故郷へ恩返し

故郷を離れて早40年。私は、故郷に何かの恩返しをしたい。

あったかくて

2020-10-07 04:35:11 | 思い出話

絵のタイトルは、「あったかくて」です。
文化の日、野外で仲間と一緒にチュニジアダンスを披露しました。
そのあとのコーヒーがあったかくて、この表情です。


今日のタイトルは、「あったかくて」です。
体温が感じられる記事を書きたいと挑戦します。

母の胸に顔をうずめ、幼子が無心で喉を潤している。
満足し、母のパジャマのひらひらで、自分の顔をすりすりしながら眠りについた。
幼子は、母の胸にむしゃぶりつくことはなくなった。ひらひらがあれば、どこでもいつでも眠られる。

高校一年生の夏、室積海岸で遠泳をした。
太鼓の音を聞きながら、仲間とゆっくりと泳いだ。
二時間後、唇が青いまま砂浜をあがった。
女の先生と同級生の女子が、甘酒をふるまってくれた。

2週間山歩きをした。
高尾山を出てから、やっと天龍迄辿り着いた。
自分の実力からは、ここが限界と京都までの挑戦をやめた。
「先にお風呂に入ってくれる」古刹の寺の奥様の一言。

私にも同じことをするの。
過去別れた女性と、もう会わないための自分の覚悟の行動を話した。
女の眼から涙がこぼれた。胸が締め付けられた。

居酒屋で飲む金がない。
一本の缶ビールを友と交互に飲んだ。
一口飲んでは、全力で走った。酔いは回らない。
また飲んで、走った。交互に相手の顔を殴った。
唇から血がほとばしった。

15mの梁を猿のように昇った。
現場は昼休みで、同僚の者たちが下で見守る。
450mmのH鋼に両足をかけ、両手で吊元に使ったワイヤーを外しにかかった。
務所上りが、残したワイヤーである。吹き出る汗が後悔を物語っていた。
1mのワイヤーが乾いた音を立て、コンクリートの床ではねた。
水平に10m、垂直に15m四肢の筋肉だけを信じて、無事に床を踏んだ。

こんな風景じゃない。
篠竹の林に入り込んで一カ月が経った。伐った篠竹は1600本。妻は、気が振れたと心配した。
山際から耕作放棄地を抜け、駐車場らしき場所を抜けやっと村道まで切り開いた頃、
近所のおばさんが、「私も気になっとった。ありがとう」と言われた。
カフェの周りと隣接する空き家を覆う木を伐ろうと、闘志が湧いた。

女の柔肌を思い出そうにも、記憶が蘇ってこない。
申し訳ないと、寒々とした想いしかない。

「あったかくて」は、瞬時の想いです。
あとから思い出せる、温度の記憶は乏しいことが分かった。
私の名前を忘れた母の手は、がさがさで温かった。
私の中にも、母からもらった温かい血が流れている。
温度の記憶は、哀しい。
もう、感じることができないからだろうか。

できるうち ありがとう書く 妻の手に

2020年10月7日
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