毒ある植物、食中毒続発 五感を働かせ防いで (2022年4月22日 中日新聞)

2022-04-22 16:58:47 | 定年後の暮らし春秋

毒ある植物、食中毒続発 五感を働かせ防いで

2022年4月22日 中日新聞

 春の行楽シーズンがやってきた。すがすがしい陽気に誘われ、山や野原に出かける人も多いだろう。そこで気をつけたいのが、食用ではない有害植物やキノコを採って誤食する食中毒だ。最近も宮崎県でユリ科の球根を食べた六十代の男性が死亡し、京都市の園児がスイセンを食べ体調不良になった。山菜狩りを楽しみつつ、食中毒を防ぐにはどんな注意が必要なのか。 (古川雅和)

 「すりおろせば『違うな』と気付くはずだが。食べられると思い込んでしまったのか」。宮崎県衛生管理課の担当者は、球根を食べた男性が亡くなったことに、そう困惑する。

 男性は宮崎県延岡市在住で、六日に家庭菜園で採った観賞用のユリ科の花「グロリオサ」の球根を誤って食べたとみられる。見た目はヤマイモに似ているが、ひげ根はなく、すりおろしても粘り気が出ない。

 男性は知人に「すりおろして食べたら、嘔吐(おうと)と下痢になった」と電話で相談していた。男性の体内から見つかったのが、化学物質コルヒチン。大量に摂取すると強い毒性を示し、臓器の機能不全などを起こすこともある。

 グロリオサは高知市でも二〇〇三年と〇六年に食中毒が起きている。市内では観賞用の栽培が盛んになり、自生も増えていた。

 京都市の子育て支援施設では七日、ニラと間違えてスイセンを食べた七十七人のうち、四~六歳の十二人が嘔吐や発熱の症状を訴えた。スイセンは職員が知人からニラだと譲り受けて施設内で栽培していた。

 職員が自宅で食べていた時は体調に問題が出なかったため、給食に出したという。スイセンには有毒成分のヒガンバナアルカロイドが含まれ、加熱処理をしても消えないともされる。

 昨年は、大分県佐伯市の女性が庭に生えていたクワズイモを、サラダや煮物にして茎を食べるサトイモ科のハスイモと間違えて食べ、食中毒に。クワズイモには針状の結晶が含まれ、中毒症状を引き起こす。

 厚生労働省によると、昨年一年間に起きた有毒植物による食中毒は十五件。二十人が体調不良になり、このうち北海道小樽市の男性が死亡した。男性はギョウジャニンニクと間違ってユリ科のイヌサフランを食べ、コルヒチンによる中毒を起こした。キノコは十三件で、四十三人が食中毒を起こしている。

 食べると危険な植物は他にもある。ギョウジャニンニクなどに間違えやすいバイケイソウ、葉がモロヘイヤやアシタバ、根がゴボウに似ているチョウセンアサガオなどだ。

 山菜狩りで多くの人が訪れる長野県はホームページ上で、よく分からない植物は「採らない、食べない、売らない、人にあげない」と注意点を挙げる。加えて、食用の山菜の特徴を覚えることや、スイセンなど身近な植物をむやみに食べないよう呼び掛けている。

 東京農業大の土橋豊教授(園芸学)は「食べるという行為は、実は異物を体内に入れるという危険なことだ」と、安易に口にすることに注意を促す。その見極めも、におい(嗅覚)、苦味(味覚)やすりおろした後の粘り気の有無(視覚)など「五感を働かせることが重要だ」と訴えた。

 土橋さんは、植物には動物に有毒である成分を蓄積している可能性があることを強調する。「植物は人のために生きているのではなく、食べられないようにするために人に有毒であるものを蓄積していることを忘れてはいけない」