「中国共産党は7月29日、胡錦濤(フーチンタオ)政権で最高指導部にあたる政治局常務委員を務めた周永康(チョウヨンカン)・前党中央政法委員会書記(71)を重大な規律違反の疑いで立件することを決めた。1949年に共産党政権が成立して以来、文化大革命などの政治的混乱期を除き、常務委員経験者が摘発されるのは極めて異例だ」
朝日新聞はこのように報じた。ほかの新聞も同様の記事を流し、中国共産党の権力闘争を白日の下にさらした。
産経新聞は、周氏の立件をめぐって習近平総書記の思惑について記し、「習指導部は周氏の立件を通じ、いかなる高官も例外なく取り締まる『反腐敗』への強い姿勢を示して国民の支持を求めている」と報じる。
権力が一グループや一人の人間に集中すると、汚職や権力の乱用を生みやすい。中国が歴史を通して腐敗がはびこる国家だった大きな一因は権力の集中に起因すると言っても過言ではない。毛沢東が権力を握った大きな理由は、毛が率いる八路軍(中国解放軍の前身)が「人民」の私物を盗まず、清貧だったからだろう。毛沢東は1927年に井崗山に根拠地を定めるにあたって,三大規律六項注意(のちに八項に改める)を制定し,〈人民の軍隊〉たる性格を明確にした。
三大規律は,(1)いっさいの行動は指揮にしたがう,(2)大衆のものは針1本,糸1すじもとらない,(3)いっさいの捕獲品は公のものとする,八項注意は,(1)言葉づかいはおだやかに,(2)売り買いは公正に,(3)借りたものは返す,(4)こわしたものは弁償する,(5)人をなぐったり,ののしったりしない,(6)農作物をあらさない,(7)婦人をからかわない,(8)捕虜をいじめない,というものだ
中国共産党の前の政権は国民党。蒋介石総統が率いた政党だ。現在、台湾で政治活動を行っている。この政党も1940年代、腐敗政党だった。蒋介石自身は汚職に染まっていなかったといわれるが、親族や国民党幹部、党員は汚職まみれだった。当時の中国国民は国民党に愛想を尽かし、毛沢東を支持。毛沢東は新中国を成立させた。1910-20年代の軍閥割拠の時代も、1911年の辛亥革命以前の気が遠くなるような長い帝政時代も汚職は中国の名刺だった。汚職は中国の文化であり、国民性と言えるだろう。
なぜ汚職が起こるか。それは中央集権独裁国家と家族主義が原因だろう。それが全てではないが大きな比重を占める。家族主義は身内を大切にする。そして鉄壁の城壁の外に暮らす身内以外の人々には計算高く付き合う。権謀術数を弄する。極論すれば何をしてもかまわない。特許権を無視した海賊版や模倣品をつくっても平気。期限切れ食肉を出荷していた中国企業、上海福喜食品問題も身内以外なら何をしてもかまわないという発想から来ているのだろう。
日本人が考える身内はせいぜい親子、兄弟ぐらいだろう。せいぜい叔父、叔母、従兄弟までではないだろうか。しかし中国は違う。帝政時代、9親等まで責任が及ぶと言われた。一人が国家に反逆すれば9親等まで過酷な刑を受けることになる。
中国人が考える家族の範囲は大きい。筆者の知り合いは中国人女性と結婚した。嫁さんと初めて中国の義父母を訪問。盛大な宴が催された。この宴の出費負担は、一番金を稼いでいる人。つまり筆者の知り合いである。彼はわたしに「とにかく訳の分からない遠い縁者まで宴に駆け付けていた。その数は70人と下らなかった」と語った。法支配の伝統がない中国では、人民は統治者を信じない。信じるのは身内だけ。だから親類縁者の結束と協力は固い。
この家族主義の根はひじょうに深い。中国を身内とすれば、身内の外にいる人間や国家には何をしてもよいということになる。中国共産党機関紙である人民日報と人民網は、2007年8月28日付の中国食品の「毒」は日本から来たと題する記事で、朝日新聞社の発行する週刊誌AERA(アエラ)の記事を引用する形で、もともと中国製の食品は安全であったが、中国の食品が農薬や抗生物質を含むようになったのは、中国に抗生物質を持ち込み、中国で品質を無視して買い叩く日本人が原因である。日本は中国の食品安全問題に対して逃れようのない責任があり、日本人が悪いのになぜ日本人はあれこれ騒いでいるのだと、日本の食品安全に対する姿勢を非難している。
このような難癖は中国人の常とう手段だ。これで満州(中国東北)を侵略した日本の関東軍も怒らせた。満州に侵略する前、すべての事件を日本軍の責任に転嫁。法破りの中国人に関東軍将校は頭にきた。現在の日本人もそうだろう。ただ関東軍と現在の日本人に共通な性格は「感情的で観念的」「歴史を直ぐ忘れる」ことだ。もつと冷静になってほしい。
もう一つの中央集権独裁政治体制の伝統も中国の汚職を生む土壌を提供している。独裁体制にはチェック機関がない。2000年前に法支配を唱えた韓非の時代から官吏の腐敗は中国社会の大きな問題。ある意味で中国人ほど人間の弱さを持っている国民はいないと思う。既得権を死守し、権力を求め、金が全てだという観念にとらわれている。日本人のように現実離れした理想論を抱かない。ただただ現実的、即物的だ。その良し悪しは別として、中国人の文化から出た国民性だろう。
ただ中国共産党指導部にとり社会の腐敗は権力基盤を弱体化させる。これは中国史の冷徹な事実だ。習総書記はこの事実を理解しているはずだ。だから大衆の支持を得るために周一族の汚職疑惑を立件しようとしている。もちろん権力闘争の一環でもあろう。周一族の汚職疑惑をテコにして、習が自らの政治基盤を強化しようとしているのだろう。
中国の民主化は遠い夢にすぎない。中国人が遠い将来に議会制民主主義と自由を獲得できたとしても、それを身体の一部として自由自在に使いこなすことにはならないだろう。それを使いこなすにはまた気の遠くなる歳月が必要だ。
朝日新聞はこのように報じた。ほかの新聞も同様の記事を流し、中国共産党の権力闘争を白日の下にさらした。
産経新聞は、周氏の立件をめぐって習近平総書記の思惑について記し、「習指導部は周氏の立件を通じ、いかなる高官も例外なく取り締まる『反腐敗』への強い姿勢を示して国民の支持を求めている」と報じる。
権力が一グループや一人の人間に集中すると、汚職や権力の乱用を生みやすい。中国が歴史を通して腐敗がはびこる国家だった大きな一因は権力の集中に起因すると言っても過言ではない。毛沢東が権力を握った大きな理由は、毛が率いる八路軍(中国解放軍の前身)が「人民」の私物を盗まず、清貧だったからだろう。毛沢東は1927年に井崗山に根拠地を定めるにあたって,三大規律六項注意(のちに八項に改める)を制定し,〈人民の軍隊〉たる性格を明確にした。
三大規律は,(1)いっさいの行動は指揮にしたがう,(2)大衆のものは針1本,糸1すじもとらない,(3)いっさいの捕獲品は公のものとする,八項注意は,(1)言葉づかいはおだやかに,(2)売り買いは公正に,(3)借りたものは返す,(4)こわしたものは弁償する,(5)人をなぐったり,ののしったりしない,(6)農作物をあらさない,(7)婦人をからかわない,(8)捕虜をいじめない,というものだ
中国共産党の前の政権は国民党。蒋介石総統が率いた政党だ。現在、台湾で政治活動を行っている。この政党も1940年代、腐敗政党だった。蒋介石自身は汚職に染まっていなかったといわれるが、親族や国民党幹部、党員は汚職まみれだった。当時の中国国民は国民党に愛想を尽かし、毛沢東を支持。毛沢東は新中国を成立させた。1910-20年代の軍閥割拠の時代も、1911年の辛亥革命以前の気が遠くなるような長い帝政時代も汚職は中国の名刺だった。汚職は中国の文化であり、国民性と言えるだろう。
なぜ汚職が起こるか。それは中央集権独裁国家と家族主義が原因だろう。それが全てではないが大きな比重を占める。家族主義は身内を大切にする。そして鉄壁の城壁の外に暮らす身内以外の人々には計算高く付き合う。権謀術数を弄する。極論すれば何をしてもかまわない。特許権を無視した海賊版や模倣品をつくっても平気。期限切れ食肉を出荷していた中国企業、上海福喜食品問題も身内以外なら何をしてもかまわないという発想から来ているのだろう。
日本人が考える身内はせいぜい親子、兄弟ぐらいだろう。せいぜい叔父、叔母、従兄弟までではないだろうか。しかし中国は違う。帝政時代、9親等まで責任が及ぶと言われた。一人が国家に反逆すれば9親等まで過酷な刑を受けることになる。
中国人が考える家族の範囲は大きい。筆者の知り合いは中国人女性と結婚した。嫁さんと初めて中国の義父母を訪問。盛大な宴が催された。この宴の出費負担は、一番金を稼いでいる人。つまり筆者の知り合いである。彼はわたしに「とにかく訳の分からない遠い縁者まで宴に駆け付けていた。その数は70人と下らなかった」と語った。法支配の伝統がない中国では、人民は統治者を信じない。信じるのは身内だけ。だから親類縁者の結束と協力は固い。
この家族主義の根はひじょうに深い。中国を身内とすれば、身内の外にいる人間や国家には何をしてもよいということになる。中国共産党機関紙である人民日報と人民網は、2007年8月28日付の中国食品の「毒」は日本から来たと題する記事で、朝日新聞社の発行する週刊誌AERA(アエラ)の記事を引用する形で、もともと中国製の食品は安全であったが、中国の食品が農薬や抗生物質を含むようになったのは、中国に抗生物質を持ち込み、中国で品質を無視して買い叩く日本人が原因である。日本は中国の食品安全問題に対して逃れようのない責任があり、日本人が悪いのになぜ日本人はあれこれ騒いでいるのだと、日本の食品安全に対する姿勢を非難している。
このような難癖は中国人の常とう手段だ。これで満州(中国東北)を侵略した日本の関東軍も怒らせた。満州に侵略する前、すべての事件を日本軍の責任に転嫁。法破りの中国人に関東軍将校は頭にきた。現在の日本人もそうだろう。ただ関東軍と現在の日本人に共通な性格は「感情的で観念的」「歴史を直ぐ忘れる」ことだ。もつと冷静になってほしい。
もう一つの中央集権独裁政治体制の伝統も中国の汚職を生む土壌を提供している。独裁体制にはチェック機関がない。2000年前に法支配を唱えた韓非の時代から官吏の腐敗は中国社会の大きな問題。ある意味で中国人ほど人間の弱さを持っている国民はいないと思う。既得権を死守し、権力を求め、金が全てだという観念にとらわれている。日本人のように現実離れした理想論を抱かない。ただただ現実的、即物的だ。その良し悪しは別として、中国人の文化から出た国民性だろう。
ただ中国共産党指導部にとり社会の腐敗は権力基盤を弱体化させる。これは中国史の冷徹な事実だ。習総書記はこの事実を理解しているはずだ。だから大衆の支持を得るために周一族の汚職疑惑を立件しようとしている。もちろん権力闘争の一環でもあろう。周一族の汚職疑惑をテコにして、習が自らの政治基盤を強化しようとしているのだろう。
中国の民主化は遠い夢にすぎない。中国人が遠い将来に議会制民主主義と自由を獲得できたとしても、それを身体の一部として自由自在に使いこなすことにはならないだろう。それを使いこなすにはまた気の遠くなる歳月が必要だ。