(酒)
「人間とは」と問われたとき、
即座に答えることが出来る人は、
十人のうち何人居るだろう?
何年も人間をやってきているのに・・・
それと同じように、医者を志す医学部の四年生に、
「医学とはどんな学問ですか?」と訊いたら、
的確に答えられた人は50%であった。
(七ヶ月の大学病院入院中に質問して得た回答から、
およその数を50%と読んだ。
医学生は六年で卒業になる。)
ついでだからここで回答しておきたい。
医学とは、人の病気の治療と予防を探求する学問である。
ボクは文学部を卒業しているが、
英文学部はどんな学問であるかを
知った上で英文学部を選び英文学部に入った。
だから、医学を志す人は、
医学とはどんな学問であるかを
知った上で、医学部に入って勉強していると思っていた。
人の命を預かる医学生の半分が、
医学の何たるや知らないと言うのは、
はなはだお粗末、
学問の内容を知っていて学ぶのと知らないで学ぶのでは、
卒業するときに格段の差が出来ることは間違いない。
そこで、「いくらなんでも卒業するまでには、
きちんと答えられるようにしておいてくださいね」と
彼らに話した。
さて、20年以上も人間業をしていて、
「人間とは何か」を答えられる人は、
果たして何人居るのであろうか?
幸いボクは中学時代に教わった定義を納得した上で覚えている。
(人間とは、知恵、意志、感情を持った動物である。)
非常に分かりやすい定義である。
いや、そうじゃないと仰る方は、
その違いを教授願いたいものである。
さらに社会人になってから、
知恵や意志が人間のどれほどを占めているかというと、
平均的には、海に浮かぶ氷山の
海上に出ている程度であるということを知った。
ご存知のように海に浮かぶ氷山は、
全体の90%が海の下にある。
人間に占める「知恵と意志」は、
氷山にたとえれば海上に出ている
部分の10%に過ぎない。
残り90%は感情が占めている。
したがって、人を説得するときは、
10%の知恵や意志の力に訴えて、
理屈で説得するよりも、
90%を占める感情を揺り動かしたほうが説得しやすい。
営業の極意である。
人間から「知恵と意志と感情」を取り除くと、動物が残る。
そこで主題の「酒と男と女と恋と」に戻る。
お酒を飲むと、脳が麻痺して「知恵や意志」はどこかへ行ってしまい、
感情が残って喜怒哀楽が発散される。
笑い上戸に怒り上戸、泣き上戸になる。
感情むき出しである。
感情のほかにむき出しになるのが動物の部分。
その欲望の部分。
人間には欲望がある。
知恵、意志、感情の部分を捉えると、
自己顕示欲、知識欲、
金銭欲、向上欲、名誉欲、などなど。
動物の部分を捉えると、食欲、睡眠欲、性欲、
そして反対に排出欲=大小の便を排出する欲望などなど。
酔っ払いのむき出しの欲望は、
脇で見ていてこれほど破廉恥なものはない。
見るに耐えないのだ。
翌朝、正常に戻った後で、
昨晩の話をすると照れ隠しなのかどうか判らないが、
一様に覚えていないと言う。
ボクに言わせれば
「嘘を言ってはいけない。とぼけるのもほどほどにしろ!」
の一語につきる。
「生酔い本性疑わず」というがその通りである。
ボクはお酒に強い方であるが、
どんなにへべれけに酔っ払っても、
仮に右に行きたいのに左へいってしまうほど飲んで酔っ払っても、
意識ははっきりしている。
翌朝覚えていないなんて事は一度もなかった。
どうしてあんなことをしたのだろうと、
思い出すだけで赤面するようなことを言ったり、
行動したりしていることは事実だ。
どちらかというと、普段出来ないことをやっているのだ。
だからサラリーマンは、
上司の悪口なんかが酒の肴になるのである。
それにしても、普段いえないようなことを酒の力を借りて、
鬱憤を晴らすというのは、
ある意味、ストレス解消になるのかもしれない。
そんなことをしなくても良いよう
不断の心がけをしたいものである。
長い間人間として生きてきましたが、人の定義について考えたことがありませんでした。
今日の解説でよくわかりました。
残りの人生が短くなってきた小生、知恵はなく、感情も薄れ、意志も若い頃のようにむき出しにならなくなりました。
このような症状が人生の終盤の状況なのでしょうね。
人間失格となって、お迎えがくるのでしょうか?
無意識はすべての人と繋がって
いるとか。
失格では無くて、全うしてでしょうね。
それをなかなか出来ないのが人間ですね。