安保関連法案を廃案にし、安心・安全に生きる世界に向けて (2015年6月22日)

2015-06-23 14:56:01 | 桜ヶ丘9条の会
2015年6月22日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 村薫
 私たちは、集団的自衛権の行使を認めた2014年7月1日の閣議決定を取り消し、無理な審議を強行している安保関連法案を廃案にし、軍事でなく外交を優先する政策に変換し、敵を作らずに平和に貢献する国づくりを目指すことを、日本政府と国会に求める。

 安倍政権は安保関連法案が必要な理由として「中国の軍事大国化」と「北朝鮮の核戦力」を挙げているが、これらは軍事超大国の米国が維持している巨大な在日米軍基地の存在と無関係ではない。安倍政権の動きは、一部の国と癒着し、敵を作り、相互に非難し合うことで緊張を高めるものであり、抑止力にならないどころか、軍拡競争を誘発するばかりである。これは日本の安全を脅かすだけでなく、世界の諸国民の平和に生存する権利を侵すものと言えよう。すでに自らの考える秩序を全世界に押しつけようとする米国の力の政策が限界に達していることは明白である。

 日本国憲法は、前文に「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と書き、戦争と武力行使を永久に放棄し、戦力を保持しないことを第9条で規定している。軍事力強化を目指す安倍政権の意図に反し、大多数の国民は憲法第9条改正を望んでいない。外交努力によって自らの安全を図り、世界の紛争に対しては、一方だけを支持することなく積極的に調停にあたるのが日本の目指すべき道である。人口激減、財政赤字の日本が進むべき道は、国際融和・協力による一人一人が安心・安全の社会であるべきだと信ずる。

 私たちは、60年前の、「平和共存」、「平等互恵」を訴えたバンドン会議(アジア・アフリカ会議)や、核兵器と戦争の廃絶を呼びかけたラッセル・アインシュタイン宣言を想起する。日本国憲法が目指す目標に向かって粘り強く一歩一歩進んでいく政策を選べば、“核の傘”による核兵器依存が不要になるばかりか沖縄を含めた日本全体の米軍基地も不要になり、北東アジアの緊張緩和に寄与し、諸国民が安心して安全に生存していく世界の実現に貢献できる。

 私たちは、日本の国民に、日本政府の政策を、国連憲章の平和原則と日本国憲法の初心と歴史の流れに従って、平和共存・相互理解・平等互恵及び一人一人の平和的生存権の保障される世界を目指して、根本的に変えさせていくよう訴える。

撤回・廃案を決断せよ 「違憲」の安保法制(2015年6月23日中日新聞社説)

2015-06-23 08:33:53 | 桜ヶ丘9条の会
撤回・廃案を決断せよ 「違憲」の安保法制 

2015/6/23 中日新聞社説
 国会が約三カ月間延長されたが、「憲法違反」と指摘される安全保障法制関連法案をこのまま成立させてはならない。法案の撤回、廃案を決断すべきだ。

 今月二十四日に会期末を迎える今の通常国会の会期がきのう、九月二十七日まで九十五日間延長された。鈴木善幸内閣の九十四日間を抜いて現行憲法下で最も長い会期延長は、安倍内閣が提出した安保法制関連法案を確実に成立させるためにほかならない。

憲法学者の重い指摘

 安保法案は五月二十六日に衆院本会議で審議入りし、現在、衆院平和安全法制特別委員会で審議されている。衆院を通過した後、仮に参院での審議が遅れても、衆院で再び可決し、成立させられる日程を、大幅延長は想定している。

 安倍晋三首相は今年四月、米連邦議会での演説で、集団的自衛権の行使に道を開く安保法案を「夏まで」に成立させると語った。

 しかし、この法案は、どんなに審議を重ねても、成立させるわけにはいかない。憲法違反である可能性が否定できないからだ。

 歴代内閣は、集団的自衛権の行使を「違憲」とする憲法解釈を堅持してきたが、昨年七月、この解釈を変更して行使容認に転じたのが、安倍内閣である。

 従来の憲法解釈は、国会での長年の議論の積み重ねを経て確立されたものであり、一内閣の判断で解釈を正反対に変える暴挙はそもそも許されない。

 衆院特別委ではきのう参考人質疑が行われ、歴代内閣法制局長官のうち二人が、安保法案の違憲性を指摘した。今月四日の衆院憲法審査会では、自民党が推薦した参考人を含めて三人の憲法学者全員が、安保法案を違憲と断じた。

 三人以外にも、全国の憲法学者二百人以上が安保法案に反対する声明を出している事実は重い。

過ち繰り返す危険性

 菅義偉官房長官は「数ではない」と防戦に躍起だが、憲法学の主流の意見を故意に無視し、法案成立を強引に進めることが、賢明な政治であるはずがない。

 元法制局長官が安保法案を違憲と批判したことに対し、安倍首相はきのう参院決算委員会で「政治家は常に、必要な自衛の措置とは何かを考え抜く責任がある」と語った。その通りではある。

 ただし、憲法の枠内で、との限定が付いていることも、政治家は常にわきまえなければならない。

 憲法の枠組みを無視し、もしくは確立した憲法解釈を勝手に変えて、思うがままに安保政策を組み立てるというのなら、国家権力を憲法で縛る立憲主義は形骸化し、海外で武力の行使をしない専守防衛の歯止めは意味を失う。

 自存自衛を名目に、近隣諸国を侵略していった過去の戦争の過ちを繰り返す危険性すら高くなる。戦後日本の平和国家としての歩みにふさわしいとは到底言えない。

 安倍内閣は違憲批判を受けて、集団的自衛権の行使容認を正当化するために、最高裁による一九五九年の「砂川事件判決」を再び持ち出した。

 しかし、この判決は旧日米安全保障条約に基づく米軍駐留の合憲性が問われた裁判であり、裁判で議論もされず、判決でも触れていない集団的自衛権の行使容認について、この判決を論拠とするのは無理がある。

 そもそも、なぜ今、集団的自衛権の行使容認が必要なのか、安倍内閣は国会論戦を通じても、その根拠を明確に示せてはいない。

 首相は先週の党首討論で「全体として国際社会の変化を申し上げている」と述べ、ホルムズ海峡での機雷掃海や朝鮮半島有事の際、警戒監視に当たる米艦船の防護を行使例に挙げたが、憲法の解釈を変更してでも、すぐに可能にしなければならない切迫性はない。

 安倍内閣は法案成立に向けて、独自の対案をまとめる予定の維新の党との修正協議に前向きだ。

 しかし、法案が修正されても、集団的自衛権の行使に道を開いたり、戦闘現場近くで外国軍を後方支援できるようにする根幹部分が変わらなければ、法案がもたらす危うさに変わりはない。

国民を畏れなければ

 共同通信社が実施した直近の全国電話世論調査によると安保法案が「憲法に違反していると思う」との答えは56・7%に上り、法案への反対も前回五月の調査より10ポイント以上増え、58・7%に達した。

 安保法案は専守防衛を逸脱し、おびただしい犠牲の上に、二度と戦争はしないと誓った戦後日本の平和主義に禍根を残す内容だ。

 与党が衆参両院で多数を占めていても、民意を無視して法案を強引に成立させていいわけがない。

 国民を畏れ、政府自らが法案撤回を決断するか、国会が良識に基づいて廃案とすることを、会期延長に当たって強く求めたい。