中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

労災認定で「事業主は取消訴訟できない」

2024年07月05日 | 情報
結論は、企業・事業所は、労災事故を起こしてはいけない。細心の注意・対策により労災事故を防ぐよう経営努力を怠ってはならないということです。

〇最高裁初判断、労災認定で「事業主は取消訴訟できない」
7/4(木)  弁護士ドットコムニュース

労働者の労災が国に認定された場合、事業主に認定の取り消しを求める権利があるかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(堺徹裁判長)は7月4日、事業主は取消訴訟を提起できないとする初めての判断を示した。
一審・東京地裁は、事業主には訴える資格(原告適格)がないと判断したが、二審・東京高裁は原告適格を認めて、審理を地裁に差し戻していた。最高裁は、二審判決を破棄して、国側が逆転勝訴した。
裁判では、一般財団法人「あんしん財団」が、女性職員の労災認定の取り消しを求めていた。最高裁判決を受けて、職員側の弁護団は記者会見を開いて「当たり前の判断だ」と喜びを口にした。
弁護団によると、女性職員は2015年に精神疾患で休職すると、労災認定されて、約8年間にわたって保険支給を受けてきたという。もしも支給決定が覆れば、多額の返還を求められるおそれも考えられるところだった。
弁護団の嶋﨑量弁護士によると、判決の知らせを聞いた職員は「返さないといけないのであれば生きてはいけなかった。少し安心した」と話したという。
東京高裁の判決では、メリット制(労災認定を受けた労働者への保険給付の額によって、事業者が納める保険料の額が増減する制度)の適用を受ける事業主は、労災の支給決定によって、納付すべき保険料が増額するおそれがあるから、事業主の利益が侵害されるとして、「原告適格を有する」と判断されていた。
弁護団の山岡遥平弁護士は「被災労働者や過労死事件の遺族を守ることにつながる判決」と評価しながらも、メリット制のあり方についても今後争っていきたいとした。


〇労災、事業者が不服「不可」 認定巡り 最高裁初判断
2024/07/05 読売

仕事が原因で病気になったりケガをしたりした労働者の労災認定について、雇用する事業者が国に不服を申し立てられるかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(堺徹裁判長)は4日、「不服申し立てできない」とする初判断を示した。「申し立てられる」とした2審・東京高裁判決を破棄し、事業者側の請求を却下した1審・東京地裁判決が確定した。
労災保険には「メリット制」と呼ばれる仕組みがあり、従業員が労災認定されると、事業者が負担する保険料が増える場合がある。原告の一般財団法人「あんしん財団」(東京)は「不利益を被る事業者には労災認定に不服申し立てをする権利があるべきだ」と訴え、職員の労災認定を取り消すよう国に求めた。
同小法廷は、労災について定めた労災保険法には、法律関係を早期に確定させ、労働者の権利や利益の実効的な救済を図る趣旨があると言及。事業者が労災認定について争う機会が与えられると、「労災保険法の趣旨が損なわれる」と指摘した。
労災認定を受けた同財団職員の代理人を務める嶋崎 量弁護士は同日、記者会見し、「事業主の申し立てで労災認定が覆されるようになれば、被害を受けた労働者が安心して療養できなくなる。大きな意味のある判断だ」と判決を評価した。


〇労災認定、事業者は取り消し請求できず 最高裁が初判断
2024年7月4日 日経

従業員の労災認定を不服とした事業者が、国に認定の取り消しを求められるかが争われた訴訟で、最高裁第1小法廷(堺徹裁判長)は4日、「求められない」とする初判断を示した。訴訟を起こす権利を認めた二審・東京高裁判決を破棄し、事業者側の訴えを却下した一審・東京地裁判決が確定した。
下級審では、事業者が労災認定を争えるかどうか判断が割れていた。事業者の申し立てによって労災認定を覆せてしまうと、労働者がいったん受け取った給付金の返還を求められる可能性もあった。今回の最高裁判断は労働者が不安定な立場に置かれないよう配慮した形だ。
事業者は一般財団法人あんしん財団。一、二審判決によると労働基準監督署は2018年、同財団の従業員の申請に基づき、業務が原因で精神疾患を発症したと認めて労災を認定。従業員への療養補償の支給を決めた。
労災は、事業者が国に納める保険料が原資となる。一定の条件を満たした事業者には、労災件数に応じて保険料の料率が最大40%増減する「メリット制」と呼ばれる仕組みが適用される。同財団も対象で、今回の労災認定で保険料が増える不利益を受けかねないとして、国に取り消しを求めて提訴した。
第1小法廷は、労災について定めた労災保険法の趣旨は「法律関係の早期の確定」や「被災労働者の権利利益の実効的な救済」にあることを確認。事業者側に労災認定を争う機会が与えられると解釈すると、労災保険制度の趣旨が損なわれると指摘した。
そのうえで、事業者が不服を申し立てる場合は、個々の労災認定ではなく、その後に出される保険料を引き上げる決定に対して取り消し訴訟を起こすべきだと結論付けた。仮に事業者側の主張に沿って保険料の引き上げが取り消されたとしても、増額の根拠とされた労災認定に影響は及ばないとの見方も示唆した。
22年4月の一審判決は、事業者には訴訟を起こす資格にあたる「原告適格」はないとして財団側の訴えを却下。同11月の二審判決は「労災の法的効果によって、保険料の納付義務が増える具体的な不利益を被る恐れがある」とし、一転して訴訟を起こす権利を認め、労災認定の適否を検討するために地裁に審理を差し戻すべきだとした。
国は23年から、事業者側が労災保険料の決定に対して不服を申し立てられる仕組みの運用を始めている。
労災に詳しい東洋大の北岡大介准教授(労働法)は「事業者側が個々の労災認定に不服を申し立てられると、被災労働者などの救済に時間がかかるなどの問題が生じかねなかった。事業者の原告適格を明確に否定した今回の判決は評価できる」と指摘。「事業者側にとっても、保険料の認定決定の取り消しを求められるとしたバランスの取れた判断と言える」としている。
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