熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

JR東日本のコアビジネスのインソーシング戦略・・・山之内秀一郎元会長

2007年07月29日 | イノベーションと経営
   中国の新幹線事業を視察してみて、日本の民営化後の新幹線の技術水準の高さと信頼性について、フランスやドイツと比べて、中国では非常に高く評価されているのを知って嬉しかったと、JR東日本の山之内秀一郎元会長は語った。
   一方、山之内会長は、今や文明の利器となったSuicaについてこれまでの発展や苦労などその推移を興味深く語った。
自動改札システム実現のために導入されたSuicaが、今や、Pasmoと乗り入れて改札でかざすだけで首都圏の交通機関を自由に乗り継げるようになり、更に、電子マネーとして使われ始め、非常に便利なクレジットカードになった。
   この改札の自動化は、国鉄時代のタブーの一つであったようだが、今回の山之内会長のスピーチで興味深かったのは、もっと重要なタブーであった車両新製造工場など、今まで下請けに丸投げしていた最も重要なコアビジネスを、自社に取り込んでインソーシングしようとした改革である。

   国鉄時代は、車両の製造は一切メーカーに任されていて、国鉄は車両の保守点検修理だけを行って来たが、
   社員から不満が出るのみならず、修理専門から創造的かつ基幹的技術分野への再回帰、すなわち、自分たちの業務の最も重要な部分である車両の設計・製造から運行・保守までの一貫した技術的知識財産の保有とフィードバック・システムの構築を行おうと戦略転換した。

   それまでの技術集団の工事量拡大路線に傾斜していた考え方が間違っていたのではないか。
   最も貴重な研究開発・設計・建設・製造などの創造的な基幹業務の多くを外部に発注し、割の悪い保守管理と言った分野だけ残して、コアコンピタンスを消失したのみならず有能な人材を活用していなかった。
   発注技術者と仲良しクラブ集団とも言うべき体制の構築が災いして、殆ど技術革新に努力しない製造メーカーの言いなりになって異常に高い車両代を払ってきた。
   1級建築士など1000人以上もいると山之内会長は言っていたが、工事などについても、業界との過去の清算が必要である。
   こんな反省が強烈に意識されて、改革が進んで行った。

   独自の発想による車両(寿命半分、価格半分、重量半分)や通勤車両に6扉車(収納式腰掛)が生まれた。
   建築、機会、情報システムなどの事業の分社化や、基幹分野の内生化戦略が急速に進んだ。
   もっとも、車両の質の低下がJR西日本の尼崎事故を悲惨にしているのかも知れないし、それに、家畜車同然の収納式腰掛車が顧客満足に貢献しているのかどうかなど疑問もあるが、駅ビルの整備やエキナカビジネス等の多角経営などJRの変身振りは顕著である。

   ターミナル駅の至近距離の一等地にビジネスの場(?)を持ち、ほって置いてもどんどん集まってくる膨大なお客を持ち、とにかく、ビジネスとして最も恵まれた経営資源をふんだんに所有しているJRが発展しない筈がないのだが、まだまだ、ビジネスモデルが貧弱で、私企業としてのビジネスやマネジメントの経験不足など問題が多いのも仕方ないのであろうか。

   ついでながら、山之内会長の話で面白かったのは、Suica導入で、ソニーのfelicaを使うことを決めていたら、世界的なクレジットカード会社が外交的な圧力をかけて国際入札にしろと迫ってきたと言う。
   ISO問題を持ち出し、デファクトスタンダードでないなどと難癖をつけて来たので、期限を切って提案を出してくれと言ったが、それまでに出来なくて沙汰止みになったらしい。
   欧米の企業は、切符を手に入れる為、チャンスを掴む為には、恥も外聞もなく迫ってくるので用心すべしと言う教訓でもある。
   もっとも、今後注意しなければならないのは、あまりにも巨大過ぎるので、独占禁止法上の問題が起こる可能性があると言うことである。
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