統領とその一派も民族主義者というよりも教条的国粋主義者だといえるだろう。民主主義の本家本元の英国でも、ジョンソン首相が欧州連合(EU)離脱前に議会を閉会することを決定。議論を基本とする議会制民主主義に反するこの動きに対して、英国民は怒り心頭に達し、全土でデモを繰り広げた。
  英首相官邸前のデモには数千人が参加し、「ジョンソン首相は恥を知れ」と声を上げた。このほか、30以上の街でデモが行われ、デモ参加者は「政府が今、取っている態度は民主主義を避けることだ」と叫んだ。また、議会を閉会しないよう求めるインターネットの署名はすでに160万人以上から集まっています。
  最近まで、自由と民主主義制度の砦を守っていた民主主義国家の指導者が権威主義的な政治手法を取り始め、それを国内の右派が支持し、多くの国民は沈黙するか、ポピュリズムに動かされている。そして、その間隙をぬって、中国や北朝鮮などの全体主義・独裁国家が勢いを増している。そしてロシア、ブラジル、東欧などでは、権威主義、強権国家が出現している。日本の安倍政権も民主主義を理解しているかとなると疑問符がつく。
  私はGOOのブログで、民主主義制度の必要性、重要性を繰り返し述べてきた。確かに民主主義制度ほどまどろっこい制度はない。為政者はそう思うだろう。そうであっても、最後には国民を強固な絆で結び、一致団結させる制度は民主主義制度しかないと思う。また、時間がかかっても、民主主義が話し合いによる解決策を見つける最良の制度だ。
  英宰相ウィンストン・チャーチルら民主主義を死守するために戦った指導者が亡くなって長い歳月が過ぎた。また彼らの指導下でヒトラー・ドイツやムソリーニ・イタリアと戦い、冷戦下ではスターリン・ソ連と対峙した世代の大半の人々は鬼籍に入った。民主主義制度の重要性を理解している人々が亡くなった現在、これからの世界はどうなるのか。
  一国主義がはびこる世界では、地球とそこに住む人々の存亡を決する環境問題や温暖化問題も、海にたまっているプラスチック問題にも根本的な解決策が見いだされないだろう。私はこの事態を憂慮し、子どもや孫らの世代の世界を心配する。

追伸:9月4日付朝日新聞によれば、アジャウィン君は一転して入学が認められ、ボストンに到着した。彼に奨学金を出すNPO法人は、米政府の決定を撤回するために努力したハーバード大学長、この問題を報じたメディアに感謝しているという。アジャウィン君が勉学に励み、一人前の医者になってほしいと願います。パレスティナ難民と世界の人々に貢献してください。

 (写真)米入国を米官憲から阻まれ、ハーバード大学への入学が困難なアジャウィ君