責任感と人間力の備え (2021年10月18日 曇 中日新聞)

2021-10-18 16:06:38 | 桜ヶ丘9条の会

官僚たちの「熱」よ再び 衆院選の公示を前に 

2021年10月18日 中日新聞
 
 権力のためなら国民も欺く−。いわゆる「官邸一強」の極端な政治が続きました。ゆがんだ民主主義の姿勢をここで正せるか。その岐路でもあります。
 衆院選の先に私たちが見据えるのは、一強政治で骨抜きになった官僚機構の再建です。コロナ禍とその後の難局を乗り切るために不可欠な礎となるからです。
 ただ、一強政治が加速したここ何年か、若者の「霞が関離れ」も急加速しました。中央官庁を目指す学生らが減り、若手官僚の退職が増えています。
 先細る官僚機構に再び「国民のために」働く熱気と活力を呼び戻すには何が必要か。二人の財務省職員が残した教示に学びます。
 一人目。一強政治とのえにしをたどれば、この人です。

責任感と人間力の備え

 「私の雇い主は日本国民。国民のために仕事ができる国家公務員に誇りを持っています」
 二〇一八年三月、森友学園問題で公文書改ざんを苦に自死した元近畿財務局職員、赤木俊夫さん=写真(右)、妻提供=の口癖です。
 享年五十四。最後の手記や遺書ににじんだのは、改ざんに関与し公務員として国民の信頼を裏切ったことへの強い呵責(かしゃく)でした。
 赤木さんの妻が改ざん過程の再調査を国に求めています。調査を尽くし責任の全系統を明確にせねば「自殺に追い込まれる職員がまた出るから」と。私憤を超えた訴えが胸を打ちます。
 犠牲者がまた出ぬように、健全な官僚機構に立て直さねばなりません。赤木さんも願った通り、官僚たちが国民と向き合い責任を果たせる組織への再建です。
 赤木さんの公僕たる備えが「責任感」だとすれば、この人は「人間力」でしょうか。
 二人目は元財務事務次官の香川俊介さん=同(左)。一二年の「社会保障と税の一体改革」で三党合意を支えた人です。後年は度重なる闘病の末、次官退任直後の一五年八月、非運の最期でした。
 享年五十八。その秋、お別れの会には千五百人もの弔問者が列をなしました。この広大な人脈を紡ぐ「人間力」の所以(ゆえん)が、有志の追悼文集『正義とユーモア』(非市販)の巻頭に出てきます。長年の親友で文集をまとめた神蔵孝之イマジニア会長の執筆です。
 父親が病に倒れ家計もままならぬ中。香川さんは大学入試の日も早起きし、妹と自分の弁当を作ってから受験に向かったそうです。
 こうして若いころ味わった「人生の辛(つら)さ、厳しさ」が後に秀でた人間力の素地になったと、神蔵氏は見立てます。国民の苦楽を肌で知るからこそ、手だれの政治家をも心底説得できる力です。
 そういえば、追悼文の寄稿者には意外な名前もありました。当時官房長官の菅義偉氏。政権が消費税率引き上げの延期を模索していた一四年秋。菅氏は、延期回避に動く香川さんを官邸に呼び、交わしたやりとりを明かしています。
 「おまえが動くと政局になるから困る。諦めてくれ」と頼んだが、香川さんは「決まるまではやらせてください」と諦めなかった。消費税は結局、衆議院解散の政局となり増税延期で決着しました。

忖度を解き国民本位へ

 あの菅氏が「いつも『捨て身』で向かってくる香川は手ごわかった」と一目置く人間力。共に有力な政治家と官僚の親交が以後も続いていたら、日本の行政の景色も変わっていたでしょうか。
 運命はしかし、二人を分かちました。菅氏はその後、一強政治下で官僚への一方的支配に傾斜。官僚たちは組織を守るための忖度(そんたく)などに走り、国民を守る責任感も人間力もおよそ眼中にない。
 無策の行政はコロナ禍で、国民の命さえ守り切れず、ついには菅政権の終幕を引く運命でした。
 結局、一から出直しです。この危機にあって私たちがいま立ち返る原点は、行政の民主主義です。要となる官僚機構に、働く人々の熱気と、有為の若者を引き込む活力を呼び戻したい。
 けれども、その官僚機構に再建の魂を吹き込むのは、やはり政治家でしかありえません。政治家がまず権力一辺倒の殻を脱ぎ、官僚を忖度などの束縛から解き放つ。官僚と国民本位で肩を組み、この難局を乗り切る気概は、むしろ政治家から示すべきでしょう。
 あす公示です。衆院選ではその気概に富む政治を選び抜かねばなりません。私たちの民主主義を正すのは、主権者の私たちにしか果たせぬ使命だからです。
 

 


ドコモ障害、市民混乱 スマホ万能に落とし穴 (2021年10月17日 晴 中日新聞))

2021-10-17 14:43:06 | 桜ヶ丘9条の会
NTTドコモで発生した大規模な通信障害は市民生活を大きく混乱させた。通信回線とつながるスマートフォンは、連絡や情報収集のツールとなるばかりではなく、店舗での支払いや公共交通機関のチケットなどにも使われ、役割が年々広がっている。社会のデジタル化に欠かせないインフラを担う通信事業者の責任は重大だ。
 「救急車が呼べず焦った」「待ち合わせ相手と落ち合えない」。通信障害が起きた十四日夜、会員制交流サイト(SNS)上には、さまざまなサービスが使えなくなったことへの困惑や不満の声があふれた。
 障害の発生中、ドコモの通信回線を利用するスマホの一部は「圏外」と表示され、友人同士の連絡やインターネット検索を含め、全く通信ができなくなった。トラブルはドコモの契約者ばかりでなく、ドコモの回線を借りて通信サービスを提供している「格安スマホ」の利用者にも広がった。
■死活問題
 タクシー大手の国際自動車(東京)では、クレジットカードなどの決済で使う車載端末が使えなくなり、決済ができなかった場合には乗客に現金払いを求めて対応した。日本郵便では、郵便局窓口のキャッシュレス決済用端末の一部に障害が出たため、現金取引しかできなかった例もあったという。
 「楽天ペイ」などのQRコード決済でも料金を支払うことができなくなった。財布や定期券の機能を集約し、外出にスマホしか持ち歩かない人も増えており、通信が絶たれる事態が頻発すれば、文字通り死活問題にもなりかねない。
■殺到
 ドコモは十四日午後八時ごろに障害がいったん「復旧」したと発表したが、通信や電話を待ちわびていた多くの人が回線に殺到し、再びつながりにくくなる事態に陥った。
 結局、スマホの通信に使われる第四世代(4G)移動通信システムと、高速大容量の第五世代(5G)の復旧は十五日午前五時にずれこみ、「ガラケー」と呼ばれ高齢者が多く使う第三世代(3G)の障害はさらに長引いた。ドコモの田村穂積副社長はオンライン記者会見で「反省点とし、今後の検討課題にしたい」とうなだれた。
 

 


最悪の想定なのに楽天的 コロナ対策骨格 (2021年10月16日 晴 中日新聞))

2021-10-16 11:36:52 | 桜ヶ丘9条の会

最悪を想定なのに楽観的 コロナ対策骨格

2021年10月16日 05時00分 (10月16日 05時01分更新)
 岸田文雄首相が十五日、新型コロナウイルス対策の骨格を打ち出した。最悪の事態を想定し、今夏の流行「第五波」に比べ「感染力が二倍になっても対応可能な対策を策定する」と強調。一方で、ワクチン接種の効果を前提としたシナリオには「甘い見通しでは」との懸念もつきまとう。医療現場や自治体の担当者には困惑が広がる。
 「今後の感染拡大の可能性に備え、対策に万全を期していく」。首相は十五日の感染症対策本部会合で、医療体制の整備を急ぐよう関係閣僚に指示した。
 就任から十日余り。衆院選が事実上始まったタイミングで首相が骨格の公表を急いだ背景には、有権者の不安を払拭(ふっしょく)し支持を得たいとの思惑がある。官邸筋は「『病床を確保します』だけでは国民に分かりづらい。なるべく具体的な数字で示すことで安心感を高めてもらう」と明かす。
 骨格では、入院患者の受け入れ病床を二割増やすほか、補助金をもらいながら患者を受け入れなかった「幽霊病床」を改善し、病床の稼働率を八割以上に引き上げると明記。自宅療養中の死亡が相次いだ反省も踏まえ、保健所と地域の医療機関が連携し、全ての陽性者が判明翌日までに健康観察や診療を受けられるようにするとした。

■からくり

 感染力が第五波の二倍になった場合に、なぜ病床は二割増で足りるのか−。対策の基となる試算には、ある「からくり」がある。
 政府は「六十五歳未満の若年層のワクチン二回目接種率が70%に上がれば、全体の感染者は半減する」と仮定。新たな変異株の出現などで感染力が二倍になったとしても、感染者数は結局、今夏と同水準にとどまると見込んでいる。
 厚生労働省の担当者は「一回目を接種した若年層の割合からみれば、70%は堅い数字」と説明。感染者の五割減も、これまでの研究結果を基に算出したという。

■疑問視

 第五波の感染者は急速に減少したが、ワクチン以外にも複数の要因が指摘されており、政府の仮定を疑問視する専門家もいる。
 重症者治療に当たる近畿大病院(大阪府大阪狭山市)の東田有智病院長は、ワクチンで強化された免疫力は「個人差も大きく時間とともに下がる。それらを加味した分析なのか」と首をかしげる。接種で重症化が抑えられても、ウイルスの変異でワクチンの効果が低下する可能性も。欧米では接種後の「ブレークスルー感染」も報告されており、「これから先は未知の世界。簡単に考えないで」とくぎを刺す。
 政府が目指す行動制限の緩和も不安材料。「国民の気が緩み感染者は間違いなく増える。『二割病床を増やすから大丈夫』と言われても、医療現場は全く油断できない」と断言する。
 関東地方の自治体担当者は「第五波でも手術の延期など一般医療を制限し、なんとか病床を増やした。これ以上の増床は苦しい」と明かす。病床を増やすには、医師や看護師の確保が欠かせず「無理に病床を増やしても『幽霊病床』が増えるだけ」と語った。
 コロナ対策は衆院選の主要争点となる。立憲民主党の森裕子参院幹事長は十三日の参院本会議で、菅義偉政権までの政府が公立、公的病院の再編を進めてきたとして、こう批判した。「コロナ禍で病院のベッドを増やさなければいけないのに、削減するという支離滅裂な政策を進めてきた。こんなばかげたことはもうやめませんか」
 

 


民主主義再生のために 衆院解散、31日総選挙へ (2021年10月15日 晴)

2021-10-15 23:48:14 | 桜ヶ丘9条の会

民主主義再生のために 衆院解散、31日総選挙へ

2021年10月15日 05時00分 (10月15日 05時00分更新)

 衆院が解散された=写真。総選挙は十九日公示、三十一日投開票の日程で行われる。コロナ禍で傷ついた暮らしの立て直しに加え、長期にわたる「安倍・菅」政権で危機的状況に陥った民主主義の再生が厳しく問われる選挙となる。

 衆院選は二〇一七年十月以来、四年ぶり。この間、首相は安倍晋三氏から菅義偉氏、先月の自民党総裁選を経て岸田文雄氏に交代した。問われるべきは岸田政権が打ち出した政策にとどまらず、自民党の政権復帰後、九年近くの「安倍・菅政治」そのものである。
 安倍元首相と、それを支え、後を継いだ菅前首相の政権が進めた政治の特徴は、敵か味方かに分けて、敵は徹底的に退け、味方には便宜を図る「分断政治」である。
 合意形成の努力をせず、反対意見には耳を傾けず、説明をも拒む「独善的な政治」である。

主権者軽視する政治

 政治主導に名を借りて、権力や権限を振りかざす「力の政治」、国会や政府内での議論の積み重ねを大事にせず、憲法や法律を軽んじる政治、国民の代表である国会を大事にしない政治、突き詰めて言えば、主権者を軽んじる「国民軽視の政治」である。
 そうした政治は官僚に政権中枢への忖度(そんたく)を強い、森友・加計両学園や「桜を見る会」を巡る問題、財務官僚による公文書改ざんを引き起こした。歴代内閣が継承する「集団的自衛権の行使」を違憲とする政府解釈を勝手に変え、安全保障関連法の成立を強行した。
 日本学術会議の会員人事では、政権に批判的な学者の任命を拒否して理由を説明していない。
 野党が憲法に基づいて臨時国会の召集を要求しても拒み続けた。
 岸田氏は「政治の根幹である国民の信頼が崩れている。わが国の民主主義が危機に瀕(ひん)している」と訴え、総裁・首相に就いた。「丁寧で寛容な政治を行い、国民の一体感をしっかりと取り戻していきたい」と語るのも、安倍・菅政治が民主主義を傷つけ、その転換が必要だと考えたからだろう。
 その問題意識は私たちも共有する。民主主義の危機を訴えた岸田氏の首相就任は、分断政治の転換を図る契機になるはずだった。
 しかし、現状では落胆を禁じ得ない。岸田氏は首相就任後「民主主義の危機」に言及せず、民主主義を危機に陥らせたはずの決定は放置し、再調査にも消極的だからだ。これでは安倍・菅「亜流」とみられても仕方がない。
 岸田氏は国民との対話を積み重ねると言うが、民主主義を大きく傷つけた根源的な問題に迫り、改善策を講じなければ、危機を克服できないのではないか。
 選挙戦では各党、候補者が、民主主義をどう立て直すのかを競い合い、有権者に判断を仰ぐしか、再生の道はあるまい。
 経済政策も同様である。安倍・菅政権は大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の三つの矢からなる「アベノミクス」を進めた。
 しかし、2%の物価目標を達成できず、経済格差を拡大させ、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う経済情勢の悪化にも、機動的に対応できなかった。

「分配」も重要争点に

 岸田氏が掲げた「新しい資本主義」は重要な問題提起と受け止めたい。一部の大企業や富裕層だけが潤い、国民生活を疲弊させた新自由主義的な経済政策の転換に異論はない。ただ、問われるべきはどんな経済社会をつくるのか、それをどう実現するのかである。
 選挙戦では経済立て直しはもちろん、格差是正のための「分配」政策を重要争点に位置付けたい。暮らしに困窮しないことは、基本的人権を保障することであり、民主主義の基盤だからだ。
 立憲民主党は「分配なくして成長なし」と分配を優先し、自民党は「成長なくして分配なし」と成長の成果を分配に充てるとする。同じような主張に見えても、優先順位には明確な違いがある。
 各党や候補者が練り上げ、公表した公約や主張は膨大かつ多岐にわたり、違いを見極めるのは忍耐を要する作業ではある。
 しかし、政権の枠組みを決めるのは政界の実力者や一部の政党支持者ではなく、私たち自身にほかならない。そして私たち新聞は、有権者の選択に資する情報提供に努めたいと思う。独善的な政権の再登場を許さず、私たちの民主主義を再生するために。
 

 


民主主義再生のために 衆院解散、31日総選挙へ (2021年10月15日 中日新聞)

2021-10-15 23:34:58 | 桜ヶ丘9条の会

民主主義再生のために 衆院解散、31日総選挙へ

2021年10月15日 

 衆院が解散された=写真。総選挙は十九日公示、三十一日投開票の日程で行われる。コロナ禍で傷ついた暮らしの立て直しに加え、長期にわたる「安倍・菅」政権で危機的状況に陥った民主主義の再生が厳しく問われる選挙となる。

 衆院選は二〇一七年十月以来、四年ぶり。この間、首相は安倍晋三氏から菅義偉氏、先月の自民党総裁選を経て岸田文雄氏に交代した。問われるべきは岸田政権が打ち出した政策にとどまらず、自民党の政権復帰後、九年近くの「安倍・菅政治」そのものである。
 安倍元首相と、それを支え、後を継いだ菅前首相の政権が進めた政治の特徴は、敵か味方かに分けて、敵は徹底的に退け、味方には便宜を図る「分断政治」である。
 合意形成の努力をせず、反対意見には耳を傾けず、説明をも拒む「独善的な政治」である。

主権者軽視する政治

 政治主導に名を借りて、権力や権限を振りかざす「力の政治」、国会や政府内での議論の積み重ねを大事にせず、憲法や法律を軽んじる政治、国民の代表である国会を大事にしない政治、突き詰めて言えば、主権者を軽んじる「国民軽視の政治」である。
 そうした政治は官僚に政権中枢への忖度(そんたく)を強い、森友・加計両学園や「桜を見る会」を巡る問題、財務官僚による公文書改ざんを引き起こした。歴代内閣が継承する「集団的自衛権の行使」を違憲とする政府解釈を勝手に変え、安全保障関連法の成立を強行した。
 日本学術会議の会員人事では、政権に批判的な学者の任命を拒否して理由を説明していない。
 野党が憲法に基づいて臨時国会の召集を要求しても拒み続けた。
 岸田氏は「政治の根幹である国民の信頼が崩れている。わが国の民主主義が危機に瀕(ひん)している」と訴え、総裁・首相に就いた。「丁寧で寛容な政治を行い、国民の一体感をしっかりと取り戻していきたい」と語るのも、安倍・菅政治が民主主義を傷つけ、その転換が必要だと考えたからだろう。
 その問題意識は私たちも共有する。民主主義の危機を訴えた岸田氏の首相就任は、分断政治の転換を図る契機になるはずだった。
 しかし、現状では落胆を禁じ得ない。岸田氏は首相就任後「民主主義の危機」に言及せず、民主主義を危機に陥らせたはずの決定は放置し、再調査にも消極的だからだ。これでは安倍・菅「亜流」とみられても仕方がない。
 岸田氏は国民との対話を積み重ねると言うが、民主主義を大きく傷つけた根源的な問題に迫り、改善策を講じなければ、危機を克服できないのではないか。
 選挙戦では各党、候補者が、民主主義をどう立て直すのかを競い合い、有権者に判断を仰ぐしか、再生の道はあるまい。
 経済政策も同様である。安倍・菅政権は大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の三つの矢からなる「アベノミクス」を進めた。
 しかし、2%の物価目標を達成できず、経済格差を拡大させ、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う経済情勢の悪化にも、機動的に対応できなかった。

「分配」も重要争点に

 岸田氏が掲げた「新しい資本主義」は重要な問題提起と受け止めたい。一部の大企業や富裕層だけが潤い、国民生活を疲弊させた新自由主義的な経済政策の転換に異論はない。ただ、問われるべきはどんな経済社会をつくるのか、それをどう実現するのかである。
 選挙戦では経済立て直しはもちろん、格差是正のための「分配」政策を重要争点に位置付けたい。暮らしに困窮しないことは、基本的人権を保障することであり、民主主義の基盤だからだ。
 立憲民主党は「分配なくして成長なし」と分配を優先し、自民党は「成長なくして分配なし」と成長の成果を分配に充てるとする。同じような主張に見えても、優先順位には明確な違いがある。
 各党や候補者が練り上げ、公表した公約や主張は膨大かつ多岐にわたり、違いを見極めるのは忍耐を要する作業ではある。
 しかし、政権の枠組みを決めるのは政界の実力者や一部の政党支持者ではなく、私たち自身にほかならない。そして私たち新聞は、有権者の選択に資する情報提供に努めたいと思う。独善的な政権の再登場を許さず、私たちの民主主義を再生するために。