英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

儒教が将来、韓国人を存亡の危機に陥れる  北朝鮮のミサイル発射から読む

2019年08月17日 19時59分15秒 | 東アジアと日本
  「われわれの力で分断を乗り越え、平和と統一へ進む道こそ、責任ある経済大国への近道になります。われわれが日本を追い越す道であり、日本を東アジア協力の秩序へと導く道です」

   ● 韓国人は朱子学からの強固な理念主義
  これは、光復節記念式での文大統領演説全文の一部だ。この一文に文在寅大統領の理念と理想が凝縮されている。私はそう思う。
  この理念と理想の前提にあるのが韓国を支配している儒教で、とりわけ李氏朝鮮(1392~1910)の支配者階級が持っていた儒教の流れを組む朱子学だ。この思想は現在まで、営々と韓国民や北朝鮮人の道徳と支配理念の中核として脈打ってきた。
  私はこのほど出版された拓殖大学教授の呉善花さんの著書「韓国を蝕む儒教の怨念」で、韓国人の精神構造を再認識した。約20年前、崔基鎬氏の「韓国 堕落の2000年史」を読んで朝鮮半島の人々が朱子学によって精神的に支配されていることを理解していたからだ。
  呉さんは著書で、韓国人の考え方は朱子学の強固な理念主義に由来すると述べている。「韓国人は『絶対的な正しさ』を大前提にして物事の『あるべき姿』を描き出し、個々の事象を判断し結論を導いていこうとします。ここでの『絶対的な正しさ』は韓国社会ではあえて客観的な根拠を問う必要もなく通用している、「(理念的な)いうまでもない常識であり『ごく一般的な考え』にほかなりません。韓国人がしばしば、客観的な証拠もなしに『自分の考えは間違っていない』と頑強に主張するのは、こうした思考方法があるからです」
  どんな理念的な思考であっても客観性はない。客観的な理念と言えば、冷笑されるだろう。客観性を担保するデータなどで思想を計算できはしないからだ。
  朱子学的理念に頭のてっぺんから足先まで縛られていると思われる文在寅大統領や彼を支持する人々は、「慰安婦」「元徴用工」問題や「かつての日本による朝鮮半島の植民地支配」は朱子学の理念上、永遠に「絶対悪」であるのだ。現代社会の判断基準は「法による支配」を礎にしているが、文氏らにとっては朱子学に由来する道徳は法を超えたものなのだろうか。たぶん、そんな意識はなく、当然なこととして受け入れられているのだろう。
  日本人も儒教的な道徳を尊重する。しかし、それは絶対的な理念ではない。第一に優先せず、人間関係を優先する。だから日本人は「うそも方便」と言うのではないのか。道徳上、言わなければならないが、人間関係を優先するため、相手が落胆し、心を傷つけることを言うのを避け、当たり障りのない「うそ」をつく。
  韓国人は朱子学で唱えられた「絶対道徳」を基準にして、他人の“間違い”を指摘する。自らが信じる“正義”を振りかざす。一方、他人には自らが「絶対道徳」を忠実に守っていると公言する。ごく普通の韓国人(間違いをする人間)は他人に詐欺的行為をしていても、自らの潔白を証明するためにうそをつく。つまり「他人を思いやるうそ」ではなく「自らを守らんがための利己的なうそ」ということになる。呉さんの書籍を読むとそう解釈できる。

● 絶対正義を掲げる文大統領
  文大統領の言葉「日本を東アジア協力の秩序へと導く道です」は「自己の絶対的な正しさ」を表している。だからこそ、韓国の大統領は「導く」という発言をする。「絶対的な正義や正しさ」を固持している人物から疑問は生まれない。「なぜ、日本は韓国を植民地にしたのか」という疑問は生まれない。「絶対正義」の中には「なぜ」はどうでもよいことになる。この主観的な絶対正義は朱子学の「こうあるべきだ」という理念から来ているのだ。
  また「われわれの力で分断を乗り越え、平和と統一へ進む道こそ、責任ある経済大国への近道となります」との文大統領の言葉も“正しい”「絶対的な理念」である。しかし理念と現実の世界は99%相違する。長い歴史の事実はわれわれにこのことを教えている。
  文大統領の「平和統一」という絶対理念が北朝鮮の金正恩委員長の野望を、皮肉にも後押ししている。そう考えるのは私だけだろうか。

● 北朝鮮主導の統一狙う金委員長
  北朝鮮の国営メディアは金正恩委員長の立ち会いのもと、昨日の16日、新たな飛翔体兵器(ミサイル)の発射実験を再び実施したと発表した。北朝鮮は先月25日からこの3週間余りで6回飛翔体発射を繰り返していている。
  日本のメディアは、北朝鮮の飛翔体発射は今月20日までの予定で行われている米韓合同軍事演習をけん制する狙いがあると報じている。確かに、直近の狙いはそうだろうが、それだけなのだろうか。
  文大統領の「光復節」での演説を受け、北朝鮮の対韓国の窓口機関「祖国平和統一委員会」の報道官は16日の談話で、「米韓合同軍事演習の最中に対話を語る人の思考が健全であるのか疑わしい。本当にまれに見るずうずうしい人だ」と激しく非難。文大統領の光復節演説での朝鮮半島の平和への訴えを取り上げ、「話すこともないし、再び対話する考えもない」と痛烈に批判した。
  文大統領がこの演説で掲げる2032年のソウルー平壌共同五輪開催と2045年の光復100周年までの南北平和統一の約束をあざ笑う形だ。
  北朝鮮の金委員長は韓国の経済主導の統一を口をくわえて座視することはない。北朝鮮の短距離ミサイルの連続発射から十分に理解できる。またそれは金委員長の野望を映し出している。金委員長の最終目的は北朝鮮による朝鮮半島の統一と金氏による父権血統世襲体制の永続だ。
  北朝鮮の短距離ミサイル発射に対するトランプ米大統領の事実上の是認により、北はこれからも短距離ミサイル実験を実施し、その精度を上げていくだろう。短距離ミサイルは米国には届かないが韓国には確実に届く。
  金委員長はトランプ米大統領から北朝鮮の核保有の認知を必死に求め続けるだろう。短距離ミサイルの精度が完了したあかつきには、時を見て、韓国に脅しをかけてくるのは必至。核搭載の短距離ミサイルを脅かしの道具にして、北朝鮮主導の南北統一を求めるにちがいない。米国は最後には自国の直接的な国益ではないと見なし、北主導の統一を黙認する可能性がある。韓国抜きの東アジア、東南アジア安保構想を考えるかもしれない。
  現在の文政権と、この政権を支持する韓国民の朱子学による伝統的な「反日主義」が現在、冷厳な現実から目をそらさせている。熱狂的な反日感情により、韓国人は前門の“悪”の日本政府に目が釘付けになり、後門の虎を見ていない。見ていても、虎を友人だと思い込んでいる。幻想を抱く文大統領はその先頭に立っている。

  ● 日本は最悪のシナリオを想定して安保・防衛立案を
  トランプ米大統領と韓国の文大統領がつくり出した朝鮮半島情勢は、北朝鮮に有利に働いている。金委員長にとって千載一遇のチャンスのように思える。追い風は確実に北朝鮮に吹いている。
  このままでは、文大統領による韓国国民への「2045年の光復100周年までの南北平和統一(南主導)」の約束」が果たされないどころか、北朝鮮による朝鮮半島統一が現実味を帯びてくる。時がたてばたつほど、韓国主導の経済統一が現実味を帯びて不利になることを知っている金委員長はミサイルと核を盾にして韓国を揺さぶり、「愚かな」トランプ大統領と「反日」思想に凝り固まった文大統領を利用して「統一」という獲物を手に入れる努力を必死にするだろう。
  われわれ日本人は、北朝鮮主導の朝鮮半島統一という最悪のシナリオをも視野に入れて、今後の東アジアと日本の安保・防衛問題を考えていかなければならないと思う。


  
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