「パナマ文書」規制を逃れや闇世界 蓄財の実態 解明さらに(しんぶん赤旗2016年5月11日)

2016-05-12 08:52:41 | 桜ヶ丘9条の会
「パナマ文書」法人情報公開

規制を逃れ 闇世界 まだ氷山の一角

蓄財の実態 解明さらに



 「パナマ文書」を分析してきた国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は21万社を超えるペーパーカンパニーに関する情報を10日に公開しました。富裕層や犯罪集団、政治家などによるタックスヘイブン(租税回避地)での蓄財の実態のさらなる解明が求められます。 (金子豊弘、佐久間亮、杉本恒如、山田俊英)


 「パナマ文書」に名前が挙がっている伊藤忠商事と丸紅の広報は本紙の問い合わせに対し、英領バージン諸島に台湾企業が設立した「レナウンド・インターナショナル」という会社に出資していると認めました。

 現在、伊藤忠は約6%、丸紅は約8%出資。「ビジネスのためで、租税回避が目的ではない」(伊藤忠)、「目的はお金もうけ。法制に準拠して納税している」(丸紅)と説明しています。

 台湾企業が設立した会社について丸紅は次のように説明します。

 「銅製品の中国事業と聞いている。バージン諸島に会社をつくった理由を台湾企業に聞くことはできないので推測だが、中国で製造するためにバージン諸島に投資子会社をつくったのではないか。中国では会社をたたむのが難しい、労働者に配慮しなければならないなど制約が厳しいので、そういうやり方をすることはよくある」

 事業の実体は中国にあるのに、地域経済や労働者を守る中国の規制が及ばないよう、バージン諸島につくったペーパーカンパニーから中国に投資する形をとったという推測です。事実であれば、規制のゆるいタックスヘイブンを利用した典型的な規制逃れです。税逃れも台湾企業の目的に含まれる可能性は否定できません。

 UCCホールディングスは「事実関係へのコメントは差し控える。社長も会社も合法的に納税している」と回答しました。

 パナマ文書の解明作業に参加している共同通信は、同社の上島豪太(ごうた)社長が2010年時点でバージン諸島にある2法人の唯一の株主で役員とする書類やメールがあったと報じています。

 ソフトバンクグループは「中国企業がバージン諸島につくった会社にグループ企業が出資し、株の35%を持っていたが、撤退した。租税回避のためではない」。警備大手セコムは「日本の税務当局に必要な情報を開示し、合法的に処理されていると聞いている」と答えました。

 共同通信によれば、セコムの飯田亮最高顧問と元最高顧問の故戸田寿一氏につながる複数の法人が1990年代にバージン諸島や英王室領ガーンジー島につくられ、当時の取引価格で計700億円を超すセコム株が管理されていました。

 楽天は、三木谷浩史(ひろし)社長が出資者に名を連ねる企業が同文書に登場したことについて「楽天の起業前に外国人が設立した英領バージン諸島の企業への投資を持ちかけられ、(個人として)80万円程度を投資した」と説明。「脱税などの意図はまったくない」としています。

「合法的」そこが問題 貧困と格差増幅装置

 世界の人口の1%にすぎない富裕層が世界の資産の50%を保有し、世界の富の偏在は極限状態です。各国の課税を逃れ、規制を逃れるタックスヘイブンの闇の世界こそ、格差と貧困の増幅装置です。

 「税逃れ」について世界の大富豪、多国籍企業は「合法的な手段を使っている。犯罪行為ではない」と合理化します。しかし、「合法的」だからこそ大問題です。

 オバマ米大統領も「多くが合法的だ。しかし、それがまさに問題」と強調しています。普通の人々が従わなければならない法的責任を富裕層は、法律家や会計士を利用することで逃れているといいます。

 大手金融機関は、富裕層がタックスヘイブンを利用する推進役を果たしています。

 本紙の調べでは、日本のメガバンクも、みずほフィナンシャルグループ(FG)が45、三井住友FGが27、三菱UFJFGは12の子会社をタックスヘイブンに保有しています。(2013年3月期)

国際援助団体 取り締まりルール要求

 【ワシントン=島田峰隆】多国籍企業や一握りの富裕層によるタックスヘイブン(租税回避地)の利用実態を暴いた「パナマ文書」に含まれる約21万社のペーパー会社が公表されたことについて、国際援助団体オックスファムは9日、課税逃れを取り締まる国際的なルールづくりを各国政府に改めて求めました。

 同団体で格差解消キャンペーンの責任者を務めるマックス・ローソン氏は同日の発表文で「オフショア(非居住者向け)金融取引の暗黒の世界を各国国民が精査できるようにしたことは極めて重要だ」と歓迎しました。

 同氏は、「パナマ文書」発表を受けて各国政府が対応を始めているものの、「まだ不十分で、課税逃れを止められない」とし、今回発表された会社も「氷山の一角だ」と指摘。金融取引の機密扱いが課税逃れに悪用されているとして、今月12日にキャメロン英首相が主宰してロンドンで開く「汚職防止サミット」でこの問題に取り組むよう訴えました。

 オックスファムは、各国が協力して「新しい国際的なルール」をつくることが必要だと強調。▽すべての企業の実質的な所有者や経営者を公開、登録する制度をつくる▽すべての企業に対し、活動しているすべての国ごとに報告を公表させる▽すべての国が税金の情報を共有できる多国間システムをつくる―ことを提案しています。

 オックスファムの試算では、課税逃れによって貧困国は毎年1700億ドル(約18兆円)の税収を失っています。この金額があれば約1億5000万人の子どもの命を救える医療制度を整備できると指摘しています。
</fo</font>nt>

(6)第12条人権相互の衝突調整、(7)第13条個人尊重人権の土台(2016年5月7日、9日)

2016-05-09 07:44:14 | 桜ヶ丘9条の会
<いま読む日本国憲法>(6) 第12条 人権相互の衝突調整 

2016/5/7 朝刊

 今の憲法は、国民に対して自由と権利を広く認めた憲法です。しかし、自由と権利は、しばしば他者の自由と権利とぶつかることがあります。それを調整するのが、この条文などで出てくる「公共の福祉」という考え方です。

 公共の福祉とは、個人を超えた社会全体の幸福のことを指しますが、範囲ははっきりしていません。自民党の改憲草案は、公共の福祉の意味が曖昧なので解消を図るとして、「公益及び公の秩序」に置き換えました。この表現は草案のほかの条文にも出てきます。

 草案のQ&Aで同党は、公の秩序とは「社会秩序」「平穏な社会生活」のことと解説。「個人が人権を主張する場合、人々の社会生活に迷惑を掛けてはならない」と説明しています。

 ポイントは、同党が「基本的人権の制約は、人権相互の衝突の場合に限られない」とも指摘している点。現行の一二条を巡っては、人権と人権が衝突する場合に限って人権の制約を想定しているという解釈がありますが、自民党の草案は、公益や公序に反しない範囲での人権しか認めていないようにも読めます。

 同党は「反国家的な行動を取り締まることを意図したものではない」と強調していますが、社会の秩序を守るという名目で国家が国民の自由や権利を圧迫しないか、懸念が残ります。

 草案は「自由及び権利には責任及び義務が伴う」とも付け加えました。権利より責務を重んじる同党内の視点が表れています。

 あまり注目されませんが、憲法一二条は、勝ち取った自由と権利を守るため国民に「不断の努力」も求めています。平和憲法を守ろうと訴える学者や弁護士たちは、この条文を今こそ思い起こそうと呼び掛けています。

<いま読む日本国憲法>(7) 第13条 個人尊重人権の土台 

2016/5/9 朝刊

 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 国家権力から個人の権利を守るという理念に立った日本国憲法は、思想及び良心の自由、学問の自由、奴隷的拘束からの自由など、さまざまな人権を定めています。その大きなよりどころと言えるのが一三条。憲法の根幹であり、最も大切な条文だという人は少なくありません。

 「すべて国民は、個人として尊重される」という文章は、考え方も生き方も違う人たちが互いに個性を認め合い、一人一人がかけがえのない存在として尊重される社会を目指そう、という宣言にほかなりません。その土台となる包括的な人権規定として、生命、自由と幸福を追求する権利を挙げ「最大の尊重」を求めたのがこの条文です。

 自民党の改憲草案では、「個人」が「人」に変わっています。大差がないように見えますが、この変更には、現行憲法は個人主義を助長しているからよくないという視点があります。多様性を大切にする個人主義より、国家や国益を重視する考え方と言えます。

 また、草案は一二条と同じく「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」に変えました。社会の秩序を守るという名目で、国家が人権を制限できる余地を残したように読めます。「最大の尊重」を「最大限に尊重」に変えたのも、弱い表現に後退したように見えます。

 一三条は「新しい人権」と呼ばれるプライバシーの権利や環境権などを憲法に加える「加憲」論を巡っても、よく引き合いに出されます。

 加憲を主張する人たちは「新しい人権は、一三条の幸福追求権にも含まれない」として新たに規定するよう求めていますが、加憲に慎重な人たちは「プライバシー権や環境権は、幸福追求権を根拠に認めることができる」と訴えています。


<いま読む日本国憲法>(5) 第11条 永久の人権を宣言(2016年5月5日中日新聞)

2016-05-05 08:31:33 | 桜ヶ丘9条の会
<いま読む日本国憲法>(5) 第11条 永久の人権を宣言 

2016/5/5中日新聞

 一〇条から四〇条までの第三章は「国民の権利及び義務」です。この中で権利はたくさん出てきますが、国民の義務とされているのは、子女に教育を受けさせる義務(二六条)、勤労の義務(二七条)、納税の義務(三〇条)の三つです。

 ほかに憲法で義務という言葉が出てくるのは、公務員らの憲法尊重擁護義務(九九条)だけ。国家権力から国民を守るため、権利を手厚く認めようという憲法の理念が表れています。

 さて、一一条は国民主権、平和主義とともに憲法の三原則とされる基本的人権の尊重を示す条文です。

 「享有」は「生まれながらに持っている」という意味。つまり、基本的人権は国家や法律に先立って個人が本来的に持つ「自然権」であり、国家権力によって侵されることはないと宣言しているのです。

 ちなみに「永久」という表現は、ほかには戦争放棄を定めた九条と、基本的人権の尊重を念押しした九七条で出てくるだけです。基本的人権は、それほど重視されているのです。

 自民党改憲草案は基本的人権について、今の憲法と同じように「侵すことのできない永久の権利」と定めています。「現在及び将来の国民に与へられる」という表現は削りました。

 同党は草案のQ&Aで「人権規定も、国の歴史、文化、伝統を踏まえたものであることも必要」などと説明しています。

舛添東京都知事 血税への乏しい感性(2016年5月4日中日新聞)

2016-05-04 13:28:17 | 桜ヶ丘9条の会
舛添東京都知事 血税への乏しい感性 

2016/5/4 中日新聞
 海外出張や公用車に、まるで湯水のごとく血税を費やすような振る舞いは、納税者の目にどう映るだろうか。舛添要一東京都知事のリーダーとしての資質も、都政への心構えも疑われてならない。

 一昨年秋、ベルリンとロンドンを訪れ、六千九百七十六万円。昨年秋、パリとロンドンを巡り、五千四十二万円。職員十九人を従えて、知事はファーストクラスに乗り、高級ホテルのスイートルームで過ごした。

 共産党都議団によれば、舛添氏の海外出張費は、知事に就任した二〇一四年二月からの八回で二億一千三百万円。航空運賃とホテル代で46%を占める“大名旅行”だ。

 石原慎太郎元知事の時代に無駄遣いと批判され、都は経費削減を約束した。にもかかわらず、舛添氏の一回あたりの経費は平均二千六百六十万円余り。石原氏の平均より一千万円も膨らんでいる。

 四月にも一週間、米国まで九回目の海外出張をした。知事はやはりファーストクラスを使い、航空費は二百二十五万円。スイートルームに滞在した宿泊費は七十四万円。本年度の海外出張のための予算は三億三千五百万円という。

 都条例は訪問都市に応じて、職員の一泊の宿泊費上限を定めている。知事は最高四万二百円。だが、要人との急な面会に備えるとか、保安対策を強めるといった理由で、簡単に増額できるらしい。形骸化しているというほかない。

 高額批判を浴び、舛添氏は経費の検証チームを設けた。それでも「少し経費をけちったためにまともな仕事ができなかったら、何のために行ったか分からない」と言う。節約志向は乏しいようだ。

 最近、世界の権力者や富豪、大企業がタックスヘイブン(租税回避地)を利用して、蓄財している実態が「パナマ文書」で暴露された。違法行為でなくとも、市民は怒り心頭だ。それがなぜなのか舛添氏には理解不能なのだろう。

 加えて、ほぼ毎週末、温泉地として知られる神奈川県湯河原町の別荘まで、公用車で送迎させてもいた。公私混同ぶりが目に余る。

 静養の場は都心に用意するべきだろう。税金の支出を抑えつつ、非常事態にも備える賢明なトップであってほしい。

 “世界一貧しい大統領”と呼ばれたウルグアイのホセ・ムヒカ氏の来日は、さわやかな印象を残した。報酬のほとんどを社会福祉に寄付し、愛車を自ら運転するリーダーだった。失礼ながら人間の厚みは雲泥の差に見えてしまう。

<いま読む日本国憲法>(特別編)自由、人権・・・一生支える(中日新聞2016年5月4日)

2016-05-04 13:17:59 | 桜ヶ丘9条の会
<いま読む日本国憲法>(特別編) 自由、人権…一生支える 

2016/5/4 朝刊

 水や空気と同じく普段あまり意識されない憲法が、私たちの平和で自由な生活を支えている。人の一生をたどり、憲法と生活の関わりを考えた。

 新しい命が誕生。出生届を出すと、親の社会的立場や財産で差別されることなく健康診断や予防接種の案内が送られてくる。人は生まれながらにして基本的人権を持ち(憲法一一条)、個人として尊重され、幸福を追求する権利が認められている(一三条)のだ。

 六歳になると、みんなが小学一年生に。子どもには教育を受ける権利、保護者には受けさせる義務があり、国も無償で義務教育を提供する(二六条)。

 高校や大学に進み、好きな科目や専攻を選べるのは学問の自由(二三条)が保障されているから。これがないと、国や教師が決めた分野を学ぶことになりかねない。教師に違う意見をぶつけられるのも、思想及び良心の自由(一九条)があるためだ。サークル活動で自由な創作活動や発表ができるのは、表現の自由(二一条)があるおかげだ。

 社会人になり、才能を生かした仕事に就いたり、住みたい街に引っ越したりできるのは居住・移転及び職業選択の自由(二二条)があるから。成年者で意中の人が見つかれば親の同意なしでも二人の合意だけで結婚できる(二四条)。

 妊娠、出産をした場合、産休・育休を取得できるのは勤労条件の基準(二七条)について定めがあるから。この条文は働き続ける限り、過酷な労働からの防波堤の役割を果たす。

 人生に思わぬ壁が立ちはだかった時、憲法が救いの手を差し伸べることも。

 実例がある。暴力を振るわれた夫と離婚し、新たな相手と出会ったものの、女性のみ再婚を六カ月間禁じた民法の規定のために苦しんだとして岡山県の女性が訴訟を起こした。最高裁は二〇一五年十二月、百日を超える部分の禁止期間は憲法一四条(法の下の平等)、二四条(両性の平等)違反との判決を下した。政府は再婚禁止期間を百日間とする民法改正案を今国会に提出した。

 一三年九月には、結婚していない男女間の子(婚外子)の遺産相続分を法律上の夫婦の子(嫡出子)の半分とする民法の規定は憲法一四条違反とした和歌山県の婚外子女性の訴えを最高裁が認めた。同年、改正民法が成立。これらを含め最高裁は戦後十件の法律の規定を違憲としている。

 憲法は災害や病気、加齢で働けなくなり困窮した場合でも、文化的な最低限度の生活を営めるよう、生存権と国の社会的使命(二五条)を明記している。生活保護の受給も施しではなく、権利なのだ。

(安藤美由紀)

◆権力から暮らし守る「盾」 種田弁護士に聞く

 憲法と暮らしの関わりについて詳述した著書がある種田和敏弁護士に憲法の役割を聞いた。

      ◇

 私たちが今のような生活を送れるのも、憲法があるから。つまり、権力という王様を縛るための法が憲法だ。現行憲法は権力から私たちを守る『盾』。政治家に憲法を守らせることが、私たちの暮らしにとっても大切だ。

 生活に直接関わる条文は三章の「国民の権利及び義務」に多いが、憲法は国会、内閣、司法の役割も詳しく書いている。(権力を分散させる)三権分立によって、私たちの暮らしを守るためだ。

 学校の授業では、憲法について基本的人権の尊重、国民主権、平和主義を習うが、こうした『権力制限を旨とした法』という点はあまり教えられない。

 自民党の改憲草案は、権力者の道具になって私たちを縛り付けるものになっている。例えば現行憲法は憲法を守る主体を天皇、国会議員、公務員としているが、草案は天皇が抜けて国民が入っている。国民はなめられている。

 憲法が機能しなくなってから大切さに気付いても遅い。主権者としての意識をしっかり持ち、憲法を学ぶとともに、憲法を台無しにする動きに対して発言し、行動すべきだ。

(聞き手・安藤美由紀)