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熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

イノベーション・ジャパン2005・・・大学の「知」で新産業創造

2005年09月27日 | 経営・ビジネス
   今日から3日間、東京フォーラムで、産学官の技術連携をテーマに「大学見本市」が開かれている。
   地下のホールでは、大学を中心に、産業及び官庁が協力して、「ナノテクノロジー・材料、ライフサイエンス・バイオ、医療・福祉、IT、環境・エネルギー、製造技術・ロボット、知財本部」に分かれて、展示会や新技術説明会が行われている。
   
   日本の更なる経済社会の発展の為に、大学の優れた知の創造・技術革新のシーズを、社会のニーズに合わせて企業が活性化し事業化する、そのマッチングの機会を官のサポートにより効率よく実現するするためにはどうするのが良いのか、そんな問題意識での産官学の協働の模索である。
   
   かっての産学間における技術移転は、「学」から「産」への一方通行であったが、今日では、大学と企業とが、イノベーションの初期の段階から、包括的な技術契約を結んで、共同で知識を交換する場を設けて開発する等、継続的な協働が恒久化して来ている。
   アメリカのIT革命は、正に大学発のベンチャーが始動し、産学の協働による技術革新と新産業革命の幕開けであったが、日本も、特に国立大学の法人化以降、大学からのベンチャーが動き始めている。

   同時に開かれたフォーラムの基調講演は、日立の庄山悦社長の「ユビキタス情報社会をイノベートする産学官連携」で始まった。
   1910年に日本で始めて5馬力のモーターを作り出した日立も、元々はベンチャー企業であり、日本の製造業は、このような限りなきベンチャー精神を発揮して、世界の強豪を相手に革新的な技術の開発に邁進しながら今日の技術王国日本を築いてきた。

   庄山社長の強調したのは、創業の志は「自前主義」であったが、今日では、産官学の連携と社会との協創が必須だと言うこと。特に、大学との包括的連携を強化して、価値の協創、即ち、共同の研究成果を事業化して、差別化による創業者利潤を追求することが重要だと言う。
   現在開発中のHD DVDに触れて、ナノテク技術の超先端性を行くものだと説明する。
   ゴルフで言えば130キロ向こうにホールインワン、ジエット機で言えば0,6ミリでテイクオフするようなもので、アメリカ全土を高度3センチにフラットにする様な途轍もない技術だと言う。
   その後、マイクソフトとインテルが、このHD DVDシステムを導入することに決定したという報道がなされて、日立・東芝・NEC陣営が、更に優位に立った。

   同時に、ブルーレイ陣営のソニーの中鉢社長が、ブルーレイとHD DVDシステムとの統合を断念したと報道した。
   中鉢社長は、技術はブルーレイの方が上だと言うが、ダブル・スタンダードになれば、ユーザーは如何に泣くか、ご存じないのであろうか。
   ソニーファンの私は、ベータ方式のレコーダーをイギリスにまで持ち込んで愛用し続けたが、ソフトも貧弱化し、テープも無くなり、精根尽きて膨大な録音テープと機材を泣く泣く捨てた時のあの無念さ。
   本田宗一郎社長は、亡くなるまでベータに操を捧げたというが、私には出来なかった。
   残念だが、マイクロソフトとインテルがHD DVD方式を取ると決めた以上、ブルーレイを買うのを止めざるを得ない。

   話が横道にそれてしまったが、イノベーションと言う言葉でいつも気になるのは、「イノベーション」と言う言葉の理解である。
   日本語で、イノベーションを「技術革新」と言う言葉に置き換えてしまったので、今回のこの重要な「イノベーションジャパン2005」も間違いなく技術革新とと言う共通認識で進められているが、これは、イノベーションの元祖・シュンペーターやピーター・ドラッカーの意図するイノベーションとは違っている。
   
   本論に入ると長くなるのでシュンペーター理論の核心部分だけ記しておきたい。
   「経済発展の理論」の中で論じているが、「この世界は、いち早く新しい可能性に気付き、それを実行に移そうとする企業家によるイノベーション(新結合)の遂行によって破壊され(発展す)る。(これが、経済発展の創造的破壊理論)」
   企業発展を策する企業家(アンテルプルヌール)を、「イノベーションの遂行を自らの機能とし、その遂行に当たって能動的要素となるような経済主体」だと言っているが、要するに、リスクをとってイノベーションを事業化して創業者利潤を追求する事業家を言うのである。
   イノベーションをシュンペーターは次のものだとする。
(1)新しい財貨の生産
(2)新しい生産方法の導入
(3)新しい販路の開拓
(4)原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得
(5)新しい組織の実現
   従って、技術革新は上記の(1)であり、例えば、ユニクロが、中国で衣料品を製造して日本で安売りしたのも、イノベーションなのである。

   まあ、シュンペーターがどう言おうと関係ない、日本ではイノベーションは技術革新なのだ、と言うならばそれも良し。
   しかし、それだと、シュンペーターの忠実な信奉者ドラッカーの経営学が理解できないであろうと思っている。
   

   
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