夏川草介著『神様のカルテ0』(2015年3月1日小学館発行)を読んだ。
シリーズ200万部のベストセラーの2年ぶり第3作。
『神様のカルテ』、『神様のカルテ2』、『神様のカルテ3』の前の話になるので「0」なのだ。ヒットすると、後から「0」が出る、最近よくあるパターンだ。
話は、主人公・栗原一止(いちと)が信濃大学医学部6年生で、国家試験勉強まっさかりから始まる。同じく有明寮の住人で、秀才の新藤辰也、その恋人の如月千夏、巨漢の砂山次郎などおなじみのメンバーが登場する。
次に栗原が研修医として飛び込んだ地域医療の本庄病院での話に移り、大狸先生こと板垣内科部長、古狐先生こと内藤鴨一、金山事務長や、外村看護師、東西看護師も登場する。
さらに、栗原が下宿する「御嶽荘」の住人、学士殿、男爵などが登場し、
最後に冬山の場面で、栗原の妻となるハル、片島榛名がカッコ良く登場する。
高校の国語教師で癌患者の国枝さんが言う。
“本にはね、先生。「正しい答え」が書いてあるわけではありません。本が教えてくれるのはもっと別のことですよ”・・・“ヒトは、一生のうちで一個の人生しか生きられない。しかし、本は、また別の人生があることを我々に教えてくれる。たくさんの小説を読めばたくさんの人生を体験できる。そうするとたくさんの人の気持ちもわかるようになる”
大狸先生が言う。
「神様がそれぞれの人間に書いたカルテってもんがある。俺たち医者はその神様のカルテをなぞっているだけの存在なんだ」
私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)
要するに、本書はこの後に登場するさまざまな人の紹介で終わる。というのは言い過ぎで、研修医として初めての病院勤務での患者対応や、冬山でのハルの活躍はなかなかのものだ。
「1」「2」「3」を既に読んだ人は、なるほどなるほどとあらためて確認することができるが、初めて読んだ人は物足りないだろう。
栗原一止(いちと):信濃大学医学部6年生、有明寮の住人、高知生まれ、夏目漱石の『草枕』を全文暗唱できる。地域を支えてきた松本の本庄病院を受けるつもり。
新藤辰也:信濃大学医学部6年生、有明寮の住人、松本の実家は蕎麦屋、秀才、帝都大学研修コースに合格
砂山次郎:信濃大学医学部6年生、有明寮の住人、北海道酪農家出身、巨漢
草木まどか:信濃大学医学部6年生、有明寮の住人、岡山出身、元テニス部部長、有明寮の住人、口は悪いが明朗、追試の常連
如月千夏:信濃大学医学部5年生、将棋部でテニス部、新藤辰也と付き合っている
楠田重正:信濃大学医学部6年生、有明寮の住人、52歳。酒におぼれる。留年決定。
小野寺誠:飯田の病院から大学に戻った。かって、まどかと付き合っていた2年先輩。女の子との付き合いは“広く、深く、楽しく”がモットー。
本庄忠一:松本駅近く300床超の総合病院で、「24事件365日対応」の看板を掲げる本庄病院の院長
板垣源蔵:本庄病院内科部長、栗原一止は大狸先生と名付けた
内藤鴨一:本庄病院内科副部長、栗原一止は古狐先生と名付けた
乾:本庄病院外科部長、来年退職し、「乾診療所」を開業予定
金山弁次:本庄病院事務長、赤字の病院を建て直しのために官僚からヘッドハンティングされた。
外村看護師:救急部副師長
東西直美:看護師
栗原一止は本庄病院の研修医となり「御嶽荘」の「桜の間」に下宿する
学士殿:「御嶽荘」の「野菊の間」の住人。信濃大学哲学科専攻の大学院生。
男爵:「御嶽荘」の「桔梗の間」の住人。自称絵描き。
専務:「御嶽荘」の「椿の間」の住人。金融機関に勤める新人OL。会社の専務に一目ぼれ。
健三:常念岳に30年ぶりに登る50歳。
布山浩二郎:那智子の夫。30歳過ぎ。
布山那智子:浩二郎の妻。30歳過ぎ。
片島榛名:著名な山岳写真家。栗原の妻となるハル(榛名)で、最後に少しだけカッコ良く登場する。