デイヴィッド・ロッジ著、高儀進訳「ベイツ教授の受難」2010年3月、理想社発行を読んだ。
ベイツは難聴のため早期退職したさえない言語学の元大学教授。自由きままな生活を楽しむつもりが、難聴の悪化、ボケだした父親宅訪問が重なり、ぼやくことが多くなる。しょっちゅう補聴器を忘れたり、壊したり、聞こえたふりしてまずい立場になるドジが多い。おまけに、ベイツが再婚した妻のフレッドは趣味のインテリア事業で成功し、妻の社交のお供も辛い。
そこに「遺書の文体分析」という博士論文の指導を求めるセクシーで虚言癖のある女学生が現れ、余計混乱する。そして、最後の方は、アウシュヴィッツ訪問や先妻死という深刻な話になる。
一つだけ、引用する。
デイヴィッド・ロッジ David Lodge
1935年ロンドン生まれ。「コミック・ノヴェル」の大家であり、世界中に多くの愛読者を持つ、英国を代表する作家。バーミンガム大学英文学名誉教授。
邦訳小説作品『大英博物館が倒れる』、『交換教授』、『どこまで行けるか』、『小さな世界』、『楽園ニュース』、『恋愛療法』、『胸にこたえる真実』、『考える…』、『作者を出せ!』(以上、白水社)、『素敵な仕事』(大和書房) 邦訳研究書『フィクションの言語 イギリス小説の言語分析批評』(松柏社)、『バフチン以後 〈ポリフォニー〉としての小説』(法政大学出版局)、『小説の技巧』(白水社)
訳者:高儀進(たかぎ すすむ)
1935年生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了。翻訳家。日本文藝家協会会員。主要訳書~D・ロッジ『大英博物館が倒れる』、『交換教授』、『どこまで行けるか』、『小さな世界』、『楽園ニュース』、『恋愛療法』、『胸にこたえる真実』、『考える…』、『作者を出せ!』(以上、白水社)、『素敵な仕事』(大和書房)
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)
英米文学には「キャンパス・ノベル」というジャンルがあるらしいが、著者は本作を「リタイヤメント・キャンパス・ノベル」と呼んでいる。確かに、大学内の話も出てくるが、キャンパスものというより、退職後の、体に不便を覚え始める高齢者の話の方にウエイトがある。
難聴による行き違いから生ずるとんでもない誤解やストレス、さらに老いて頑固な父親をめぐる哀しい物語だが、同時にユーモラスに「老い」、「死」を語っている。落ち込んでいく自分に比べ、平凡な主婦から成功した実業家になった元気な妻が、変わらずやさしいので救われる。
380ページは長すぎる。若干の謎、愉快なボヤキ、行き違いもあるが、どうして欧米の作家はこんな長い小説を書くのだろう。くたびれてついて行けない。
ベイツは難聴のため早期退職したさえない言語学の元大学教授。自由きままな生活を楽しむつもりが、難聴の悪化、ボケだした父親宅訪問が重なり、ぼやくことが多くなる。しょっちゅう補聴器を忘れたり、壊したり、聞こえたふりしてまずい立場になるドジが多い。おまけに、ベイツが再婚した妻のフレッドは趣味のインテリア事業で成功し、妻の社交のお供も辛い。
そこに「遺書の文体分析」という博士論文の指導を求めるセクシーで虚言癖のある女学生が現れ、余計混乱する。そして、最後の方は、アウシュヴィッツ訪問や先妻死という深刻な話になる。
一つだけ、引用する。
彼女は、よく「ダーリン」と私に呼びかけるが、必ずしも愛情を込めてではない。事実、その親愛の情を表す言葉を彼女ほどに、苛立ち、非難、憐憫、皮肉、不信、絶望、倦怠を含め、きわめて多くのそれぞれ違った敵意の籠ったトーンで発することができる者を私は誰も知らない。
デイヴィッド・ロッジ David Lodge
1935年ロンドン生まれ。「コミック・ノヴェル」の大家であり、世界中に多くの愛読者を持つ、英国を代表する作家。バーミンガム大学英文学名誉教授。
邦訳小説作品『大英博物館が倒れる』、『交換教授』、『どこまで行けるか』、『小さな世界』、『楽園ニュース』、『恋愛療法』、『胸にこたえる真実』、『考える…』、『作者を出せ!』(以上、白水社)、『素敵な仕事』(大和書房) 邦訳研究書『フィクションの言語 イギリス小説の言語分析批評』(松柏社)、『バフチン以後 〈ポリフォニー〉としての小説』(法政大学出版局)、『小説の技巧』(白水社)
訳者:高儀進(たかぎ すすむ)
1935年生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了。翻訳家。日本文藝家協会会員。主要訳書~D・ロッジ『大英博物館が倒れる』、『交換教授』、『どこまで行けるか』、『小さな世界』、『楽園ニュース』、『恋愛療法』、『胸にこたえる真実』、『考える…』、『作者を出せ!』(以上、白水社)、『素敵な仕事』(大和書房)
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)
英米文学には「キャンパス・ノベル」というジャンルがあるらしいが、著者は本作を「リタイヤメント・キャンパス・ノベル」と呼んでいる。確かに、大学内の話も出てくるが、キャンパスものというより、退職後の、体に不便を覚え始める高齢者の話の方にウエイトがある。
難聴による行き違いから生ずるとんでもない誤解やストレス、さらに老いて頑固な父親をめぐる哀しい物語だが、同時にユーモラスに「老い」、「死」を語っている。落ち込んでいく自分に比べ、平凡な主婦から成功した実業家になった元気な妻が、変わらずやさしいので救われる。
380ページは長すぎる。若干の謎、愉快なボヤキ、行き違いもあるが、どうして欧米の作家はこんな長い小説を書くのだろう。くたびれてついて行けない。