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熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

本はTVに対抗出来る良識の砦・・・田原総一朗

2007年07月05日 | 政治・経済・社会
   最近のTVは、益々見易くなって、寝転んで見ていても分かるように視聴者を益々パッシブに愚民化して来ており、更に、新聞もそのTVを真似て活字を大きくして刺激的刹那的な報道に流れてきているが、非常に危険な状態である。
   ところが、本を読むには、相当の集中力と積極性をもってアクティブに対応せねばならずエネルギーを要して大変だが、しかし、本では、TVには太刀打ちできない論理的展開が可能であるので、TVや新聞報道の安直さを押さえ、その軽佻浮薄な付和雷同的な危うさを矯正できる力があるので、対抗力として頑張ってもらわなければならない。
   田原総一朗氏は、ビッグサイトの「東京国際ブックフェア」の基調講演「時代を読む」で、丁寧に質問に答えながらサンプロで御馴染みの田原節を1時間半にわたって披露した。

   TVと活字の違いについて語るため、まず、15分のサンプロのTV番組と新聞報道が橋本総理を失脚させたと言って、当時のことを語った。
   不良債権の存在を知らされていなかった橋本総理は、財政再建、税制改革を標榜していたが、田原氏に減税か増税かと詰め寄られて2分間顔面蒼白で脂汗を滲ませてTVカメラの前で絶句してしまったのだが、翌日、新聞紙上に「総理迷走」と言う文字が躍り、国民が等しく「わけの分からない総理」だと言う印象を持ってしまったので失脚した。

   TVは、フローで、活字はストックだと言う。
   TVでは情報は、視聴者が何も考えなくても受け身で楽に入って来て、ストレートに強烈なシグナルとノイズを伝える。
   ベルリンの壁が崩壊する以前に、東独政府は活字媒体などを通じて論理的に自己政権の正当性を主張し続けたが、自由に入ってくるTVを見て、東独国民は、西独の生活水準が遥かに自分たちのものよりも高いことを知り真実を覆い隠し続けることが不可能になった。このTVのノイズが壁の崩壊に繋がったのである。

   TVのノイズと衝撃的なインパクトを上手く利用して成功したのが小泉前総理だと言ってその効果などを説明していたが、面白かったのは、小泉氏の中身も何もないワンフレーズ・ポリティックスと血も涙もない冷酷非道な仕打ちについて語った方である。
   亀井静香に対する裏切りについては詳しくは語らなかったが、竹中大臣との話だと言いながら、郵政民営化は全く必要がないのに敢行したと言う。
   小泉政権成立直後、竹中大臣から田原氏に電話が架かって来た。
   「困ったことになった。小泉さんは、郵政を民営化すると云っている。理由は、郵貯が財政投融資に回っているのでその息の根を止めるためだと言っているが、これは小泉首相の誤解で、もう既にこれは止まっていて、郵政を民営化する必要がなくなっている。」と言ったと言う。
   それを云えば良いではないかと云ったら、小泉さんは人の云うことなど聞かない、自分はゼロから何故郵政民営化が必要なのかを考えると言って、その理由を考え抜いて説明したいと言うので石原伸晃氏を交えて聞いたが二人とも分からなかった、と云ったことはないのだがと言いながらこんな話を披露した。

   それでは、参議院で郵政民営化法案が否決されて衆議院を解散し、反対した自民党議員を刺客まで送って闇討ちにしたあの政変は一体何だったのであろうか。
   これが真実なら全く許せないことだが、一方で、私自身は、良かれ悪しかれ、小泉首相の形振り構わない一方的な政変劇があったために、淀んで制度疲労していた日本の政治経済社会体制に何らかの創造的破壊と変化を起こして、新しい均衡状態に達したことだけは否定できないとは思っている。
   しかし、長い不況に喘ぎ嫌気がさして閉塞感に陥っていた日本人に、変化と改革を(?)強烈にアピールした小泉劇場は、一種のヒットラー現象の現出だったのかも知れなかったと思うと恐ろしい話でもある。

   あのノック青島現象もそうだが、田原氏が言うように、TVと新聞報道の連動したスポットライトが舞台で踊る劇場型政治の推移については、余程国民がしっかりしていないと、大変な方向に進んでいく心配がある。
   やはり、刹那的でパッシブなメディア情報に煽られないためにも、じっくり、活字と格闘して論理的展開に勤しむことも大切なのであろう。
   50年以上も前に、大宅壮一がTVに対して「一億総白雉化」と云ったが、私は、殆どBSやデジタル放送、海外メディアのニュース番組などしか見ないが、確かに、ゴールデンアワーでも民放の番組は酷すぎる。
   NHKのニュースは仕方なく見ているが、せめて、BBCやCNNを見習う気構え程度は見せて欲しいと思っているが、やはり、日本の民度の水準と言うことであろうか。

   ところで、もうすぐ参議院議員選挙である。
   田原さんは、民主党に勝たせたい、二大政党時代の実現が必要であると付け加えたていた。
コメント
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