コロナと暮らし 公的支援足りているか (2021年1月13日 中日新聞)

2021-01-13 13:27:51 | 桜ヶ丘9条の会

コロナと暮らし 公的支援足りているか

2021年1月13日 中日新聞
 緊急事態宣言に伴って暮らしを支える施策があらためて必要になっている。倒産や解雇は増え続け、多くの人々が生活苦に直面している。国は予算をフル活用して生活支援に全力を挙げるべきだ。
 東京証券取引所の株価はバブル崩壊後の最高値を更新し続けている。昨年十一月の時点では完全失業率や有効求人倍率も改善している。しかし、これらの経済指標が生活実態を正確に反映しているとは言い難い。
 株価上昇は各国で金融緩和が続く中、行き場を失ったマネーが流れ込んでいる可能性が極めて高い。
 有効求人倍率の改善も新型コロナウイルスの感染拡大で離職者が相次ぐ医療や介護現場での求人が激増していることが主な要因だ。健全な雇用環境が戻ったとは、とてもいえない。
 緊急事態宣言により最も打撃を受けるのは私たちの暮らしだ。
 厚生労働省の調査では昨年、コロナ禍に関連して解雇・雇い止めに遭った人は約八万人に上った。一部企業の希望退職者が含まれていないとの指摘もあり、実態は数字以上に深刻な可能性が高い。
 失職で収入が途絶えた世帯の苦境は想像に難くない。将来の道を閉ざされる若者も増えるだろう。
 国の雇用対策の軸は、解雇を防ぐために事業主に支払う雇用調整助成金である。これを手厚くした特例措置が二月末で切れるが、確実に延長してほしい。
 中小企業などを支援する持続化給付金や家賃支援給付金も今月十五日が申請の締め切りとなる。国は新たな支援策を構築する方針だが、救済内容をより充実させた上で、迅速に実施すべきだ。
 国は昨年末、財投債と呼ばれる国債などでまかなう財政投融資を含め、約四十兆円を支出する追加経済対策を決めた。ただ、この中にはデジタル化推進策や災害対応を念頭に置いた国土強靱(きょうじん)化のための予算も盛り込まれている。
 追加対策の中身を吟味し直し、緊急性の低い予算は生活支援策に回すなど柔軟に対応すべきだ。
 今回、営業時間短縮に応じた飲食店への協力金の上限が四万円から六万円に増額されたが、一部の飲食店からは「家賃や給料を考えると焼け石に水」との声も聞こえる。政府の対応には「的外れ」「後手」との批判も強い。
 菅義偉首相には実効性ある支援策の迅速な実現を強く望みたい。そのためにも首相は先頭に立ち、国民の声に謙虚に耳を傾け、かつ誠実に語りかけることが必要だ。