矢野(五味)晴美の感染症ワールド・ブログ

五味晴美の感染症ワールドのブログ版
医学生、研修医、医療従事者を中心に感染症診療と教育に関する情報還元をしています。

JICAの院内感染管理者養成コース

2009-11-19 01:32:02 | Weblog
外務省のプロジェクトで、JICAが行っている事業に、途上国から医療従事者の参加を募り、院内感染管理者を養成するコースがあります。

注:”院内感染”nosocomial infectionsという言葉は、現在、”医療関連感染”
healthcare-associated infections と言う言葉に置き換えることが望ましいです。。定義として、入院後、48時間以降に起こった感染症の総称。メディアなどが、見出しで使用する”院内感染”は、
”院内伝播”nosocomial transmission
”院内アウトブレイク”nosocomial outbreakを指していることが多いので、区別が必要です。


さて、前置きが長くなりましたが、毎年、公募で、10カ国ぐらいの国から、医師、ナース、経営などの病院責任者が参加して、病院内の感染症コントロールのやり方などを4週間にわたり学ぶコースです。

国立国際医療センター内の見学や、今年は、地方の病院も見学する内容で、とても興味深いです。さまざまな方がレクチャをされます。

私も4年ぐらい前から、インストラクターをさせていただいております。
楽しみな仕事のひとつです。

私の担当は、1日コースで、午前は、アウトブレイクの調査方法のケーススタディ。午後は、パブリック・ヘルスの問題解決方法をケーススタディで、やりました。講義形式ではなく、参加者が個人または、グループで、話し合い、プレゼンテーションする方式を毎年、取っています。

毎年グループのメンバーによって、ダイナミクスが異なり、とても興味深いです。

今年は、午後のパブリックヘルスの問題解決のエクササイズで、参加者が現在かかえる現実の問題に取り組むことをしてもらいました。各国の問題が浮かび上がり、大変、勉強になり、また多くを参加者みんなで共有できたことが、とてもよかったです。

中国の参加者は、都会の大病院で、多剤耐性のアシネトバクターのアウトブレイクがある、との問題。カンボジアの参加者は、新生児病棟で、腸内細菌の感染症が起こるのはアウトブレイクか、との問題、ニカラグア、ベリーズ、ラオスからの参加者は、3人ともデング熱。

トンガからの参加者は、増加する糖尿病によるdiabetic footで、足を切断する人が増えている、という問題、ベトナムからは、H1N1のコントロールの問題、サモアからは、細菌性腸炎の問題、リベリアからは、コレラの問題、ウガンダからは、マラリアの問題、と、彼らの5分間のプレゼンテーションを聞いていた私は、本当に興味深く、そして、学術的にもそのお国柄が出ており、非常に勉強になりました。

他の国の問題を共有することで、日本の問題も、改めて明確になると感じます。
こうした貴重な国際交流の場は、大切にしたい、と切に思いました。

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