八幡町をゆく(7) 太子岩附近にて
太子岩付近の本流は比較的水深が浅かったので、鮎釣りをする人や雑魚とりの好きな人が上流から鮎を追って狭い箇所に集め網を打って、これを捕獲していました。
加古川の鮎は味も香りも一よいと言うので食通には大変評判がよく、子供は、石の下にかくれているえびや雑魚をすくい捕るなどして夏の間はあそびました。
そうして、水に親しんでいると別に練習などしなくても、いつの間にか泳げるようになっていました。
五ケ井堰の水門の下流は清流で小砂利が多かったからシジミ貝がたくさんとれました。
水門の中では小さなえびが側壁にくっついているのを網ですくうと短時間に沢山の小えびがとれ面白いように獲れました。
太子岩附近は水が淀んでいて流れがゆるやかで深かったので水の多いときは、岸から太子岩まで泳いでも背の立たないこともあり、水の少ないときは太子岩まで泳いで岩の上に立つことができ、そこまで泳げることが自慢でした。
水門付近は、螢の名所で、六月の初旬になると、沢山の大きな螢が飛び交い明滅するので、麦藁の束を持って行きそれを捕えるのも楽しみでした。
夏休みになると児重は昼寝の時間に太子岩附近へ泳ぎに行って、タニシを糸でくくったのや米糠で作った団子を餌にして岩にかくれているエビをおびき出し、網ですくい上げて楽しんでいした。
中西条 山 本 定 次 『ふるさと やはた』より