中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

職場復帰支援策の位置づけ

2015年02月26日 | 情報
質問をいただきました。第3段です。
職場復帰支援策を策定したのだが、就業規則なのか、人事マニュアルなのか、就労ガイドなのか、要するに社内規則のどこに、
職場復帰支援策を位置づければよいのか、という質問内容です。

結論から申し上げます。職場復帰支援策は、就業規則、乃至は就業規則の別規程として、定めてください。なぜか。
まず、基本的な事項から確認しましょう。
通常、就業規則では、まず、その適用範囲を明確に規定する必要があります。最近は従業員も多様化しています。
例えば、正社員が対象である、期間従業員が対象である、アルバイトが対象であるというように。
反対に、適用範囲を明確に規定しないと就業規則を規定できないという技術的な理由があるからです。
なお、適用範囲については、一部の従業員を対象にすることは差支えないことになっています(昭63.3.14基発150号)。
また、就業規則の別規定として定めることは、みなさんの事業所においても、
毎年のように変更・修正される賃金規則を別規定されているように、差支えないことになっています。

さて、正社員対象の職場復帰支援策であるならば、全ての正社員が対象になります。
その全ての正社員に平等に、かつ強制的に適用するには、就業規則に規定しなければなりません。
なお、全ての正社員に適用する場合は、「相対的必要記載事項」に該当することになりますので、
法的にも就業規則に記載しなければなりません(法89条10)。

それなのに、マニュアル、しおり、内規等では、全ての正社員に強制的に適用することはできません。
対象の従業員に、「そのような規則は知りません。就業規則に明記してありますか」と聞かれても、反論の余地がありません。
特に、内規は原則として従業員には周知しませんので、就業規則としての効力が発生しませんし、
一方で、内規を従業員に周知したのでは、内規としての意味がなくなります。
支援策を恣意的に運用されたいのであれば、はなしは別ですが、そうすればトラブルになることは目に見えています。
なんのために職場復帰支援策を規定するのか、その原点、理由を考えれば、結果は当然の帰結になります。

さらに、就業規則は、全ての従業員に周知させなければなりません。
第106条1項抄 「 使用者は、労働基準法及び労働基準法に基づく命令の要旨、就業規則、労働基準法に基づく労使協定
並びに労使委員会の決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、
書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない。」

結論を繰り返します。職場復帰支援策は、就業規則、乃至は就業規則の別規程として、定めてください。
なお、職場復帰支援策は、「完璧に規定したと確信しても、いざ実際に運用してみると、意外と不都合が生じてしまいがちです。
そうすると規定を修正しなければなりませんので、就業規則の別規程に位置づけ、修正が容易にできるようにしておくのが、賢明な処置と考えます。
さらに付け加えると、支援策の対象者が従業員のほんの一部に限定されることも、別規程にする理由があります。

今回の質問は、虚を突かれました。あまりにも自明の質問だったからです。
このような当たり前と思い込んでいるような事案に対して、疑問をぶつけられるのが最も難しいのです。

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