知念実希人『サーペントの凱旋 となりのナースエイド』(2024年12月2日KADOKAWA発行)を読んだ。
「となりのナースエイド」シリーズ再び! 難病シムネスの驚くべき真実。
あらゆる臓器に同時多発的に悪性腫瘍が生じる奇病「シムネス」は、星嶺医大附属病院の伝説的外科医・火神郁男の命までも奪った。
火神の死から三年、ナースエイドと外科医の二刀流で働く桜庭澪は、新時代のがん治療装置「オームス」のテストオペレーターとしてハイレベルな手術を一手に引き受けていた。
オームス実用化に向けた重要な手術を控えたある日、医師免許を剥奪され海外に渡っていた竜崎大河が突然姿を現す。
澪と大河は再びタッグを組み、シムネスの驚くべき秘密に迫っていく。
2023年11月発売の『となりのナースエイド』の続編。
星嶺大学医学部附属病院に、新人ナースエイドとして配属された主人公の桜庭澪は、半年前の姉の死をきっかけとしてPTSDになり、医療行為を行おうとするとパニック発作が現れて外科医を続けられなくなってしまったが、統合外科主任教授の火神郁男の紹介でナースエイドの仕事に就いた。
星嶺大学とパナシアルケミ社が開発するオームスは、ガン患者に注入させた新火神細胞を操り、体中のあらゆるがん細胞を死滅させる実験に成功していた。しかし、突如シムネス(がん細胞)が進行性となり異状高速増殖する現象が起こり……。
主要登場人物
桜庭澪(さくらば・みお):PTSDとなり、外科医を辞めて患者に寄り添おうと、星嶺大学医学部附属病院のナースエイド(看護助手)となる。オームスのテスト・オペレーター。
桜庭唯(さくらば・ゆい)
澪の姉で新聞記者。高校時代に白血病の治療を受け、シムネス発症。再入院中に病院の屋上から転落死。当初は自殺とされていた。恋人は新宿署の刑事の橘信也。
竜崎大河(りゅうざき・たいが):星嶺大学医学部附属病院の統合外科のプラチナ外科医。天才的な技術を持つが、技術至上主義であり、患者への寄り添いは避けていた。
火神郁男(ひがみ・いくお):統合外科主任教授。超人的技術を持つ外科医。火神細胞の発明者。手術で死亡。
火神玲香(ひがみ・れいか):火神教授の娘で、ゴールド外科医。病院を退職し、巨大製薬会社パナシアルケミ社へ入社。
猿田:星嶺大学医学部附属病院の医局長。外科医の腕はいまいちだが、関連との調整能力は高い。
愛川萌香:パナシアルケミ社の研究員。主に澪の助手を務める。
火神細胞:万能細胞に処理を施し、免疫細胞の一種・ナチュラルキラー細胞の性質を持たせた細胞。がん細胞や病原体を特異的に貪食し、排除していく。
新火神細胞:バイオピューターを組み込んだ火神細胞。
オームス:がん治療システム。オペレーティングユニット、火神細胞に組み込まれたバイオピューターと、全体を制御するスーパーコンピューターより成る。
シムネス(全身性多発性悪性新生物症候群):がん細胞にシムネスウイルスが感染することが原因と考えられる本作品内だけの疾患。シムネス患者数は全国でも年間数十例程度。
サーペント(serpent):現実にはいないほど大きい蛇。医学の神・アスクレピオスの杖に巻き付いている蛇。
私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの? 最大は五つ星)
医療情報もたっぷり出てくるが、さすが知念さんの文章は読みやすく、理解しやすい。ただし、取り扱ってる情報は難しい医学物なのに、展開、キャラクター、会話は中学生向けのよう。
人物造形、会話が極端で漫画的(誉め言葉ではない)。展開も、冗談でからかっていた身近な人が敵側のスパイだったり、外国の名うての殺し屋が突然登場しアクションシーンになったり、ユーモアや、余裕がなく、あかぬけない。
医療物ではあるが、サスペンスとアクションということでが、全体の統一感がない。