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「UNIQLO+J」は、ブランドイメージの好感度をアップさせるのか?

2020-11-13 19:50:34 | マーケティング

Yahoo!のトピックスに、今日から発売開始となった「UNIQLO+J」のニュースがあった。
東海テレビ:マネキンは折られ床にガラス散乱…ユニクロでジル・サンダーのコラボ商品に客殺到し一時パニックに

まず最初に感じたのは、「新型コロナウイルス 第3波か!」といわれているにもかかわらず、「3密状態」での異常さだった。
確かに、名古屋人は「話題性に弱い」という一面もあるのだが、この光景は異常な気がした。
「ここまでして、ユニクロとコラボした、ジル・サンダーの服が欲しいのか?」という気がしたからだ。
このような、熱狂状態はユニクロの中でも大型店舗といわれる全国の店舗で、展開されていたようだが、「熱狂して買っているお客さんは、ジル・サンダーというデザイナーを本当に知っているのか?」という、疑問もわいてきた。

というのも、ユニクロとジル・サンダーとのコラボ商品企画そのものは、今回が初めてではない。
先回の時には、発売当初は話題にはなったが、これほどまでの熱狂ぶりではなかったし、しばらく経ってからいわゆる「バーゲン価格」で、販売されたような記憶があるからだ。
なんとなく「有名デザイナーらしい、ジル・サンダーの服がユニクロで買うことができるらしい。有名デザイナーの服がユニクロ価格で購入できるなんて、ラッキー!」程度(といっては、失礼だが)だったのでは?という、気がしている。

もう一つ気になったことは、前回のコラボ商品が販売された時とは全く違う「取引環境」が登場している、という点だ。
「取引環境」という表現は大袈裟だが、いわゆる「転売ヤー」が、転売目的で購入しているのでは?ということなのだ。
「ジル・サンダー(という有名らしいデザイナー)+数量限定(=希少価値)」という、転売の好条件を「転売ヤー」が見逃すはずがない。
実際のチラシでは「転売目的の購入は、お断りさせていただきます」と表記してあっても、個人で購入することに対しての規制ができるはずもなく、「転売ヤー」が個人として購入し、直後に転売したとしてもユニクロ側は、文句をつけることができない。
実際、販売直後から転売されているようだ。
Jocee:『ユニクロ+Jジルサンダー』が販売開始で売り切れ続出。ゲット&口コミまとめ。高額転売に。再販は?

UNIQLOがある程度人気の高いデザイナーとコラボをして、商品を売り出すことに口をはさむ気はない。
ファッションデザイナー側にとっても、アパレル産業の不況によってスポンサーとなってくれる企業は、ありがたい存在だと思う。
ただ、このようなビジネスによってデザイナー自身のブランド価値は、どうなってしまうのだろう?という気がしている。
ジル・サンダー自身のブランドで展開し、発表しているコレクションを見て、ファンになっている人たちからすると、心境複雑なところがあるのでは?
Fashion Press:ジル・サンダー2021春夏ウィメンズコレクション

昨年あたりから、ファッション業界は「サスティナブル」とか「SDGs」という言葉が、盛んに使われるようになった。
それは生活者に対しても、ファッションに対しての意識変化を求めるモノで、高価なモノはそれなりの品質の良さがあり、大量消費ではなく自分のファッション感性を磨いて、自分らしさの表現のファッションを求めて欲しい、という変化でもあったと理解している。

もちろん、ビジネスとして展開するのだから、当然のこととして「売上・利益」ということが重要視されるはずだが、今回の騒動を見てみると、デザイナー・ジル・サンダーの思いとはかけ離れたものだったのではないだろうか?
そして、ジル・サンダー自身のブランドに影響がなかったのか?という、疑問もある。
ジル・サンダー側は、安っぽい、ファストファッションを提供しているつもりは、決して無かったはずのでは?と、思うからだ。