虚空を観じて

今感じたことを書くことは、年取った脳みそにいいんじゃないかと考えて認めています。日常の風景から、過去の記憶まで。

一瞬の風景

2013年06月14日 | Weblog

入院しているとき、

点滴をしながらのトイレのかえり、一人の老婦人に声をかけられた。

「あんたは、いつ入院したのかね?」

「昨日なんですよ。めまいが激しくて、動きがとれず、それで」

「そうなんですか。私は、毎月一回入院。ガンだから」

と、明るく笑いながら言った。

外は雨だった。

窓が5Cmほどあいている。風が入る。

話し込んではいけないと思い、そのまま、部屋に戻り、横になった。

点滴の影響か、しばらくすると、またトイレに行きたくなって、鈍い動作でトイレに向かった。

すると、さっきの老婦人が、5Cm開いた窓の外を見ている。じっと見ている。

何を見ているのか、分からないが、微動だにせずに、外に顔を向けている。

声をかけずに、そのままゆっくり通り過ぎた。その時、

「ああ、風が気持ちいい」

と、老婦人がつぶやいた。

風は湿っていて、ねっとりしていた。

 

 

 

 

 

 

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