熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ユーラシア・グループ 2023年10大リスク(2)

2023年01月09日 | 政治・経済・社会
   「2023年10大リスク」の前に、昨年の「2022年10大リスク」を参考に列挙すると次の通りである。
   ゼロコロナと中国とロシアに関する以外は殆ど当たっていないと思われるのだが、それ程、昨年勃発したロシアのウクライナ戦争が、23年度の地政学的な世界リスクにインパクトを与えているということであろうか。
リスク No.1 ゼロコロナ政策の失敗
リスク No.2 「テクノポーラー」な世界
リスク No. 3 米国中間選挙
リスク No. 4 中国の国内回帰
リスク No. 5 ロシア
リスク No.7 環境対策は二歩前進、一歩後退
リスク No.8 力の空白地帯
リスク No. 9 文化戦争に敗れる企業
リスク No. 10 トルコ
リスクもどき>
   第二の冷戦、台湾の苦境、ブラジル、移民、

   さて、「2023年10大リスク」だが、ロシアと習近平中国やイランやアメリカの分断、そして、インフレやエネルギー危機や水問題などは、直近の世界的な地政学的な状況から良く分かる。
   私が興味を感じたのは、このタイトルだけでは良く分からない次の3つのリスク、すなわち、リスク No.3 「大混乱生成兵器」 WEAPONS OF MASS DISRUPTION、リスク No.7 世界的発展の急停止 ARRESTED GLOBAL DEVELOPMENT、リスク No.9 TikTok な Z 世代 TIK TOK BOOM である。
   それぞれ、冒頭で概説文章を表示しているので、これを紹介して、少し私見を加えてみたい。

   リスク No.3 「大混乱生成兵器」 WEAPONS OF MASS DISRUPTION 日経は、「テクノロジーによる社会混乱」
   ベルリンの壁が崩壊したとき、米国は世界で最も主要な民主主義の輸出国であった。常に安定していたわけでも、常に良い結果を生んだわけでもないが、追随できる国はなかった。それ以来、ほとんどの期間、技術革新(その多くは米国で起きた)は自由化の原動力となってきた。しかし今日、米国は、意図的にではなく、成長を追求するビジネスモデルの直接的な結果として、民主主義を弱体化させるツールの主要な輸出国となっている。その結果、人工知能(AI)の技術的な進歩が社会の信頼を損ない、デマゴーグや権威主義者に力を与え、ビジネスや市場を混乱させている。
   2023 年は、社会における破壊的テクノロジーの役割の転換点になり、政治的・経済的に広範な影響を及ぼすだろう。デマゴーグやポピュリストは、小さな世界での政治的利益を得ようとして AI を武器に使うだろう。犠牲となるのは民主主義や市民社会だ。ドナルド・トランプ、ジャイル・ボルソナロ、ビクトル・オルバンらはソーシャルメディアと偽情報の力を利用して有権者を操り、選挙に勝ってきた。技術の進歩により、どのような政治的な立場にあろうと、すべての政治指導者にはこれらのツールを活用することに構造的利点が生まれるだろう。
   更に、世界中各地で拡散している選挙妨害や、ロシアや中国などの自国の反対意見を封じ込めようとする独裁者にも利用されるなど、ICT技術が他国の民主主義を弱体化させていると危機的状況を説いている。
   しかし、AI は驚異的な生産性の向上ももたらしている。印刷機から核分裂、インターネットに至るまで、革命的な新技術には、人類の進歩を促す力と同様に、人類の最も破壊的な傾向を増幅させる力がある両刃の剣である。前者は歓迎され、促進されるが、後者は過小評価され、通常は無視されて危機を招く。と言うのだが、どの様にしてリスクを避けるのか、ホモサピエンスの叡智が試されている。
    MASS DISRUPTIONと言う英語のMASSの迫力を思えば、ハードパワーではなくソフトパワーのワンクリックで一瞬にして人類社会が崩壊する恐ろしさが迫ってくる。

   リスク No.7 世界的発展の急停止 ARRESTED GLOBAL DEVELOPMENT 日経は、「途上国成長打撃」
   過去 2 世代の人類は、広範な繁栄が急拡大する前例のない時代を経験した。世界経済の規模は 3 倍に拡大し、ほぼすべての国が著しく豊かになり、10 億人以上が極度の貧困を脱して史上初のグローバルな中産階級の仲間入りをし、発展途上国と先進工業国の間の機会格差が縮小した。乳幼児死亡率や平均寿命、教育、女性の権利などが構成する人間開発指数は、世界中で生活水準と生活の質がほぼ絶え間なく向上していること
を物語っている。
   その進歩が逆行した。コロナのパンデミック、ロシア・ウクライナ戦争、世界的なインフレの高騰という衝撃が 3 年にわたり相互に強化し合いながら続いたことが原因だ。2023 年には、経済、安全保障、政治における利益がさらに失われ、何十億もの人々がより脆弱な状況に置かれるであろう。インフレの世界的な衝撃によって物価上昇、金融引き締め、世界的な成長鈍化が国民の経済的政治的な不安をあおり、途上国の脆弱な人々に特に大きな打撃を与えるだろう。   
   ほとんどの途上国の政府は、こうした惨状や人道的危機に対処するための財政的余力を欠いており、さらに、先進国も、経済成長鈍化や金融情勢の緊迫化によって政府開発援助を削減し、ウクライナへの援助が原因で、その支援助成が抑制されることになろう。
   地球規模の問題なので、こんな時ほど、中途半端な国連ではなく、世界政府や真面な能力を備えた国際機関の存在が希求される。

   リスク No.9 TikTok な Z 世代 TIK TOK BOOM 日経は、「デジタルネーティブ世代の台頭」
   1990 年代半ばから 2010 年代初頭にかけて生まれた Z 世代は、生まれたときにすでにインターネットが存在していた最初の世代だ。デジタル機器とソーシャルメディアは、国境を超えて彼らを結びつけ、最初の真にグローバルな世代を作り出した。そしてそのことが、特に米国とヨーロッパにおいて、彼らを政治的・地政学的に新しい存在にしている。Z 世代は、企業や公共政策を再構築するためにオンラインで組織化する能力と動機の両方を持ち、ボタンをクリックするだけで世界中の多国籍企業の活動を困難に陥れ、政治を混乱させることができるのだ。
   Z 世代は、2008 年の金融危機、アラブの春とシリア内戦、英国の EU 離脱(ブレグジット)、トランプの当選、ブラック・ライブズ・マター運動の拡大、#MeTooなどの時代の激動と、指導者や既存の制度の失敗によって生まれた過激化した世代で、その前の世代よりも幅広い期待、要求、政策への衝動を持っており、政治的変化や経済的達成のための制度や既存の手段に強い不信感を持っている。
   Z 世代は、職場を再定義し、人材の採用、組織作り、保持、育成、新しいキャリアパスと機会の提供、真の多様性とインクルージョンの促進、そして社会、政治、環境に与える影響の見直しといった根本的な変化を企業に促している。企業は、好むと好まざるとにかかわらず、政治的・地政学的な議論に参加するよう、かつてないプレッシャーを感じることになるだろう。と言うのだが、
   過激かも知れないが、格差の拡大や富の集中など自由市場経済をスキューして資本主義システムを危機に追い込み、民主主義さえ危うくした元凶の一つは多国籍企業であるから、良いか悪いかは分からないが、Z世代の活動は軌道修正でもあり、多国籍企業への挑戦は時代の潮流であって、リスクではなく受けて立つべきだと思っている。
コメント
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