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女性マーケターから見た日々の出来事

病気を受け入れる社会に

2012-04-13 12:32:53 | 徒然
昨日京都の繁華街で、てんかんの患者さんが交通事故を起こし、8名の方が亡くなられた。
事故のあった場所は、私も京都へ出かけるたびによく行く場所だったので、とても驚いた。
事故現場近くには八坂神社や桜で有名な円山公園などがあり、亡くなられた方の中にはお花見を楽しみにしていらっしゃった方もいらっしゃったようだ。
亡くなられた方々のご冥福を祈ると共に、怪我をされた方にはお見舞いもうしあげます。

事故を起こした運転手がてんかんを患っていた、ということが分かったのは昨日の夜。
そして、ニュースの一部は「てんかん患者が起こした交通事故」という内容へと、変わっていった。
そしてこのような事故が起きるたびに、病気を持っている人はクルマの運転をすべきではない、というコトが言われる。
確かに、クルマを運転しなければ事故を起こすことは無い。
だが、クルマを運転しなくては生活に支障をきたす人も少なからずいるのでは?と、考えるとこの問題は病気を持っている人だけの問題ではないような気がしている。

そんなことを感じるのは、私が乳がんという病気になってつくづく感じることがあるからだ。
それは「がん=死ぬ病気」という認識が未だに強く、結果私のような「元気すぎる乳がん患者」であっても、こと仕事というコトになると断られるケースがあるからだ。
そのような経験をするたびに感じることは、「病気を理由に社会から切り離すリスク」というコトだ。

今回事故を起こした運転手は、担当医師からもクルマの運転を止められていたようだが、それを職場で話すことは無かったようだ。
「なぜ話せなかったのか?」と考えると、おそらくてんかんでクルマの運転が出来ないと話すことで、仕事を失うということが怖かったのではないだろうか?
だからといって、勤務先の企業を批判しているのではない。

おそらく日本の場合、多かれ少なかれ風邪やインフルエンザなどのような一過性の病気で無い限り、仕事を辞めて治療に専念すべき、という考えが一般的だと思う。
「治療に専念する」という選択は、ベストだと思う。
ただしそれは、復職できるという確約があってのコトだ。
長期的治療を要する病気(多くは、投薬のみの治療)となると、仕事に支障がほとんど無くても退職に追いやられるケースが多い。
それはメンタル疾病であっても、同じだろう。
結果、経済的問題で治療を断念したり、治療後仕事に就けず経済的問題を抱えるという人が実は多く、それが社会保障費の増加に結びついていることも考えられる。

しかし、考えてみれば職場でそれなりのキャリアを積んだ人材を長期的治療(多くの場合は、投薬での治療で仕事をするには問題が無い)という理由で、退職させるというのは次の人材育成のためにかかる時間や労力、経済的負担を考えれば決してプラスだとはいえないはずなのだ。
特にこれから先の人口構成を考えれば、社会的にも職務経験も豊富な人材を積極的に活用していく必要がある。
にもかかわらず、残念なことに日本の社会、特に企業は「病気を受け入れる」というコトができていない。

もう一つ「社会が病気を受け入れない」という弊害が、がんなどの検診率の低下にもなっている。
早期発見できれば、完治し元気に普通の生活できるのに、病気で仕事や経済的面を失うことを恐れて、手遅れの状態で治療することになり、医療費など社会保障も増えることになる。
医療費の削減の基本は、予防と早期発見・早期治療と治療時の経済的不安の解消なのだ。

今は、病気など関係が無い!と思っていても、決して他人事ではない、というのが私が乳がんになった感想だ。
だからこそ、メンタル疾病を含め社会が病気を受け入れる経済的・社会的メリットは、とても大きいと実感をしている。


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1 コメント

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Unknown (さぶ)
2012-04-13 23:30:59
社会基盤に関わる重要な事ですね。
病気で一時的に離職しても復職できる制度が必要なのだろうと思います。そう言ったサポートが気持ちのゆとりを持たせ、社会の安定にも繋がるのだろうと思います。
今回の惨事は日本の社会の脆弱さを映し出したものではないでしょうか。
ご冥福をお祈りするばかりです。

実は私も5年前に結腸ガンで、開腹手術ののち化学療法を受けました。貴女さまもどうぞ克服されますようお祈りいたします。
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