国内処分行き詰まり 原発放射性廃棄物、輸出へ道 (2022年4月17日 中日新聞)

2022-04-18 10:00:33 | 桜ヶ丘9条の会

国内処分行き詰まり 原発放射性廃棄物、輸出へ道

2022年4月17日 
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 日本では二〇二〇年代半ばから原発の廃炉作業が本格化し、放射性廃棄物が増える。だが地中に埋める処分場所選定など課題は多い。国が輸出規制を見直し、放射性廃棄物となる大型機器の輸出に道を開くのは、国内での処分が難しい状況を受けた措置だ。だが「他国への押し付け」「国内の処理技術を向上させて利用すべきだ」など、安易な解決法だとの批判が上がる。

▽例外扱い

 「有用資源として安全に再利用される要件を満たす場合にのみ、例外的に輸出を可能とする」。梶山弘志前経済産業相は昨年八月の記者会見で、放射性廃棄物の輸出を禁止している外為法の通達の運用を見直す方向性を表明した。その後改定されたエネルギー基本計画にも盛り込まれた。
 国内には大型機器を処理する専用施設がないため、原子力業界は海外処理できるように求めていた。経産省関係者は「安全で使えるものをリサイクルするのは当然だ」と強調するが、エネルギー基本計画のパブリックコメント(意見公募)では、反対意見が大多数を占めた。

▽敷地圧迫

 国内では二十四基の商業原発の廃炉が決まった。放射性廃棄物は、放射能レベルに応じ、地中に埋める処分が想定されているが、処分場所はほとんど決まっていない。そうした中で特に大型機器の扱いは大きな課題となっている。
 対象機器の一つ、蒸気発生器は長さ二十メートル、重さ三百トンの円筒形の金属。他の廃棄物と比べて大きく、切り刻んでドラム缶に入れ、埋めるのは難しい。
 蒸気発生器は、中を通る多数の細い伝熱管が損傷し、機器ごと取り換える例が相次いだ。関西電力は敷地内に二十一台保管しており、「将来的に敷地が圧迫され廃炉作業に支障が出かねない」(関電関係者)と強調する。
 「国内での処分は、事実上不可能。規制見直しは、行き詰まる廃棄物問題にとって光明だ」。関係者は海外処理に期待を込める。

▽なし崩し

 米国では原発の廃棄物処理は「廃炉ビジネス」となっている。蒸気発生器などは除染後に溶かし、放射線を遮蔽(しゃへい)する金属に加工、原子力施設で使われているという。
 日本側が輸出先として水面下で協議を進めている企業の一つが、廃炉専業大手「エナジーソリューションズ」(ユタ州)だ。米国内外の廃炉作業で出た金属など六万トン以上の処理実績がある。取材に、経産省が輸出対象と想定する三種類の機器以外に関しても「東京電力福島第一原発の金属などの廃棄物も処理は可能」と前のめりな姿勢を見せる。
 国の原子力委員会で委員長代理を務めた鈴木達治郎長崎大教授(原子力政策)は「海外処理委託は、国が廃棄物についてまともな議論をしてこなかった結果だ。対象はなし崩し的に拡大し、第一原発事故の廃棄物も輸出しかねない。自国処理の原則を踏まえればあまりにも無責任だ」と強調した。