物価と金融政策 家計はもはや限界だ
2022年9月23日
日銀が金融政策決定会合を開き大規模な金融緩和の維持を決めた。会合後、外国為替市場で一気に円安が進み一時、二十四年ぶりに一ドル=一四五円台を付けた。
米連邦準備制度理事会(FRB)が前日、インフレ抑制に向け大幅利上げを決めており日米の金利差は一段と開いた。金利の高い通貨が買われるのは当然である。
この事態を受け財務省の神田真人財務官が「断固たる措置に踏み切った」と述べ、円買い・ドル売り介入を実施したことを明言した。介入の効果により一時大きく円高に振れた。
米国との関係を考慮すると実施のハードルは高かったはずだが、家計は限界にきており暮らしを犠牲にして対米配慮を優先することは許されない。介入は当然だ。
ロシアのウクライナ侵攻による資源高と円安による輸入物価高騰は国内物価を押し上げた。総務省が公表した八月の消費者物価指数は前年同月比2・8%増と、消費税増税の影響を除けば三十年十一カ月ぶりの上昇率を記録した。
懸念されるのは電気やガス代などエネルギー価格が16・9%、生鮮品を除く食料が4・1%と大幅に上昇していることだ。生活に必要不可欠な品目の高騰は家計に深刻な打撃を与えている。
ただ日銀の黒田東彦総裁=写真=は国内経済について需要が弱くデフレ傾向にあるとの見方を変えていない。これが消費や設備投資を促すため金融緩和を続ける大きな根拠になっている。
一部の経済指標を見る限りその分析は間違いではない。だが九年以上金融緩和を続けても、消費や投資の回復が賃上げをもたらす景気の好循環は起きなかった。日銀は金融緩和を軸に据えたアベノミクスに固執するあまり誤った政策判断を続けているのではないか。
政府がようやく円安阻止に向け行動を示す中、経済界や労働界にも注文がある。円安で業績を上げた企業は即刻大幅な賃上げに踏み切るべきだ。
連合を軸とした組合側の賃上げ要求も迫力に欠ける。働く仲間のために声を上げてこその組合だと自覚してほしい。