中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

(プラス情報)「特性」は「障害」か?

2024年07月01日 | 情報
〇精神障害の中の気分障害(うつ病等)と、発達障害(ADHD等)とは全く異なる疾患であることを、まず理解することが大切です。

〇「特性」は「障害」か?転職6回、自信喪失からの大逆転 証券会社で働く発達障害者、高原雅之さん
2024年6月22日 東京

ピンクのレンズのサングラスをし、耳にはヘッドホン-。東京都内の証券会社で働く高原雅之さん(36)=埼玉県鶴ケ島市=は、こんな格好で仕事をしている。
「白い壁のオフィスはまぶしくて疲れる。周囲の音が混ざると、目の前の会話が聞き取れない」
発達障害の一種、自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠陥多動性障害(ADHD)と診断されている高原さんは感覚が過敏だ。働きやすい環境に身を置き、仕事のスタイルを確立するまでには幾多の困難があった。

◆「頭のスピードに手が追いつかなくて…」
子どもの時から、周囲の人を「自分と違いすぎて人として見られなかった」。生活に支障が出るほどではなかったが、大学時代の就職活動が最初の壁だった。
文字を書くのが苦手で履歴書でつまずいた。「頭で考えるスピードに手が追いつかなくて、書いているとイライラしてくる。どうしても汚い字になった」
手書きの履歴書を見た採用担当者から「やる気が感じられない」と言われた。面接で質問の意図が分からず、志望動機を「家から近いので」と答えたことも。100社以上に履歴書を送り、インターネット商材の電話営業の仕事に就いた。

◆うつ病、転職…28歳で転機
1年ほど働くも、上司とのやりとりがうまくいかず、うつ病になり退職。その後、3回転職し、1週間で辞めたこともあった。手に職をとシステムエンジニアを選んだが、同僚とうまくやりとりができず、「自信をなくし、落ち込んだ」。
そんな時にスマートフォンで目にしたのが、ADHDを自己診断できるサイト。試すと、その傾向があると分かった。病院でADHDと診断されたのは2015年、28歳の時だった。
障害者として働くため、精神障害者保健福祉手帳を取得。「まずは自信をつけたい」と、障害者雇用で事務職に。「給与は低く、生活はぎりぎり。だが期待も低く、プレッシャーがなかった」。余裕ができ、自分の特性に向き合えた。
「コミュニケーションが不得意で、他の人と共感のポイントが異なるため、相手の気持ちに配慮できないことがある」「曖昧な指示が分からないので論理立てて説明してほしい」
高原さんは自身の特性を「これも自分」と受け入れ、周囲に伝えた。「強みになる部分もある」と認識し、障害者雇用に力を入れ始めた大手企業に就職した。

◆「ストレス解消人形」で課題解決
「この時が一番、自分の特性を生かして仕事ができた」。
6回目の転職で配属された総務部門での任務は、従業員の満足度を高めること。アンケートで不満や問題を聞き取り、調査分析。電話対応で不満を抱える社員が多い部署に、はけ口となる「ストレス解消人形」を導入して離職率を下げた。独自の発想で次々と課題解決につなげた。
高原さんは「さまざまな特性を持つ社員が一つの企業の中にいるほうがいい」と言い切る。課題を多面的に見ることができるからだといい、こう問いかけた。
「多様性とは、障害者が健常者の中に入ってお互いの理解を促していくことじゃないですか」

◆企業の意識改革へセミナー 続く試行錯誤 
 発達障害に見られる特性を「障害」ではなく「脳の特性」として尊重するという取り組み「日本橋ニューロダイバーシティプロジェクト」が2022年10月、東京・日本橋で始まった。英語でニューロは「脳、神経」、ダイバーシティは「多様性」。武田薬品工業(大阪市)が旗振り役となって企業向けセミナーなどを開き、高原さんも自身の経験を話した。
23年には企業で働く2600人を調査。発達障害と診断されていない2500人のうち、5%がASDやADHD、学習障害(LD)の傾向に「よく当てはまる、または頻繁に指摘されたことがある」と回答し、障害の特性を感じている「グレーゾーン」だった。
特性によって支障が出ないように「自分で対処している」と答えたのは、発達障害当事者が76.1%、グレーゾーンの人が54.9%と半数を超えたのに対し、周囲の人は9.9%と低い水準となった。「強い特性がなくても、生活や仕事に支障があれば障害となり、支障がなければ特性となる」と武田薬品の担当者。企業の意識を変えるため試行錯誤は続く。

◆今月の鍵
東京新聞では国連の持続可能な開発目標(SDGs)を鍵にして、さまざまな課題を考えています。今月の鍵はSDGsの「目標10 人や国の不平等をなくそう」。障害の有無にかかわらず、みんなが自分の特性を生かせるように、求められる働き方は多種多様です。障害者雇用ではない、裁量のある仕事の選択肢も必要。でも、周囲の理解の低さから選べない現実もあります。どうすればいいか。手始めに、自分の職場の課題探しからやってみます。
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「高ストレス」の公立校教職員は

2024年07月01日 | 情報
・1年に1回のストレスチェックは、結果を云々するより、
自分のこれまでの1年間を振り返り、現在の精神状態を自分自身でチェックする機会ととらえて、実施することが肝要と考えます。

・現状、1年に1回のストレスチェックは、ほぼマンネリ化しており、
多くの企業が実施の意義を見失っている状況にあると、推測しています。

・それなのに、日本の企業は、毎年ストレスチェックについて合計で100億円の費用を投じています。
費用対効果は如何かと、考えていただきたいと思います。

(参考資料)
ストレスチェック制度の効果 厚生労働省HP
令和6年6月24日
資料1 第4回 ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会


◎参考報道
「高ストレス」の公立校教職員は過去最高の11・7%…業務量や保護者対応が要因
2024/06/28 読売

全国の公立小中高校の教職員が加入する「公立学校共済組合」の2023年度調査で、
医師による面接が必要な「高ストレス」の教職員が過去最高の11・7%に上ったことが27日、わかった。
事務的な業務量や保護者への対応がストレスの要因になっている。
共済組合は16年度から労働安全衛生法に基づく「ストレスチェック」を実施している。昨年度は約32万人の教職員が受検した。
高ストレス者の割合は、調査を開始した16年度(8・9%)以降、コロナ禍で休校が続くなどした20年度を除き、毎年上昇している。
中学、高校の教職員にストレスを感じる割合が高く、30~40歳代が多い。
共済組合は今回初めて、ストレスの具体的な要因を把握するため、16~22年度に受検した延べ約172万人分のデータを分析した。
最多のストレス要因は、報告書の作成など「事務的な業務量」だった。
以下、「対処困難な児童生徒への対応」、学校の業務を分担する「校務分掌」と続いた。
22年度には「保護者対応」が初めて4番目に入った。
近年、学校現場では長時間労働の常態化のほか、
教職員に高圧的な態度をとる「モンスターペアレンツ」と呼ばれる保護者の存在が問題となっている。
調査に携わった福岡聖恵病院の十川博副院長は
「保護者からの理不尽な要求や苦情などへの対処は難しくダメージも大きい。
苦しんでいる教員を同僚や上司が見逃さず、仕事の分担などでサポートしていく姿勢が重要だ」と指摘する。


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