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た五輪1周年イベント? バッハ会長出席し10月開催
2022年9月9日 05時05分 (9月9日 05時05分更新)
東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件が拡大する中、二〇三〇年冬季五輪招致を目指す札幌市の秋元克広市長が国際オリンピック委員会(IOC)本部訪問を見合わせた。バッハ会長とのトップ会談は実現しなかったが、来月にはIOCの五輪一周年イベントが国立競技場であり、バッハ会長も参加するという。一周年と言えば都の記念イベントが七月にあったばかりだが、なぜまた開くのか。
六日、東京大会組織委員会の元理事が受託収賄容疑で再逮捕された。速報がテレビで慌ただしく流れる中、札幌市の担当者はIOC訪問中止の理由を「あくまでスケジュールの都合。汚職事件は一切関係ありません」と繰り返した。
市招致推進部によると、今月十四〜十七日、秋元氏がドイツ・ミュンヘンに出張するのに合わせ、スイス・ローザンヌのIOC本部を訪れ、バッハ会長と面談する計画だった。日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長も同行する予定だったが、日程調整で折り合えなかったという。
JOC広報部も「訪問を見送ったことと、贈収賄事件について捜査されていることとは関係ありません」とコメントした。
だが、都によると、バッハ氏は十月十六日に国立競技場で開かれる五輪一周年記念イベント「Thank you Tokyo!」に出席する予定。市民の招致支持率が伸び悩んでいるだけに、札幌市の担当者は「継続的な対話が大事。バッハ氏の訪日時にも対談の可能性を探ることになる」と話すが、「現時点では何のめどもたっていない」という。
そもそも八月下旬に発表された、このイベントはどんなものなのか。都によると、昨年七月時点でIOC主催の「日本への感謝を伝える催し」として実施が決まっていた。
ただ、今年七月にも同じ国立競技場などで、都主催の一周年記念イベント「TOKYO FORWARD」が開かれたばかりだ。海外の出場選手による競技のデモンストレーションなどは加わるものの、陸上やラグビーの競技体験、メダルの展示などのプログラムは似たり寄ったりの感が否めない。
「汚職事件の影響で厳しいご意見があることも承知している」と都の担当者。それでも、「IOCとの調整を経て実施が決まったイベント。記念行事として東京レガシーハーフマラソンの初開催も併せて行われる」と意義を強調した。
どこまで広がるか見通せない五輪汚職が、札幌招致や記念イベントに与える影響は大きいのか。
東京都立大の舛本直文客員教授(五輪研究)は「コロナ禍での延期開催に恩を感じているIOCとしては、日本を大切にしたい思いが強い」とし、以前から決まっていた記念イベントの中止はあり得ないとみる。ただ、札幌五輪招致については「数年前から汚職防止の規定を整えてきたIOCにとって、今回の贈収賄事件で表だって動きにくくなった」と指摘する。
スポーツジャーナリストの谷口源太郎さんは「開催一年前や一年後の関連イベントの乱立は、IOCがマネーファーストにかじを切り、肥大化した現代五輪の象徴」と断じる。
「組織委は問題の多かった五輪そのものを総括していないのに、金集めだけに終始している。汚職事件がさらに進展していく可能性もある中で、レガシーを残すなどと聞こえのいい言葉を並べ立てても何の説得力も持たず、批判的に見られても仕方ない」
(西田直晃)
た五輪1周年イベント? バッハ会長出席し10月開催
2022年9月9日
東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件が拡大する中、二〇三〇年冬季五輪招致を目指す札幌市の秋元克広市長が国際オリンピック委員会(IOC)本部訪問を見合わせた。バッハ会長とのトップ会談は実現しなかったが、来月にはIOCの五輪一周年イベントが国立競技場であり、バッハ会長も参加するという。一周年と言えば都の記念イベントが七月にあったばかりだが、なぜまた開くのか。
六日、東京大会組織委員会の元理事が受託収賄容疑で再逮捕された。速報がテレビで慌ただしく流れる中、札幌市の担当者はIOC訪問中止の理由を「あくまでスケジュールの都合。汚職事件は一切関係ありません」と繰り返した。
市招致推進部によると、今月十四〜十七日、秋元氏がドイツ・ミュンヘンに出張するのに合わせ、スイス・ローザンヌのIOC本部を訪れ、バッハ会長と面談する計画だった。日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長も同行する予定だったが、日程調整で折り合えなかったという。
JOC広報部も「訪問を見送ったことと、贈収賄事件について捜査されていることとは関係ありません」とコメントした。
だが、都によると、バッハ氏は十月十六日に国立競技場で開かれる五輪一周年記念イベント「Thank you Tokyo!」に出席する予定。市民の招致支持率が伸び悩んでいるだけに、札幌市の担当者は「継続的な対話が大事。バッハ氏の訪日時にも対談の可能性を探ることになる」と話すが、「現時点では何のめどもたっていない」という。
そもそも八月下旬に発表された、このイベントはどんなものなのか。都によると、昨年七月時点でIOC主催の「日本への感謝を伝える催し」として実施が決まっていた。
ただ、今年七月にも同じ国立競技場などで、都主催の一周年記念イベント「TOKYO FORWARD」が開かれたばかりだ。海外の出場選手による競技のデモンストレーションなどは加わるものの、陸上やラグビーの競技体験、メダルの展示などのプログラムは似たり寄ったりの感が否めない。
「汚職事件の影響で厳しいご意見があることも承知している」と都の担当者。それでも、「IOCとの調整を経て実施が決まったイベント。記念行事として東京レガシーハーフマラソンの初開催も併せて行われる」と意義を強調した。
どこまで広がるか見通せない五輪汚職が、札幌招致や記念イベントに与える影響は大きいのか。
東京都立大の舛本直文客員教授(五輪研究)は「コロナ禍での延期開催に恩を感じているIOCとしては、日本を大切にしたい思いが強い」とし、以前から決まっていた記念イベントの中止はあり得ないとみる。ただ、札幌五輪招致については「数年前から汚職防止の規定を整えてきたIOCにとって、今回の贈収賄事件で表だって動きにくくなった」と指摘する。
スポーツジャーナリストの谷口源太郎さんは「開催一年前や一年後の関連イベントの乱立は、IOCがマネーファーストにかじを切り、肥大化した現代五輪の象徴」と断じる。
「組織委は問題の多かった五輪そのものを総括していないのに、金集めだけに終始している。汚職事件がさらに進展していく可能性もある中で、レガシーを残すなどと聞こえのいい言葉を並べ立てても何の説得力も持たず、批判的に見られても仕方ない」
(西田直晃
東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件が拡大する中、二〇三〇年冬季五輪招致を目指す札幌市の秋元克広市長が国際オリンピック委員会(IOC)本部訪問を見合わせた。バッハ会長とのトップ会談は実現しなかったが、来月にはIOCの五輪一周年イベントが国立競技場であり、バッハ会長も参加するという。一周年と言えば都の記念イベントが七月にあったばかりだが、なぜまた開くのか。
六日、東京大会組織委員会の元理事が受託収賄容疑で再逮捕された。速報がテレビで慌ただしく流れる中、札幌市の担当者はIOC訪問中止の理由を「あくまでスケジュールの都合。汚職事件は一切関係ありません」と繰り返した。
市招致推進部によると、今月十四〜十七日、秋元氏がドイツ・ミュンヘンに出張するのに合わせ、スイス・ローザンヌのIOC本部を訪れ、バッハ会長と面談する計画だった。日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長も同行する予定だったが、日程調整で折り合えなかったという。
JOC広報部も「訪問を見送ったことと、贈収賄事件について捜査されていることとは関係ありません」とコメントした。
だが、都によると、バッハ氏は十月十六日に国立競技場で開かれる五輪一周年記念イベント「Thank you Tokyo!」に出席する予定。市民の招致支持率が伸び悩んでいるだけに、札幌市の担当者は「継続的な対話が大事。バッハ氏の訪日時にも対談の可能性を探ることになる」と話すが、「現時点では何のめどもたっていない」という。
そもそも八月下旬に発表された、このイベントはどんなものなのか。都によると、昨年七月時点でIOC主催の「日本への感謝を伝える催し」として実施が決まっていた。
ただ、今年七月にも同じ国立競技場などで、都主催の一周年記念イベント「TOKYO FORWARD」が開かれたばかりだ。海外の出場選手による競技のデモンストレーションなどは加わるものの、陸上やラグビーの競技体験、メダルの展示などのプログラムは似たり寄ったりの感が否めない。
「汚職事件の影響で厳しいご意見があることも承知している」と都の担当者。それでも、「IOCとの調整を経て実施が決まったイベント。記念行事として東京レガシーハーフマラソンの初開催も併せて行われる」と意義を強調した。
どこまで広がるか見通せない五輪汚職が、札幌招致や記念イベントに与える影響は大きいのか。
東京都立大の舛本直文客員教授(五輪研究)は「コロナ禍での延期開催に恩を感じているIOCとしては、日本を大切にしたい思いが強い」とし、以前から決まっていた記念イベントの中止はあり得ないとみる。ただ、札幌五輪招致については「数年前から汚職防止の規定を整えてきたIOCにとって、今回の贈収賄事件で表だって動きにくくなった」と指摘する。
スポーツジャーナリストの谷口源太郎さんは「開催一年前や一年後の関連イベントの乱立は、IOCがマネーファーストにかじを切り、肥大化した現代五輪の象徴」と断じる。
「組織委は問題の多かった五輪そのものを総括していないのに、金集めだけに終始している。汚職事件がさらに進展していく可能性もある中で、レガシーを残すなどと聞こえのいい言葉を並べ立てても何の説得力も持たず、批判的に見られても仕方ない」
(西田直晃)