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税金を下げれば経済成長して税収が増えるとするラッファー・カーブ理論については、ほぼ、実証されていると言うことだが、私が、興味を持つのは、ラッファーたちのサプライサイド理論の方である。
このサプライサイド経済学が、小泉竹中政権の経済政策と同一視されて、現在の格差社会の元凶である市場原理主義経済だと非難されているのだが、問題の本質は、それほど簡単ではない。
ラッファーたちの説明では、
サプライサイド経済学に対する抵抗感が強いのは、正統的なケインズ経済学に真っ向から反対する所為である。ケインズ経済学では、不況の時には、政府は需要を刺激し、遊休資産を活用すべきだと説く。これに対して、サプライサイド経済学の税制理論では、原因は需要の不足ではなく生産の不足にあると考えるので、減税政策など生産能力をアップする施策を取るべきだ、と言うことである。
その経済学の核心には、税率は納税者の労働・貯蓄・投資意欲を左右し、ひいては経済の健全性に大きな影響を及ぼすとのする考え方があるので、減税政策が前面に出てくる。
ラッファー・カーブから導かれる租税政策の原則は、次のとおりであり、ノーベル賞学者プレスコットや全米経済研究所なども認めているとして、戦後のアメリカ経済を詳細に分析して、その実証を試みている。
1.何かに税金をかけたらその生産は減り、税金を減らせば生産は増える。
2.理想の税制は、貧しい人を金持ちにする制度である。
3.税金が高い程経済に与える悪影響は大きく、引下げる程効果も大きい。
4.税率が高くなり過ぎると税収の減少に繋がる可能性がある。
5.効率的な税制度は、課税ベースが大きく税率は低い。
更に、ラッファーたちは、サプライサイド経済学は、減税さえすればあらゆる経済問題が解決するなどと主張しているのではなく、総供給量、すなわち、経済の中で生み出されるあらゆるモノやサービスの拡大であり、そのためのインセンティブの導入であるとして、次のような基本政策を提唱している。
自由貿易、安定した物価と通貨価値、産業に対する効率的で最小限の規制、労働意欲を高めるような福祉政策、寛容な移民政策、政府運営の効率化と経費削減
ところで、実際に、富裕層に優遇税制を適用するなどこのサプライサイド政策を実施した結果、富裕層がより豊かになった事実を、ラッファーたちも認めているが、貧しい人々が這い上がるのを邪魔していた障害物が取り除かれ、起業家精神に富む大勢の人々がこのチャンスを利用して富を築き、豊かになる機会にあふれた社会になったと言う。
しかし、左派の経済学者たちは、格差の拡大を益々助長したとして激しく非難し、貧困者へは僅かなおこぼれを与えるだけの「おこぼれ経済学」だと揶揄している。
所謂、日本共産党などが糾弾するトリクルダウン理論である。
しかし、ラッファーは、アメリカが直面した1930年代と1970年代の不況の4大要因は、保護貿易主義、増税および政府支出の規律なき拡大、規制および政府介入の強化、金融政策の失敗だったとして、ニューディール政策までその効果を否定しており、
1980年以降のレーガン政権によるレーガニミックスによって、成長の阻害要因の大半が排除されたたお陰で、スタグフレーションの呪縛から開放されて、世界中から資金や人材を糾合し、ICT革命などを誘発して、アメリカ経済を成長軌道に乗せたのだと主張する。
クルーグマンやライシュなどがコテンパンに非難するレーガン政権に対する評価が、これほどまでに違うのには驚かざるを得ないが、逆に、ラッファーは、今回のリベラルへと左旋回するオバマ政権の経済政策には、強烈な危機意識を持っている。
特に税については、世界中がフラット税(ラッファーが強力に推奨)の採用などで減税を競い始めた今日、所得税、キャピタルゲイン税、配当税、給与税、ガソリン税、ヘッジファンド税等々上げる話ばかりだと非難する。
嵐の襲来の予兆であり、投売りされるアメリカとして、オバマ政権の経済政策について、
金持ち増税、中間所得層への課税、規制の拡大、保護貿易、弱いドル、労働組合の復活、政府支出の拡大、国民皆保険、超過利得税、排出権取引、移民の制限等々、アメリカ経済の前途に垂れ込める暗雲として詳細に分析し、悉く糾弾しているのである。
私自身の考えだが、金融危機を引き金にして実体経済が極端に疲弊して危機的な状態に陥ってしまったアメリカ経済においては、オバマ政権のドラスティックな財政サポートによる景気対策は必須だと思うが、本来かなりの潜在成長力を内包し、活力の旺盛なアメリカ経済であるから、軌道に乗れば、自立的な経済成長路線に復帰する可能性は高いと思う。
中国が、100兆円規模の膨大な景気刺激策として財政出動して、一気に回復軌道に乗りつつあるのはこの例で、成長余力のある旺盛な経済には、不況時にはケインズ的な「デマンドサイド経済学」が有効だが、本質的には、「サプライサイド経済学」の世界である。
ところが、日本のように、経済が成熟期に到達して潜在成長力を失い(?)疲弊した経済には、リチャード・クーが説くような政府主導の需要拡大政策でいくら景気の落ち込みを支えても、経済の異常な下落と大不況は止められても、益々、国際競争力の涵養力を殺ぐだけで、将来的には、経済力の強化と経済成長には殆どプラスにはならないと思っている。
私自身は、どちらかと言うと、公正な経済政策が正しいと思うし、今の深刻な格差拡大を解消するために厚生経済学的な経済政策を推進すべきだと考えているが、今後の民主党主導政権プラス共産党の、成長より分配に主眼を置いた「サプライサイド経済学」を無視ないし軽視した政策は、中長期的には、日本の経済社会の厚生と安寧のためには、非常に不安があると思っている。
攻撃、すなわち、成長は最大の防御であり、成長戦略なき経済政策は、国民生活を窮地に追い込むだけであり、やはり、シュンペーターの説く創造的破壊のイノベーションを忘れた経済は、衰退するのみだと思っている。
このサプライサイド経済学が、小泉竹中政権の経済政策と同一視されて、現在の格差社会の元凶である市場原理主義経済だと非難されているのだが、問題の本質は、それほど簡単ではない。
ラッファーたちの説明では、
サプライサイド経済学に対する抵抗感が強いのは、正統的なケインズ経済学に真っ向から反対する所為である。ケインズ経済学では、不況の時には、政府は需要を刺激し、遊休資産を活用すべきだと説く。これに対して、サプライサイド経済学の税制理論では、原因は需要の不足ではなく生産の不足にあると考えるので、減税政策など生産能力をアップする施策を取るべきだ、と言うことである。
その経済学の核心には、税率は納税者の労働・貯蓄・投資意欲を左右し、ひいては経済の健全性に大きな影響を及ぼすとのする考え方があるので、減税政策が前面に出てくる。
ラッファー・カーブから導かれる租税政策の原則は、次のとおりであり、ノーベル賞学者プレスコットや全米経済研究所なども認めているとして、戦後のアメリカ経済を詳細に分析して、その実証を試みている。
1.何かに税金をかけたらその生産は減り、税金を減らせば生産は増える。
2.理想の税制は、貧しい人を金持ちにする制度である。
3.税金が高い程経済に与える悪影響は大きく、引下げる程効果も大きい。
4.税率が高くなり過ぎると税収の減少に繋がる可能性がある。
5.効率的な税制度は、課税ベースが大きく税率は低い。
更に、ラッファーたちは、サプライサイド経済学は、減税さえすればあらゆる経済問題が解決するなどと主張しているのではなく、総供給量、すなわち、経済の中で生み出されるあらゆるモノやサービスの拡大であり、そのためのインセンティブの導入であるとして、次のような基本政策を提唱している。
自由貿易、安定した物価と通貨価値、産業に対する効率的で最小限の規制、労働意欲を高めるような福祉政策、寛容な移民政策、政府運営の効率化と経費削減
ところで、実際に、富裕層に優遇税制を適用するなどこのサプライサイド政策を実施した結果、富裕層がより豊かになった事実を、ラッファーたちも認めているが、貧しい人々が這い上がるのを邪魔していた障害物が取り除かれ、起業家精神に富む大勢の人々がこのチャンスを利用して富を築き、豊かになる機会にあふれた社会になったと言う。
しかし、左派の経済学者たちは、格差の拡大を益々助長したとして激しく非難し、貧困者へは僅かなおこぼれを与えるだけの「おこぼれ経済学」だと揶揄している。
所謂、日本共産党などが糾弾するトリクルダウン理論である。
しかし、ラッファーは、アメリカが直面した1930年代と1970年代の不況の4大要因は、保護貿易主義、増税および政府支出の規律なき拡大、規制および政府介入の強化、金融政策の失敗だったとして、ニューディール政策までその効果を否定しており、
1980年以降のレーガン政権によるレーガニミックスによって、成長の阻害要因の大半が排除されたたお陰で、スタグフレーションの呪縛から開放されて、世界中から資金や人材を糾合し、ICT革命などを誘発して、アメリカ経済を成長軌道に乗せたのだと主張する。
クルーグマンやライシュなどがコテンパンに非難するレーガン政権に対する評価が、これほどまでに違うのには驚かざるを得ないが、逆に、ラッファーは、今回のリベラルへと左旋回するオバマ政権の経済政策には、強烈な危機意識を持っている。
特に税については、世界中がフラット税(ラッファーが強力に推奨)の採用などで減税を競い始めた今日、所得税、キャピタルゲイン税、配当税、給与税、ガソリン税、ヘッジファンド税等々上げる話ばかりだと非難する。
嵐の襲来の予兆であり、投売りされるアメリカとして、オバマ政権の経済政策について、
金持ち増税、中間所得層への課税、規制の拡大、保護貿易、弱いドル、労働組合の復活、政府支出の拡大、国民皆保険、超過利得税、排出権取引、移民の制限等々、アメリカ経済の前途に垂れ込める暗雲として詳細に分析し、悉く糾弾しているのである。
私自身の考えだが、金融危機を引き金にして実体経済が極端に疲弊して危機的な状態に陥ってしまったアメリカ経済においては、オバマ政権のドラスティックな財政サポートによる景気対策は必須だと思うが、本来かなりの潜在成長力を内包し、活力の旺盛なアメリカ経済であるから、軌道に乗れば、自立的な経済成長路線に復帰する可能性は高いと思う。
中国が、100兆円規模の膨大な景気刺激策として財政出動して、一気に回復軌道に乗りつつあるのはこの例で、成長余力のある旺盛な経済には、不況時にはケインズ的な「デマンドサイド経済学」が有効だが、本質的には、「サプライサイド経済学」の世界である。
ところが、日本のように、経済が成熟期に到達して潜在成長力を失い(?)疲弊した経済には、リチャード・クーが説くような政府主導の需要拡大政策でいくら景気の落ち込みを支えても、経済の異常な下落と大不況は止められても、益々、国際競争力の涵養力を殺ぐだけで、将来的には、経済力の強化と経済成長には殆どプラスにはならないと思っている。
私自身は、どちらかと言うと、公正な経済政策が正しいと思うし、今の深刻な格差拡大を解消するために厚生経済学的な経済政策を推進すべきだと考えているが、今後の民主党主導政権プラス共産党の、成長より分配に主眼を置いた「サプライサイド経済学」を無視ないし軽視した政策は、中長期的には、日本の経済社会の厚生と安寧のためには、非常に不安があると思っている。
攻撃、すなわち、成長は最大の防御であり、成長戦略なき経済政策は、国民生活を窮地に追い込むだけであり、やはり、シュンペーターの説く創造的破壊のイノベーションを忘れた経済は、衰退するのみだと思っている。