東野圭吾著『魔女と過ごした七日間』(2023年3月17日KADOKAWA発行)を読んだ。
その夏、しんじられないことばかり起きた。「ラプラスの魔女」シリーズ!
AIによる監視システムが強化された日本。
指名手配犯捜しのスペシャリストだった元刑事が殺された。
「あたしなりに推理する。その気があるなら、ついてきて」
不思議な女性・円華に導かれ、父を亡くした少年の冒険が始まる。
少年の冒険×警察ミステリ×空想科学
記念すべき著作100作目、圧巻の傑作誕生!
中学3年生の月沢陸真(りくま)は市の複合公益施設のエレベータで小学生が乗る車椅子を押す奇麗な女性・羽原円華と会った。けん玉の玉を自由に操り、天気の変化を予言する不思議な力を持っていた。
羽原円華は、シリーズ前作の『魔力の胎動』、『ラプラスの魔女』でも、主に活躍する不思議な美女。
中学3年生の月沢陸真は、遠くからけん玉の玉を転がしてエレベータの扉が閉まるのを防ぐという信じられない術を見せた羽原円華と出会った。陸真と二人暮らしのの父・克司(元刑事・見当たり捜査員)が休暇を取った翌日に無断欠勤し、死体で発見され、陸真は刑事・脇坂拓郎から事情を聞かれた。
陸真が父の家にあった荷物を調べると、見知らぬ永江照菜・7歳の診察代を支払った書類が出てきた。陸真は親友の宮前純也と円華とともに、謎の解明と犯人捜しを始めることになる。
本書は書下ろし
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)
いつもの東野作品のように、「それで、それで」と楽しく読める。
円華が事件の秘密を、中学生2人と、徐々に暴いていく過程は、楽しめるが、最後の謎の解明と、どんでん返しの犯人には多少強引な感じがあり、今一つ。
技術的問題の一つは、人の顔の判定を、熟練の人の判別能力とAIの勝負、違いと言った点だが、なるほどとは思うが、特に感心するほどではない。監視カメラネットワークで集めた顔画像データと、例えば取集ゴミの中から集めたDNA情報から顔画像を創成し、両者の相関を求め、一般市民の特定システムを作り上げるなどは、なかなかの発想と誉めてとらそう。
月沢陸真(りくま):中学3年生。父は克司。6歳の時、母を亡くす。
月沢克司:殺人被害者。2年前まで見当たり捜査員で、現在は警備員(潜入監視員)。
宮前純也:陸真の同級生。小説家志望。父親は自動車整備工場を経営。大学生の姉がいる。
羽原円華(まどか):物理現象を予測する力を持つ。数理学研究所の助手。父は所長で開明大学病院教授の羽原全太朗。
永江多貴子:月沢克司の恋人。7歳の照菜は娘。
脇坂拓郎:特捜本部の刑事。/高倉:特捜本部の係長。/伊庭:警察庁科学警察支援局課長、DNA捜査担当。/小倉警部補:克司の元同僚。
弘田直樹:5年前の大阪でのひき逃げ事件で指名手配中。/田中良介:詐欺罪で指名手配中。/新島史郎:17年前の強盗事件犯人でフェリーから飛び込み。人生を感じさせない顔をしている。(p59、143)
見当たり捜査員:何百人もの指名手配犯の顔写真を覚えていて、街中から見つけ出し、逮捕する。
潜入監視員:例えば、イベントに潜入し、カメラで多くの人を撮影し、AI解析で、営業データなどを得る。
エクスチェッド:脳神経に疾患を持っていて、同時に特殊能力が備わっている子供たち。
東野さんの小説に登場する一番の美人はいつも少し目の吊り上がった人なのだ。この本でも「奇麗な人だな、と陸真は思った。大きくて少し吊り上がった目が印象的だ。」(p5)