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Gentiana arethusae 輪葉竜胆 (地域集団:雲南/四川省境山地) 〔sect. Kudoa 多枝組〕
香格里拉から雲南/四川省境の山地までは、結構遠く感じるが、それは一度東南方向の香格里拉に戻ってから再び北上するからであって、実際の距離は、思ったほか離れていない(直線距離約80km)。
大多数の個体は、白馬雪山産と同様の「典型ナナツバリンドウ」*(「川東竜胆Gentiana arethusae var. arethusae」の変種)に帰属する。
*何度か述べてきたように、Gentiana arethusaeとされる植物は、写真や標本や図が紹介されているものの全てが、原変種(川東竜胆)以外の個体(概ね変種var.delicatula「七葉竜胆」)である。原変種は、変種「七葉竜胆」に比べて、「花がより大きい」ほか、萼裂片の形の違いなどが文章で示されているだけで、実態が良く分かっていないようである。分布域も、この一群としては、地域(四川盆地の南)も標高(3000m未満)も、ほかと大きく異なっている。ということで、「原変種」の存在は無視をして、種「Gentiana delicatula七葉竜胆」としてしまえば良いのであろうが、まあ、そうもいかないのだと思う。そこいら辺の事情には、僕は興味がない。それでもって、とりあえずは(ほかの近縁数集団共々)ひっくるめて「輪葉竜胆Gentiana arethusae」とし、明らかにvar. delicatulaに相当する個体(あるいは集団)を「典型ナナツバリンドウ」として話を進めて行く。
(以下に記す最初の2つは印象的指標で“科学的”とは言えないとしても)
「花色が明るい空色」
「ふっくらした花筒」
「花冠裂片の先端に細い針状突起を備える」
加えて、顕著な「超小型ロゼット・クラスター」の存在。
それらが、「典型ナナツバリンドウ」に明らかに共通する特徴である。
輪葉や萼裂片や花冠裂片の数と形は、極めて個体変異に富み、分類指標としては適さない。
この地域の集団が、(僕が観察した限りに於いて)白馬雪山の集団と異なるのは、「典型ナナツバリンドウ」以外にも、別の特徴を持つ個体が混じっていることである。
すなわち、
「花色が紺色を帯びる」
「花筒が余り膨らまない」
「花冠裂片先端に針状突起を欠く」
「超小型ロゼット・クラスターはない」
これらの特徴を持つ(というよりも「典型ナナツバリンドウ」としての特徴を持たない)個体または集団(各各単系統群には所属しない可能性あり)の帰属を、どのように捉えていくか。次回(18回)の「香格里拉産」、その次(第20回)の「四姑娘山産」、次の次(第22回予定)の別series(華麗系)の「フタツバリンドウ」共々、これから追々考えて行こうと思っている。
雲南四川省境山地(中旬大雪山)稜線の僅かに(数10m)四川省寄り。標高4400m付近。2010.9.21(以下同)
黄色い花はベンケイソウ科キリンソウ属。この季節になると、他にはリンドウ科のサンプクリンドウ属の種、同タカネリンドウ属の種、キキョウ科の一種、キンポウゲ科トリカブト属など、限られたグループの花しか咲いていない。
ふっくらした花筒、明るい空色、輪生葉を伴った短い花茎、、、等々の特徴は、白馬雪山産の「典型ナナツバリンドウ」とほぼ相同。ただし、花冠の外面と内面の状線模様は、僕が出会った個体に関して言えばどれも明(白)色で、白馬雪山産の一部個体のように、外側の条線内が濃色になったり、内側に濃い青色の(疑似雄蕊のような)条線を生じたりはしない。
やはり、顕著な「超小型ロゼット・クラスター」が生じる。
花冠裂片の先には針状突起がある。
花冠裂片の数は、(同じ株であっても)個体差が著しい(4片~9片)。この個体は9片、主裂片間の副片を加えると18裂。
「白い石灰岩の鋸刃」の最上部の更に上に、もう一つ小さな岩塊があった。その周辺に咲いていた「輪葉竜胆」は、「典型的ナナツバリンドウ」とはやや異なった雰囲気を持っていた(本文参照)。
青味が強く、花筒は細目で、外側の明色部は心持ち黄緑色味を帯び、花冠裂片先端の針状突起を欠く。「フタツバリンドウ」にやや類似するが、茎葉は輪葉状になる。
この株は花筒がふっくらしていて、「典型ナナツバリンドウ」との中間的なイメージ。
青色:雲南省白馬雪山(標高3900~4100m付近)
空色:雲南・四川省境(標高4300~4500m付近)
黄緑:雲南省香格里拉(標高3300m付近)
緑色:四川省四姑娘山(巴朗山=標高4500~4700m付近/長坪溝=標高3300~3500m付近)
桃色:四川省雪宝頂(標高4100m付近)