hiyamizu's blog

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朝倉かすみ『田村はまだか』を読む

2019年10月27日 | 読書2

 

朝倉かすみ著『田村はまだか』(光文社文庫あ53-1、2010年11月20日発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

深夜のバー。小学校のクラス会三次会。男女五人が、大雪で列車が遅れてクラス会に間に合わなかった同級生「田村」を待つ。各人の脳裏に浮かぶのは、過去に触れ合った印象深き人物たちのこと。それにつけても田村はまだか。来いよ、田村。そしてラストには怒涛の感動が待ち受ける。’09年、第30回吉川英治文学新人賞受賞作。傑作短編「おまえ、井上鏡子だろう」を特別収録。

 

札幌ススキノのスナック「チャオ!」で田村を待つ5名の同級生の会話。全6話の連作短編集と追加の短編。

 

第一話、第二話は、「田村はまだか」、第三話は「それにつけても田村はまだか」で終る。

 

小学校の同級生

エビス、班長:伊吹祥子。離婚したて。

加持千夏:ちなっちゃん。いいちこを飲む。男子校の保健室の先生。昨年離婚。

コルレオーネ:マーロンブランドの矮小版。坪田隼雄。生命保険会社営業所長。童貞

永田一太:腕白男、営業。

池内暁:化粧品等の卸会社の営業。

田村久志:「チャオ!」でのクラス会に遅れている。現在豆腐屋のあるじ。女房は中村理香で、こども二人。

中村理香:小6の時、問題児。

 

花輪春彦:札幌ススキノのスナック「チャオ!」のマスター。46歳。一昨年離婚、退社し開店。

二瓶正克:池内暁の指導係。42歳。

石田康夫:池内暁の上司。

キッド:島村裕樹。千夏34歳の時の高校1年の生徒。

 

(特別収録作品)

おまえ、井上鏡子だろう

小野垣ハジメは小学校のクラス会があった居酒屋を出て来て、酔っぱらった女に出合う。通りすぎてから、同じ中学だった井上鏡子だと気付く。彼女は親友の山田真人と同じクラスだった。

 

 

単行本は2008年光文社刊。短編「おまえ、井上鏡子だろう」は2008年柏艪社のアンソロジーより。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

クラス会の3次会で田村を待ちながら、訳ありの5人が語り合う芝居を観ているような構成と、互いの関係が微妙で、会話内容が面白い。

ベケットの「ゴドーを待ちながら」は不条理劇で「意味わかんない!」そうだが、この作品での各人の会話は意味深で、小学校の時の話と、現在の男女間の関係が絡まり、複雑だ。

 

これだけ待たれて、ようやく登場の田村の魅力と、なぜ皆が待っているのかが、いまひとつ伝わらない。

 

 

朝倉かすみ(あさくら・かすみ)の略歴と既読本リスト

 

  

小6の田村が中村理香に言った。

「どうせ死ぬから、今、生きてるんじゃないのか」……

「どうせ小便するからって、おまえ、水、のまないか? どうせうんこになるからって、おまえ、もの、くわないか? …」……

「でも、今は生きてるんだ」……

おれは、今、ここにいる。それでいいんじゃないか、という。

‥‥

「好きだよ」

 

妻は離婚届を出して夫に言った。

「お友だちとミドリ同盟をつくってたのよ」……

「だんなが定年になったら別れましょうね、って同盟」……

たしかに、離婚届けの罫線の色はみどりだ。

 

コメント
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