中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

(主治医・産業医シリーズ⑤)主治医への情報提供依頼書

2024年07月15日 | 情報
小職の2021年07月01日掲載のブログを、再掲します。

あんしん財団が、Webシンポジウム『中小企業向け【実践型】職場のメンタルヘルス対応シンポジウム』~最大多数の最大幸福をめざして~ を
オンライン配信(YouTubeでの動画配信)しました。


その中で、労働法の専門家である向井弁護士の講演資料の中に、「主治医面談・情報提供依頼書」がありました。
事例、事情、時期によって当然に内容は異なることなりますが、標準的な参考例として、
経験の少ない産業医や、産業医を委嘱していない事業所にとっては、役立つ資料でしょう。
当事者の同意、乃至は当事者が同行した場合には、会社側は主治医に対して、
当事者の業務や職場環境、会社の業容、復職時の会社側の受け入れの考え方等について、
詳細な内容と会社側の希望を伝えることは可能ですし、必ず実行するべきです。
なお、事業場の人事労務関係者が、診断書(要休職時や復職可等)の内容について
主治医に説明を求めても主治医は何の反応も示さないことでしょう。
主治医は、産業医が質問して初めて、回答を寄せてくるものなのです。ご注意ください。
ですから、もし、産業医を委嘱していない場合は、原則として医師会単位で設置されている地域産保に相談してください。

以下、本文です。
向井弁護士作成 21.3.12セミナー資料「主治医面談・情報提供依頼書」

☑ 業務内容を説明する(小職註;休職時)
主治医には,会社の業務内容や従業員が担当していた業務内容について詳しく説明する。
業務内容を知ることにより,復職可能という診断書を書いていた主治医が,
「その業務内容ではフルタイムで勤務するのは難しい」などと意見を変更する場合があるからである。

☑ 初診日(小職註;休職時)
いつから通院したのかを確認する。入社前から当該疾患にかかっている可能性もあるからである。
ただし,入社前から病気だったことが明らかになれば,業務と病気の関連性がないことを裏づける事実になることもある。

☑ 薬の種類と量,履歴(小職註;休職時)
薬の種類等がわかれば,インターネットなどで効用や副作用を調べることができる。
産業医に薬の情報を伝え,どの程度の病状なのかをある程度推察することもできる。
メンタルヘルス問題は,処方している薬には主治医の本音が現れる。
診断書には同じように「就労可能」と書かれていても,実は内情はさまざまである。
病状を推察するうえで薬を知ることは非常に有効であるから,必ず確認するべきである。

☑ フルタイムで働けるかどうか(小職註;復職申請時)
本人の業務内容を十分に説明したうえで,フルタイムでその業務に就いても大丈夫かどうか,主治医の判断を仰ぐ。

☑ 復職後は何に気をつけるべきか(小職註;復職申請時)
残業はさせないほうがよいか,元の業務に戻してよいかなど,会社が留意するべきことを確認する。
主治医が述べた点に配慮しておけば,会社が過重な業務をあえて負わせて,
病気を再発させたなどと後で主張される可能性に備えることができる。
また,会社が主治医の見解に従って就労環境を配慮したにもかかわらず再発を繰り返した場合は,
会社としてできることはすべて行ったと言うことができ,将来やむを得ず退職してもらう際の重要な根拠になる。

☑ 記録の残し方(小職註;休職から復職までの全期間)
主治医面談の内容は紙のメモで保存したり,議事録形式にまとめることでもよいので,
何らかの形で保存する必要がある。後に有力な証拠となる。主治医の協力が得られるのであれば,不幸な誤解がお互いに生じないために面談内容を文書にまとめてFAXやメール等で送ってみてもらうことも可能であると思われる。

コメント
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