hiyamizu's blog

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五十嵐彰、迫田さやか『不倫』を読む

2023年07月03日 | 読書2

 

五十嵐彰・迫田さやか著『不倫 ―実証分析が示す全貌』(中公新書2737、2023年1月25日中央公論新社発行)を読んだ。

 

表紙裏にはこうある。

既婚者が配偶者以外と性交渉をもつことを指す「不倫」。毎月のように有名人がスクープされる関心事だが、日本では客観的な研究がほとんどない。本書では、気鋭の社会学者と経済学者が大規模調査を敢行。実験的手法や海外の先行研究も活用して実態に迫る。経験者は何%か。どんな人が不倫しやすいのか。どこで出会い、いかに終わるか。家族にどんな影響があるか。誰が誰をバッシングするのか。実証分析により解き明かす。

 

帯にはこうある。

既婚男性の51.9%、既婚女性の24.7%に不倫経験あり

「過ち」はなぜ、どのように起きるのか

男性は職場に女性が多いと、女性は自由時間が多いと不倫しやすい

収入の高い男性ほど、自分より若い女性と不倫しやすい

 

スケベ心を刺激する日刊ゲンダイの紹介文

日本人既婚者約7000人の調査をもとに、俗説や噂に惑わされがちな「不倫」を学問の対象として論じたリポート。
 不倫について賛否を問うと「絶対に間違っている」「まあ間違っている」と答える人が約90%にのぼる。一方で男性の約52%、女性の約25%が今まで不倫をしたことがあると回答。自由になる時間が多ければより不倫をしやすくなるが、女性の場合は専業主婦かどうかは不倫と関係ないという。
 また、不倫は収入や職業の社会的評価とも関係するが、男性の場合、自身よりも配偶者の収入が高い人の方が不倫しやすい傾向にあるという。
 ほかにも不倫相手との出会い方やセックスの頻度、継続期間などのデータを示し、人はなぜ不倫をするのかを明らかにする。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

日本での不倫の状況をざっと知ることができるが、それだけならややこしい本書を読む必要はない。

本書は大規模調査を実施して、科学的統計的分析をして、学術研究を行った結果の簡易版報告なのだ。

当然のことだが、本書には統計的結果のみで、具体的事例はまったく登場しないのであしからず。

 

大規模調査は良く工夫されていて、どんな人が、どのような相手と不倫しているのかが統計的に示されている。しかし、何が原因か、何を求めているのかなどに踏み込むと、一応の結論は導き出されているが、一抹の不審は残る。

 

私は、道徳的問題について人々がどう考えているのかを調査する手段、方法に興味があった。問題への回答に他の要素が混じらないように種々良く工夫されているが、絡み合う問題には、要因が完全には分離できず、ドンピシャの回答は得られていないのではないかと思う。

 

不倫とは残念ながら縁遠い私も、「実証分析」との言葉に下世話心を刺激されて読んでみた。そして満たされた。実態はほぼ予想通りだったのだが、だからと言って、どうということない。

 

 

五十嵐彰(いがらし・あきら)

1988年生まれ。東北大学文学研究科行動科学専修博士課程修了。立教大学社会情報教育研究センター助教などを経て,2021年より大阪大学人間科学部講師。

共著に『移民政策とは何か』(2019年,人文書院),『日本人は右傾化したのか』(2019年,勁草書房)などがある。

 

迫田さやか(さこだ・さやか)

1986年,広島県生まれ。同志社大学経済学研究科博士後期課程修了。日仏財団EHESS博士研究員,同志社大学経済学部助教などを経て,2022年より同志社大学経済学部准教授。

橘木俊詔氏との共著に『夫婦格差社会』(2013年,中公新書),『離婚の経済学』(2020年,講談社現代新書)がある.

 

 

以下、私のためのメモ。読みながら入力し、読み返ししていないので、間違っているかも。

 

まえがき

よく言われる俗説は真実か?(子はかすがい or 結婚前に遊んだ人は不倫せず、逆も真)

 

第一章 不倫とは何か

・日本の離婚は、協議離婚→調停→審判→裁判と進むが、協議離婚が90%。

・裁判で離婚が認められる理由(民法770条)は、①不貞行為、②生活費を渡さないなどの悪意の遺棄、③3年以上の生死不明、④強度の精神病、⑤婚姻を継続し難い重大な事由

・現在の実務上、風俗営業で口淫や手淫サービスを受けただけでは離婚は認められないという見解が強い。風俗店外での性行為は離婚の対象となる。

・不貞行為慰謝料は最低30万円、最大300万円、平均162万円とのデータがある。また150件の裁判例のうち、配偶者のみを訴えたのは17件、配偶者と相手を訴えたのは14件、相手方のみは(欧米でのは禁止の場合が多いが)119件。

 

第二章 どのくらいの人がしているのか――実験で「本当の割合」を推計する

1998年から2018年にかけて「絶対に間違っている」(約40%)と「まあ間違いだと思う」(約50%)と約20年にわたりほぼ90%。日本は他国と比較すると不倫に対して緩めの態度だ。

2020年の既婚者6651名への調査(NTTコムオンライン) 

     今までしたことない  過去していたが今はしていない  現在している

 男性    53%           27%            4.6%

 女性    85%           13%            7.1%

 

過去にしたことがある

 イギリス、ドイツ  男性20%、女性15% 

 フランス      男性55%、女性32% (2014年)

 中国        男性33%、女性11% (2015年)

 アメリカ      男性21%、女性19% (2015年)

 

第3章 誰が、しているのか――機会・価値観・夫婦関係

・2020年の既婚者6651名への調査結果の分析から

(既婚)女性は専業女性かどうかは不倫とは関係なく、自由時間が多ければより不倫しやすくなる。
男性は、職場の女性割合が増えればそれだけ不倫のしやすさが増える。しかし、仕事や家庭以外で自由になる時間や出張日数は不倫のしやすさと関連がない。
男性は、社会的評価の高い仕事の人は評判を気にするので不倫しなくなる。したがって、収入が高いと不倫しやすくなるのは金銭的資源の効果であると分かる。

・女性は配偶者の人格に対する満足度が低ければ不倫しやすく、配偶者とのセックスの満足度は関係ない。男性は配偶者とのセックスに不満をもっていると不倫しやすい。配偶者の職業と見た目に対する満足度は不倫のしやすさと関連ない。

・子供の数や結婚年数は不倫のしやすさと関連がない。

・結婚前の浮気経験は、男女に共通して、不倫を促進する強い影響がある。また、現在の配偶者と交際中に浮気した人の方が、結婚後より不倫しやすい。

・年代も学歴も不倫しやすさとは関係ない。

 

第4章 誰と、しているか――同類婚と社会的交換理論

第4章と第5章では、不倫を現在している人やこの1年間で不倫をした人に対象を絞る。

・不倫相手との出会いは、男性は、インターネットが22%、職場20%、友人等15%。女性はインターネットが19%、友人等の紹介19%、趣味・習い事15%。

・どちらから誘うか? 自分から誘ったという男性は44%、女性は約4%、どちらからともなくが男女共通して4割。

・既婚女性:既婚男性48%、既婚女性:未婚男性6.3%、既婚男性:未婚女性42%、相手の婚姻状態不明3.8%

・不倫男性の平均年齢は48歳、女性は44歳。

・人格、収入、仕事、学歴、見た目、家事、自身の仕事への理解、趣味、セックスのうち、男性が不倫相手の方が良いとしたのは見た目とセックス。女性は人格、見た目、趣味、セックス。

 

第5章 なぜ終わるのか、なぜ終わらないのか  略

第6章 誰が誰を非難するのか  略

 

 

コメント (1)
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