hiyamizu's blog

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中室牧子『「学力」の経済学』を読む

2016年03月11日 | 読書2

 

 

中室牧子著『「学力」の経済学』(2015年6月18日ディスカヴァー・トゥエンティワン発行)を読んだ。

 

教育については、「教育評論家」や「子育てに成功した親」の個人的経験、主観的な意見が幅をきかせている。この本は、経済学的な手法の分析(統計的手法)を用いて得られた科学的根拠ある知見を教えてくれる。

 

例えば、

「勉強させるためにご褒美で釣ってもよい」
「子どもはほめて育てしてはいけない」
「ゲームをしても暴力的にはならない」

 

子どもの学力にもっとも大きな影響を与える要因は親の年収や学歴。

 

 

米国での3万人以上の実験結果

ご褒美は、「テストの点数」などのアウトプットではなく、「本を読む」「宿題をする」などのインプットに対して与えるべき

アウトプットにご褒美が与えられてもどうすれば学力が上がるか、子どもたちにはわからない。どうすれば成績を上げられるかという方法を教え、導いてくれる人が必要。

 

 

「自尊心が高まると学力が高まる」という定説に基づいて、自尊心を高めるための大規模なプロジェクトが行われたが、失敗に終わった。それは自尊心と学力は相関関係に過ぎず、因果関係は逆。つまり、学力が高いという「原因」が、自尊心が高いという「結果」をもたらしている。

むやみやたらに子どもをほめると、実力の伴わないナルシストを育てることになりかねません。

 

 

「頭がいいのね」はだめで、「よく頑張ったね」が効果的

もともとの能力を褒められた子どもは、良い成績が取れた時は「自分は才能があるからだ」と考え、悪い成績の時は「自分が才能がないからだ」と考える。

 

 

1時間テレビやゲームをやめさせたとしても、男子は最大2分、女子は3分学習時間が増加するに過ぎない。1日2時間を超えなければ、子どもの発達に大きな影響はない。

 

 

「勉強するように言う」というお手軽は効果がない。「勉強を見ている」「勉強する時間を決めて守らせる」という親が自分の時間を犠牲にする手間のかかる関わりの

効果が高い。

 

 

もっとも人的資本投資の収益率が高いのは、子どもが小学校に入学する前の就学前教育。ただし、人的投資には勉強のほか、しつけなど人格形成、体力や健康への支出も含む。

 

 

学校で平等を重視した教育―「手をつないでゴールしましょう」という方針の運動会などーの影響を受けた人は、他人を思いやり、親切にし合おうという気持ちに「欠ける」大人になってしまうことが明らかになっています。・・・

平等主義的教育は、「人間が生まれながらに持つ能力には差がない」という考え方が基礎となっている。・・・成功しないのは努力せずに怠けているからだと考えるようになってしまい、・・・

 

 

私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

実験結果に基づく教育効果について、解りやすく述べられている。その結果は、従来の個人的経験に基づく教育論とは違っていることが多く、驚かされる。

その多くは、米国での実験結果であり、日本にそのまま当てはまならいこともあるだろう。しかし、日本でも偉い人のお説教でなく、教育に関する科学的知見が求められていると思う。

 

もう一つ、著者に主張しているのは、学校教育以上に、家庭内教育など家庭や社会の環境が教育結果により大きな影響を及ぼすという点である。親は、良い学校を選び、教師などに神経をとがらせる以上に、口だけでなく、自ら時間を割いてしつけや教育に力を入れるべきである。

 

 

 

中室牧子(なかむろ・まきこ)

1998年慶應義塾大学卒。コロンビア大学で博士号取得。

日銀や世界銀行勤務を経て、2013年から慶應義塾大学総合政策学部准教授として「教育経済学」を研究。

 

本文中にこうあるが、

いい先生とはいったいどんな先生か。「美人の先生ほど授業評価が高かった」という研究結果がある。

私もときどき大学で「美人ですね」といわれることがありますが、それはたいてい成績の芳しくない学生と成績について話しているときに限られますので、自分の実力については正確に把握しているすもりです。

ネットで検索すると、中室先生はなかなか美人だ。まあ、そうでなければ、こうは書けないだろうが。

 

 

目次
第1章 他人の〝成功体験〞はわが子にも活かせるのか?
    - データは個人の経験に勝る
第2章 子どもを〝ご褒美〞で釣ってはいけないのか?
    - 科学的根拠に基づく子育て
第3章 〝勉強〞は本当にそんなに大切なのか?
    - 人生の成功に重要な非認知能力
第4章 〝少人数学級〞には効果があるのか?
    - エビデンスなき日本の教育政策
第5章 〝いい先生〞とはどんな先生なのか?
    - 日本の教育に欠けている教員の「質」という概念

 

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