青山潤三の世界・あや子版

あや子が紹介する、青山潤三氏の世界です。ジオログ「青山潤三ネイチャークラブ」もよろしく

中国の野生植物 Wild Plants of China リンドウ科Gentianoceae-16

2021-02-27 16:20:06 | コロナ 差別問題と民主化運動 中国の花


★2月26日に記事に、いいね!その他ありがとうございました。

Gentiana arethusae 輪葉竜胆 (地域集団:雲南/四川省境山地) 〔sect. Kudoa 多枝組〕

香格里拉から雲南/四川省境の山地までは、結構遠く感じるが、それは一度東南方向の香格里拉に戻ってから再び北上するからであって、実際の距離は、思ったほか離れていない(直線距離約80km)。

大多数の個体は、白馬雪山産と同様の「典型ナナツバリンドウ」*(「川東竜胆Gentiana arethusae var. arethusae」の変種)に帰属する。

*何度か述べてきたように、Gentiana arethusaeとされる植物は、写真や標本や図が紹介されているものの全てが、原変種(川東竜胆)以外の個体(概ね変種var.delicatula「七葉竜胆」)である。原変種は、変種「七葉竜胆」に比べて、「花がより大きい」ほか、萼裂片の形の違いなどが文章で示されているだけで、実態が良く分かっていないようである。分布域も、この一群としては、地域(四川盆地の南)も標高(3000m未満)も、ほかと大きく異なっている。ということで、「原変種」の存在は無視をして、種「Gentiana delicatula七葉竜胆」としてしまえば良いのであろうが、まあ、そうもいかないのだと思う。そこいら辺の事情には、僕は興味がない。それでもって、とりあえずは(ほかの近縁数集団共々)ひっくるめて「輪葉竜胆Gentiana arethusae」とし、明らかにvar. delicatulaに相当する個体(あるいは集団)を「典型ナナツバリンドウ」として話を進めて行く。

(以下に記す最初の2つは印象的指標で“科学的”とは言えないとしても)
「花色が明るい空色」
「ふっくらした花筒」
「花冠裂片の先端に細い針状突起を備える」
加えて、顕著な「超小型ロゼット・クラスター」の存在。
それらが、「典型ナナツバリンドウ」に明らかに共通する特徴である。
輪葉や萼裂片や花冠裂片の数と形は、極めて個体変異に富み、分類指標としては適さない。

この地域の集団が、(僕が観察した限りに於いて)白馬雪山の集団と異なるのは、「典型ナナツバリンドウ」以外にも、別の特徴を持つ個体が混じっていることである。

すなわち、
「花色が紺色を帯びる」
「花筒が余り膨らまない」
「花冠裂片先端に針状突起を欠く」
「超小型ロゼット・クラスターはない」

これらの特徴を持つ(というよりも「典型ナナツバリンドウ」としての特徴を持たない)個体または集団(各各単系統群には所属しない可能性あり)の帰属を、どのように捉えていくか。次回(18回)の「香格里拉産」、その次(第20回)の「四姑娘山産」、次の次(第22回予定)の別series(華麗系)の「フタツバリンドウ」共々、これから追々考えて行こうと思っている。



雲南四川省境山地(中旬大雪山)稜線の僅かに(数10m)四川省寄り。標高4400m付近。2010.9.21(以下同)



黄色い花はベンケイソウ科キリンソウ属。この季節になると、他にはリンドウ科のサンプクリンドウ属の種、同タカネリンドウ属の種、キキョウ科の一種、キンポウゲ科トリカブト属など、限られたグループの花しか咲いていない。






ふっくらした花筒、明るい空色、輪生葉を伴った短い花茎、、、等々の特徴は、白馬雪山産の「典型ナナツバリンドウ」とほぼ相同。ただし、花冠の外面と内面の状線模様は、僕が出会った個体に関して言えばどれも明(白)色で、白馬雪山産の一部個体のように、外側の条線内が濃色になったり、内側に濃い青色の(疑似雄蕊のような)条線を生じたりはしない。






やはり、顕著な「超小型ロゼット・クラスター」が生じる。












花冠裂片の先には針状突起がある。









花冠裂片の数は、(同じ株であっても)個体差が著しい(4片~9片)。この個体は9片、主裂片間の副片を加えると18裂。



「白い石灰岩の鋸刃」の最上部の更に上に、もう一つ小さな岩塊があった。その周辺に咲いていた「輪葉竜胆」は、「典型的ナナツバリンドウ」とはやや異なった雰囲気を持っていた(本文参照)。












青味が強く、花筒は細目で、外側の明色部は心持ち黄緑色味を帯び、花冠裂片先端の針状突起を欠く。「フタツバリンドウ」にやや類似するが、茎葉は輪葉状になる。



この株は花筒がふっくらしていて、「典型ナナツバリンドウ」との中間的なイメージ。



青色:雲南省白馬雪山(標高3900~4100m付近)
空色:雲南・四川省境(標高4300~4500m付近)
黄緑:雲南省香格里拉(標高3300m付近)
緑色:四川省四姑娘山(巴朗山=標高4500~4700m付近/長坪溝=標高3300~3500m付近)
桃色:四川省雪宝頂(標高4100m付近)




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国の野生植物 Wild Plants of China リンドウ科Gentianoceae-15

2021-02-27 12:57:02 | コロナ 差別問題と民主化運動 中国の花



読者の方々に質問です(僕は頭が悪いので、教えて頂ければ幸いです)。

【Ⅰ】
マスクは、なぜ必要なのですか?

【Ⅱ】
「沖縄に対する日本」
「台湾・チベット・ウイグルに対する中国」
の違いを教えて下さい。

*毎回(リンドウの項目奇数回)のブログ記事の冒頭に、この質問を繰り返し続けることにします。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今回(第15回)は、次回(第16回)で取り上げる「ナナツバリンドウ」のもう一か所の撮影地、雲南/四川省境の中甸(迪庆)大雪山*について紹介しておきます。*雲南側山麓の翁水村では「貢千山」と呼んでいました。

今はどうか知りませんが、少なくとも10年ほど前頃は、観光地としては全く対象外でした(今もその可能性があります)。ただ、かなり多くの人には知られています。というのは、この山は四川省と雲南省の省境で、成都から昆明に向かう際、山(チベット高原)側のルートを採った人は、ここを通るからです。成都からだと3~4日目、昆明からなら2~3日目。

まあ、成都-昆明の移動だけで、わざわざチベット高原回り(外国人はチベット自治区を通過することが困難なので手前を横切るこのルートを選ぶことになる)をとる人はいないでしょう。実際に使うのは、雲南省の香格里拉と四川省の理塘(あるいはその間の稲城、郷城、翁水など)を行き来する現地民、中国人の観光客(概ね若者)、それに外国人のバックパッカー(バス2~3台に一人くらいの割合)ですね。

この山塊のすぐ東には、近年一気にメジャー観光地化した「四川省香格里拉(亜丁)」があって、そこに「雲南省香格里拉(中甸)」から向かう観光客も利用しています(もしかするとここを通らずに「両省香格里拉」をダイレクトに結ぶ道が一般化しているかも知れませんが)。

この、「成都昆明裏ルート」は、標高4000mを超す峠を7~8か所越えます。ただし、その大半に当たる康定の西から理塘の南までの「峠」(いずれも海抜4500m以上)は、峠というよりも平坦な「草原」です(理塘の町自体が4000mを超える)。

四川省側からでは、雲南省との省境近くになって「峠」らしい険しい山道になります。中でも最もダイナミックなのが、この省境の「大雪山亜口(亜口または山口は峠の意)」です。四川省側西南端の郷城の町から、雲南省側の翁水の村まで、数10㎞にわたる険しい道です。

この山群の主峰がどれなのか僕は知らないのですが、幾つかの資料をチェックしてみたところ、5090mと記されていたり5300mと記されていたりします。峠の標高は、大まかな等高線の入った地図でチェックして、おおよそ4500mぐらいと思われます。

他の山々のように「氷雪」の峰ではありません。なんとも形容しがたい怪異な姿の、おどろおどろしい赤や白の色に覆われた、特殊岩石の山々です。植物相や昆虫相も、さぞ魅力的と思われます。

ただし、ここを目的地に目指すには、車を(ガイド共々)チャーターしてということになります(僕にはそんなお金はない)。路線バスは、四川側からも雲南側からも毎日最低6本通るのですが、上下線ともお昼前後に峠を通過してしまうので、下車して探索後乗り換えるには時間が無さ過ぎる。帰路はヒッチハイクということになりますが、午後になると滅多に車が通りません。

せめて、路線バスの車窓からの眺めを満喫すればいい(僕は10回以上往復していてその都度車窓から写真を撮りまくっている)のだけれど、大抵の乗客は眠りこけている。山々の風景を眺めるだけでも、この路線バスに乗る価値は十二分にあると思うので、勿体ない限りです。

ということで、(車窓からの)風景写真は大量にあるのですけれど、実際に現地での撮影はほとんど行っていません(雲南省側の麓の村・翁水には何度も訪れているのに)。唯一、山に登ったのが、2010年の秋深く。昼の路線バスに乗り、峠頂で下車。そこから、(高山草原の下の森林から白い鋸の刃のように突き出している石灰岩の上端を目指して)辛うじて判別出来る踏み後を辿りながら、省境の山を探索しました。

蝶や植物の探索には完全にシーズンオフで、ごく僅かな種にしか出会えなかった(この時期に咲いていた植物は、リンドウ科三属の他、キキョウ科、ベンケイソウ科、キンポウゲ科などの数種だけ)のですけれど、最大の収穫は、蝶では、シータテハ属の異様に赤味の強い翅の種Polygonia interpositaヒイロシータテハ(以前にもブログで紹介したことがあるはず)、植物ではナナツバリンドウを、それぞれ多数撮影出来たことです。

これらの種は、別に特殊岩石帯に固有の存在というわけでもなく、この辺りの高標高地帯に広く分布しているのでしょうけれど、見方を考えれば、この一帯(雲南省西北部の山岳地帯)が広く特殊岩石に覆われている、と捉えることが出来るのかも知れません。

ナナツバリンドウは、省境稜線に沿った山腹(白く煌めく不思議な石片に覆われていた)に数多く見ることが出来ました。その大半は、白馬雪山で出会った「典型ナナツバリンドウ」と相同の集団(花冠裂片や輪葉の数はバラエティに富んでいる)のようなのですが、中に、典型集団とはやや異なる個体も、少数ですが見出し得ました(それらを撮影したのは「鋸刃」上端ピークの周辺だったのだけれど、それが必然要因なのかどうかは分からない)。

それらの個体は、次回紹介する香格里拉産の個体や、その次に紹介する四川省四姑娘山の集団に何らかの相関性があるようにも思う(あるいはそれらを便宜上「広義の“ムツバリンドウ”」に一括所属せしめても良いのかも知れない)のですけれど、現時点では詳しいことは不明です。

いずれにせよ、もう一度この山々を訪ねたい(出来れば夏のシーズンに)、と想いながら、果たせないまま10年以上が過ぎてしまいました(最後に麓の翁水村に行ったのが4年前の夏)。

公共交通利用では山の上までの探索は難しい。2010年秋の探訪時も、帰りは日が暮れてしまい、車もほとんど通らず、半分くらい歩き通して、やっと出会った大型トラックに乗せて貰い、夜中になって麓の宿に帰り着きました(トラック運転手さんの親切は忘れられません、ここでお礼を言っておきます)。



雲南四川省境山地(雲南側)。右に見える石灰岩の鋸刃の頂まで行きました。2010.9.21



主峰と思える、おどろおどろしい表情をした山。2010.6.12(路線バス車窓から)



近くから見た“鋸刃”は、平たい本当の鋸のように見えます。2010.9.21



右下の針葉樹はコノテガシワ野生種。2010.9.21



この後、刃の頂上まで登ってみました。結構スリリングで、すぐに降りてきた。2010.9.21



遥か向こうに、麓の翁水村に至る道が見えます。果たして今日中に帰り着くことが出来るでしょうか? 少々心配になってきました。2010.9.21



省境稜線上にもう一つ小さな岩の塊があって、その裾にキキョウの仲間やナナツバリンドウが咲いていました。2010.9.21



峠を越えると、四川省側の岩峰が見えてきます。2010.6.12(路線バス車窓から)



四川省側に少し下った所からの眺め。白く見えるのは雪ではなく特殊岩石。2010.5.22(路線バス車窓から)



こちらは、第2回(ハガクレリンドウ)でも紹介した、雲南省側麓から見上げた省境山塊の一角。白く見えるのは、やはり雪ではなく、特殊岩石です。2010.9.21



省境付近の地図



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「リンドウ補遺:写真解像のチェック」

2021-02-27 12:48:40 | その他



「リンドウ補遺:写真解像のチェック」

読者の皆様に。

今回はテストです。ブログに載せる時に写真を縮小するため、解像力が落ちてしまうことがあります。一度ピクセルを変えて掲載してみます。それでクオリティが上がれば、今後ピクセルを上げて、変わらなければ、今まで通り進行します。その場合は、(写真によっては)やや鮮明さに欠けるものが混じる可能性があるので、ご了承ください。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする