hiyamizu's blog

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村山由佳「ダブルファンタジー」を読む

2010年05月30日 | 読書2
バンクーバー旅行報告の途中だが、読書感想を挟む。



村山由佳著「ダブルファンタジー」2009年1月、文藝春秋発行を読んだ。

人気の脚本家、奈津は三十五歳。10年ほど成功へのマネージをしてくれていた夫は支配的、抑圧的でセックスレス。家を飛び出し、デビューから敬愛していた演出家との支配的で圧倒的な性愛に溺れる。さらに、もう後戻りはしないとばかり、やさしい先輩や、役者、精神科医で僧侶などと情事を重ねていく。

中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、島清恋愛文学賞の受賞作品だ。

村山由佳というとお嬢様、アイドル作家、房総の牧場で暮らす自然派作家のイメージがあったが、「週刊文春」(2007年6月~2008年8月)連載中から濃厚なベットシーンが評判になった作品だ。

文藝春秋のダブルファンタジー特設サイトの著者インタビューにはこうある。


村山
まず、自分の殻を破りたいということがありました。小説家として、私はどこに向かっていくのだろう。どういう小説を書いていきたいんだろう、と自問した時に、このままずっと同じテイストのものだけ書いていたら駄目になってしまう、と感じて。一度思いっきり突き抜けたものが書きたかったし、今まで遠慮していたものをとことん突き詰めてみたかったんです。
・・・
この小説はあえてラストを決めずに書いたので、どんな風に物語がうねっていってくれるかは、私自身にも分からなかったし、半ば賭けのようなものでした。奈津をめぐる男たちと奈津の関係を書きすすめていくうちに、それぞれの男が自分の役割を果たしていって、結果的に奈津を成長させてくれた。
・・・
女性は永遠に母親から支配を受ける対象であるという宿命がある。意識しているかどうかにかかわらず、多くの女性が大なり小なり母親への複雑な愛憎を抱えているんじゃないでしょうか。
・・・
実を言うと、小説の中で「乳首」って書いたのは生まれて初めてなんです。もう、崖から飛び込むような気持でした。
(インタビューア:向田邦子さんが親が生きている間は「ケツ」とはどうしても書けなかったと書かれていたことを思い出します。作家それぞれに使えないことばってあるんですね。)




私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読めば)

494ページもあり、そのベッドシーンが延々と続く。私もキライじゃないけど、ウンザリだ。女性の女としての成長小説なのだろう。村山由佳さんとどうしても重なって読んでしまう。



村山由佳(むらやま・ゆか)は、1964年、東京都生まれ。
大学卒業後、会社勤務、塾講師などを経て、1993年「天使の卵~エンジェルス・エッグ」で小説すばる新人賞受賞。2003年、『星々の舟』で第129回直木三十五賞を受賞。
公式ホームページ www.yuka-murayama.com



前述の著者インタビューの中で、「奈津と関係する主な男性キャラクターについて村山さんの寸評をつけていただきたいのですが」という問いに対して村山さんはこう答えている。(こんなことまで著者自身が語っていいのだろうか?)

志澤は演出家だけあって自分自身の見せ方を心得ていて、しかし同時に自分にファンタジーを抱きすぎている、そういう男ですね。性的におぼこだった奈津は、ころっと騙されて、彼が演出するままのイメージで彼を見てしまったけれど、やがて目が開かれていくうちに、だんだん志澤が大きく見えなくなってくる。わりと張りぼて感のある男じゃないかな(笑)。
 岩井先輩は、これまで私が書いてきた男性の中で最も人間くさい。ものすごく優しくて、同時にものすごく弱い。奈津とは友情や信頼があった上での性的パートナーであり、一番の理解者だけど、その反面とてもずるいところもある。書いていて面白い人物でした。
 年下の大林については、作者が言うのも変ですが、かなり未知数な男なんです。奈津も彼が自分を幸せにしてくれるとは思っていない。見るからに怪しいし、どちらかというとろくでもない男。それでいて意外と純情だったりする。ただ、彼女にとっては今、この刹那(せつな)を燃やしてくれる花火みたいな男、なんですかね


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