中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

傘下に小規模事業所がたくさんあります

2015年02月23日 | 情報
質問を頂きました。
1事業所の人数が10人未満の店舗が東日本地域に約100店舗あるチェーン店で、保健師・衛生管理者をしています。
担当者は、私一人です。どのようにして、全体の安全衛生活動を推進していけばよいでしょうか。
そのポイントを教えてください。

ファーストフード、ファミリーレストラン、ドラッグストア、調剤薬局等々、
1事業所当たりの従業員数が、50人未満の小規模事業所を傘下に持つ企業が多くなっています。
労働安全衛生法は、企業単位ではなく、事業所単位での法適用となっています。
50人未満の事業所では、衛生委員会、衛生管理者、産業医等の選任義務がありませんので、
企業の労働安全衛生活動については、対策がとても遅れている、または、放置されていると言ってもよいような状況に置かれています。
これはきわめて大きな問題と言ってもよいでしょう。
現在の労働安全衛生法のウイークポイントでしょう。
ただし、大きな問題だと言って、行政は何をしているのだと批判しても致し方がありません。

まず、企業の組織体制を構築することが先決です。
本社ですべての営業拠点を掌握できるのであれば、
従業員の労働安全衛生を司る部門を、本社の一部門として設置しましょう。
また、本社では手に余るようでしたら、本社と現場との中間に、複数の営業拠点を管轄する部門を設置します。

次に、本社でさえ、50人未満の事業所であっても、従業員が全事業所合計で100人を超えるような規模であれば、
本社に、衛生管理者を配置し、衛生委員会を発足させましょう。そして、できれば嘱託の産業医を契約しましょう。
労働安全衛生法には、50人超の事業所は、衛生管理者を配置し、衛生委員会を発足させ、産業医を委嘱しなければならないとされています。
しかし、一方で、安衛法には、50人未満の事業所に、「衛生管理者を配置してはいけない、衛生委員会を設置してはならない、
産業医を委嘱してはならない」と規程していません。
例え、一事業所が50人未満であっても。企業グループ総計で、100人、200人を超えるような規模の企業であれば、
しっかりとした労働安全衛生体制を構築することが大切です。
これが、経営責任でしょう。
なお、50人未満の事業所ですから、本社以外においては、試験のいらない衛生推進者であってもOKでしょう。

参考判例
大庄(日本海庄や)事件
京都地裁判決(H22.5.25、労働判例1011号35頁)、大阪高裁判決(H23.5.25、労働判例1033号24頁)、最高裁判決(H25.9.24)
これは、現場で起きた事案については、現場責任者は当然として、経営トップも共同して責任を問われるという裁判です。

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