hiyamizu's blog

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高野秀行『ワセダ三畳青春記』を読む

2021年09月11日 | 読書2

 

高野秀行著『ワセダ三畳青春記』(集英社文庫、た58-3、2003年10月25日集英社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

三畳一間、家賃月1万2千円。ワセダのぼろアパート野々村荘に入居した私はケッタイ極まる住人たちと、アイドル性豊かな大家のおばちゃんに翻弄される。一方、私も探検部の仲間と幻覚植物の人体実験をしたり、三味線屋台でひと儲けを企んだり。金と欲のバブル時代も、不況と失望の九〇年代にも気づかず、能天気な日々を過ごしたバカ者たちのおかしくて、ちょっと切ない青春物語。 文庫書き下ろし。

 

表紙のタイトルの下には「早稲田大学正門徒歩5分路地裏胡桃木古木造二階アパ野々村荘三帖」とある。

 

90年代初め、バブル真っ盛りの日本社会から隔絶されたこの貧乏アパートには、突き抜けたキャラの、目を覆うほどの奇人変人たちが住んでいた。
ボロボロスリッパを10年以上履き続け、見かねた大家さんが新しいスリッパに取り換えても、怒って回収したスリッパを履き続け、隣室の寝返りの音がうるさいと文句をつける「守銭奴」、寝すぎて疲れて、また眠るという『永久睡眠法』を実践しているアホ成田、等々。
その中に、「無用な金は稼がない。無用な金は使わない」、「カレーを連続25回食べた」、「3,4粒食べれば幻覚を見るというチョウセンアサガオの種を100粒ほど食べて15時間意識不明になった」、「夏場で半年間風呂に入らなかった。プールなら塩素消毒され、泳げて一石二鳥」という著者・高野さんがいた。

 

その他、素人だらけのスイマー集団「河童団」が水泳大会に出場するハメになる話、長期の旅から帰ったら自分の部屋に他人が住んでいて、それがこのアパートの常識だという話、等々。

 

しかし、時が過ぎ、そんな彼らもやがてマスコミ関連などに就職する。ときたま会うと、

「高野は自由でいいなあ」「高野さんみたいにやりたいことをやっている人は幸せですよ」と心底羨ましそうに語る。中には「おまえだけは、いつまでも変わらないでいて欲しいな」など…いう人もいる。

そんなとき、私は正直言って、すごくいい気分になる。「いや、これでもいろいろたいへんなんだよ」と言いながら頬が緩んでしまう。(p227-228)

その高野さんに遅すぎる……が訪れた。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

ともかく笑える。馬鹿さ加減にあきれ、笑える。その徹底ぶりにあきれ、羨ましく思いながら、笑える。私の記憶では高野さんは講演で「男の子はみんなこうだったんですよ。ただ私は今もやっているだけです」というようなことを言っていた。宮部みゆきさんは「心に半ズボンはいてる」と言った(吉田伸子氏の解説より)。

女性には理解しがたいだろうが、社会人になった男性でも、幾分かは「子供のしっぽ」をぶら下げていて、高野さんのような人を羨ましく思うのだ。

 

「彼が来ると、納豆卵とかもやし炒めとかを一緒に食い」(p203)とあって、「え! これ我家の昼飯じゃん。究極の清貧生活の高野さんと、金持ちの我家の飯が同じとは笑える」と思った。

 

 

高野秀行 略歴と既読本リスト

 

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