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「コロナ禍」のファッションは、「温故知新」

2020-07-12 16:21:41 | ビジネス

朝日新聞のWEBサイトを見ていたら、「コロナ禍」のファッションショーのアイディアは、70年余り前にあったのか?!という、記事があった。
朝日新聞:ディオールがミニチュア版ドレスで魅了 コロナ禍のパリ・オートクチュール

パリ・オートクチュールといえば、ファッションの世界でも最高峰といわれるほど高価で豪華なものだ。
かつて、欧州の貴族の当主が亡くなると、オートクチュールのメゾン(=店舗兼デザイナーの仕事場)が1、2件潰れると言われるほどだった。
それが欧州から石油産出国の王族となり、顧客の層も随分変わったと言われている。
今では、もっと客層が変わっているかもしれない。
ただ、どんな時代でも「オートクチュールの顧客」は世界中のどこかにいて、その顧客たちはメゾンから送られてくる「コレクションの招待状」を持って、オートクチュールのショーに出かけ、気に入ったデザインのナンバーをメゾン側に伝え、数回~10数回に及ぶ仮縫い、フィッティングを店舗で行い、やっと届けられるという、パリの店舗に何度も足を運べるだけの時間とお金が必要なシステムであることには、変わりない。

しかし、世界的に感染が拡大している「新型コロナウイルス」の前では、このようなオートクチュールのショーをすることができない。
そこで考えたのが、第2次世界大戦末期から戦後しばらく行った「オートクチュールを着たミニチュア」のツアーだ。
このような「ミニチュアによる、オートクチュールツアー」というモノがあった、ということは知らなかったが、今回はミニチュアをドールハウスに入れ、顧客のいる地域をめぐるのではなく、ネットで「LE MYTHE DIOR」という短編映画を配信したのだ。
Dior Autume-Winter 2020‐2021:LE MYTHE DIOR

何とも退廃的で幻惑な映像美を感じさせる、プロモーションビデオだ。
退廃的で幻惑さを感じさせる映像ではあるが、プロモーションビデオとしての役割もしっかり果たしている。
それはミニチュアに着せたドレスを、モデルたちが実際に着て見せているからだ。
ミニチュアでは分からない「人が着て動く」ことでわかる、服の魅力もしっかり伝えているのが、約70年前の「ドールハウスでのツアー」と、大きく違うところだろう。

もう一つ「LE MYTHE DIOR」を見てわかることは、オートクチュールの制作過程がわかることだろう。
お針子さんたちが、布の端から1本1本丁寧に糸を抜き、フリンジをつくるなどの細かい作業などは、オートクチュールが既製服とは全く違う物である、ということを感じさせるには十分だろう。
まして、昨今のファストファッションと同じ「ファッション」ではない、ということを改めて知ることができる。
朝日新聞の記事中にある写真などを見ることで、「オートクチュール」とは全く縁がない(私を含む)生活者にも、その繊細で細やかな部分まで見ることができる。

それだけではなく、今回のデザインを見てクリスチャン・ディオールが戦後初めて開いた時話題となった「ニュールック」を思わせるようなウエストを絞ったデザインが見られたことだ。
「原点回帰」なのか?それともディオールが生前「これからの女性」をもう一度訴えたかったのか?は、知る由もないのだが、オートクチュールに限らず2020年-2021年の秋冬のプレタポルテでも、このような「丁寧な服作り=ファッションの在り方」を見ることができた(特に、川久保玲さんや山本耀司さんのプレタポルテでは、テーラーメイドの手法と思われる服作りがされていたように思う)。

「消費するファッションからの脱却」を、もしかしたらディオールはこの「LE MYTHE DIOR」で言いたかったのかもしれない・・・と感じている。



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