コロナ疎開、警戒感 緊急事態宣言「名古屋飛ばし」異議も
2020/4/8 中日新聞
安倍晋三首相が首都圏、大阪圏を中心に七日に発令した緊急事態宣言。「コロナ疎開」「東京脱出」がインターネット上で話題となる中、両経済圏に挟まれた中部地方の首長たちは神経をとがらせている。名古屋市の河村たかし市長は同日、多くの人が流入する恐れがあるとして、愛知県の「対象地域入り」を国に求める方針を明らかにした。
「名古屋に東京や大阪から人が流入してくるという話がある。名古屋は真ん中で危険なので、政府にもお願いしたい」
河村市長は緊急事態宣言を受け、市を含めた愛知県全体を対象地域に加えるよう政府に要請する考えを明らかにした。
指定は都道府県単位で実施され、要請は県と歩調を合わせる必要がある。愛知県の大村秀章知事は「日々の状況変化を注視し、総合的に勘案して対応していく」と述べるにとどめた。
とはいえ、東京や大阪で大学が開かれず、帰省や旅行を考える学生などが多いのも事実。大村知事と岐阜県の古田肇知事、三重県の鈴木英敬知事は、緊急の共同アピールを発表した。宣言の対象となっている七都府県に住んでいる家族や友人らに、東海三県への不要不急の帰省や来訪を控える働き掛けを求める内容だ。
別荘地の軽井沢を抱え、首都圏との人の往来が多い長野県では、阿部守一知事が「宣言の対象地域の皆さまは、長野県との往来を控えてほしい」と強調。
北陸新幹線で首都圏とつながる石川県の谷本正憲知事は先月、外出自粛を求められた都民に「無症状の方はお越しいただければ」と発言し、物議を醸した。今回の宣言発令を受け、「感染者数が拡大している地域への不要不急の出張などの自粛についても改めてお願いしたい」との談話発表にとどめ、「コロナ疎開」に関する言及はなかった。
安倍首相は七日の記者会見で、「地方に移動するなどの動きは厳に控えていただきたい」と呼び掛けた。
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医療体制が都市部ほど充実していない離島は、より深刻だ。「住民と観光客の健康・生命を十分に保証できない」。沖縄県石垣市の中山義隆市長は記者会見で、帰省も含め来島の全面自粛を訴えた。市によると、二月に空路で石垣島を訪れた人は前年同月比で約千五百人増えた。「南の島は安全」といった根拠のない情報がネット上で拡散し、卒業旅行を海外から振り替えた学生らが押し寄せた。
◆感染倍増緩やか、愛知除外 担当相が理由説明
西村康稔経済再生担当相は七日開かれた参院議院運営委員会で、緊急事態宣言の対象に愛知県が含まれていない理由について、感染者が倍増するスピードが緩やかで、感染経路が分からない人が比較的少ないからと説明した。
国民民主党の大塚耕平氏(愛知選挙区)の質問に答えた。西村氏は、累積感染者数が二倍になるのにかかった期間が「東京は五日、大阪は六日ぐらい」と例示。その上で愛知は「二十三日とか、二十七日とか、非常にゆったりしている」と指摘した。
感染経路がはっきりしない人の割合も、大阪で約半数なのに対し、愛知は二割程度と低いとし「今回は指定しなくてもいいという判断だ」と述べた。
愛知県が対象地域から外れたことに、会員制交流サイト(SNS)などで、芸能人のコンサートなどが東京、大阪でしか開かれない「名古屋飛ばし」に例えられ話題となっている。
◆帰省や旅行控える時
<愛知県立大看護学部の清水宣明教授(感染制御学)の話> 新型コロナウイルスは、症状が出ていなくても他人にうつす可能性がある。緊急事態宣言が出された意味を考えてほしい。今は帰省や旅行は控える時だ。対象外の地域に移動して感染が確認された場合、地元には帰れず、その地域で入院することになる。ただ、「どうしても」という場合は、自家用車などで移動し、道中の立ち寄りを控える。他人にうつさないためのマスク着用、自分がうつらないための換気を徹底してほしい。
東海圏は対象地域に含まれなかったが、名古屋市の人口における感染者割合は東京都23区と同程度。安心はまったくできない。