一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

証人尋問(1/2) (模擬裁判体験記10)

2007-11-30 | 裁判員制度

証人尋問は被害者の志村と目撃者の加東の二人です。
ほかに被告人質問(これは証人尋問とは言わないらしい)があります。

最初は志村証人。
手元にレジュメが配られます。

はじめに供述調書の朗読があります。
レジュメのタイトルに「同意部分」とあるので、弁護側と証拠とすることについて争いのない部分ということだと思います。

内容は会社での経歴や自分や被告人の仕事ぶり、二人のつきあいなどについて。
志村は木村とは仲がよかったが、木村は酒を飲むと陰気になる一方で自分も口が悪い。木村を遠ざけていた意図はなかったし被害にあう心当たりもないが、当日の言動などで気分を害してしまったかもしれない、などという背景事情が述べられます。


そして志村証人の登場

想定の年齢(60歳近く)とは全然違う、若い人が一応作業着を着て出てきます。(後で聞いたところによると裁判所の書記官だそうです。)。

最初は検察官からの尋問。

・しばらく被告人と疎遠になったあたりの事情

志村被告にはそういう気持ちはなかったが被告人は気にしているようだった

・事件当日コンビニで酒を飲んでいた相手と被告人に気づかなかった理由

特に仲がいい相手というわけではなかったし、そんなに盛り上がっていたわけではない。

・寮に戻ってからの出来事

TVを見ながら食事の支度をしていた。食事中に被告人が部屋に入ってきた。
被告人は強い口調で「話がある、外に出ろ」と言ったが、志村は時代劇を見ていたので「食事中だしドラマを見ている。話しならここで聞く」と断ったが被告人は目を吊り上げて「ここではだめだ、外に出ろ」と言って部屋を出た。
被告人はそのまま自分の部屋に戻り、それから外に出て行った(志村は部屋から様子をうかがっていた)。

志村は被告人が刃物を持ち出したのではないかと思い、自分も刃物を持っていけば対抗できるので争いにならないだろうと思い、包丁をタオルにくるんでズボンにはさんで出かけた。
今になって思えば出かけなければよかった。

・加東さんの部屋に寄る

包丁だけでは心もとないので加東さんに助けを求めた。加東は横になっていて「木村に呼び出されたけど」「行けば」「何かあったら来てくれ」「ああ、いいよ」とあまり真剣に受け止めてくれなかった。

・現場

被告人はガード下の街灯のところに立っていた。自分も怖かったので「何の話だ?」と強めに言うと、被告人はいきなり刃物を取り出し、タオルを取っていきなり左胸刺された。
被告人の右手をつかんで大声で加東に助けを求めたが、手をふりほどかれて右胸を刺された。
2回目に刺されたあと血が噴き出してきた感じがしてシャツを見ると血で真っ赤だった。そのあとは力が抜けてよく覚えていない。

この部分については、志村証人が検察官の一番若い人を相手に、どういう位置関係でどういう風に刺されたのかを実演しました。
裁判員の人数が多く横に広がっているので、全員が見れる位置を探すのにちょっと手間取りました。

検察官は弁護人からの反対尋問も想定してかいろんな角度から突っ込みます。

(検察官)「なぜ殺されると思ったのか」
(志村)「何も言わずにいきなり刺してきたうえに、2回目はかなり強く刺された」
(検察官)「あなたも包丁を持っていたが」(加東証言でも、タオルを巻いたままだが包丁を持っていた)
(志村)「いつ抜いたかは覚えていない」

最後は被害者の心情を聞きます。

入院を余儀なくされ、仕事もやめてしまった(もともと腰を痛めていたので廃品回収業はつらかったのもあるが)。今は生活保護を受けている。
自分は刺されるようなことはしていない。
どうか適正な処罰をして欲しい。


つぎに弁護側の反対尋問。
これもメモが配られます。

・過去に被告人が包丁を持ち出したようなことはなかったのに、今回相思った理由は何か。実は貴方も急に呼び出されて怒ったから包丁を持ち出したのでは?

このへん、かなり誘導的に尋問します。そして

・志村さんは3年前に包丁で人を刺して傷害罪で罰金30万円に処せられていますね。(これはメモになし)

ここで検察官から異議。裁判官が質問の趣旨を確認すると、弁護人は証人の証言の信憑性に対する疑義のため、といい、裁判官は「あまり長くならないように」と許可しました。
このへん、一瞬だけ映画やドラマの法廷物風でした。
弁護人は続けます。

・志村さんは今度は罰金ではすまないと思い、自分が包丁を持ち出したことを警察に言えなかったのではないか?

これらに対し、志村さんは「そんなことはない」と答えます。実際にそうでもそうでなくてもそれしか答えられないだろうな、という感じではあります。
ここでは、弁護人は自分の依頼者を守るためなら前科のある人への偏見を利用するような主張をするんだなぁ、とちょいと複雑な心境になりました。

・外に出る前に加東さんに声をかけたのはなぜか。殺意を感じたのならなぜ外についていったのか。被告人が包丁を出したのに逃げなかったのはなぜか。
・事件当日の警察官の調書では最初右胸を刺されて次に左胸ということだったのが、検察官の調書では左、右の順番になっているのはなぜか。
(←事件当日は動転していたが考え直してみると左→右だった)
・志村さんは包丁をいつ取り出したのか。
(←覚えていない)


弁護人は、志村さんも対決する意図があって包丁を持ち出して、もみ合っているうちに刺さったのではないか、という自分たちの主張を裏付けるべく反対尋問をしています。
また、少なくとも志村証言は細かくつめると矛盾があり、実はあまり覚えていないのではないか、自ら包丁を持ち出したことに焦点が当たると自分も困るので、ストーリーを作っているのではないか、というトーンで反対尋問をしました。


つぎに裁判官・裁判員の尋問

裁判官からは、志村さんの当日の飲酒量と普段の飲酒量について
(←普段とそんなに変わらない)

つぎに裁判員からも質問は?といわれて、皆ためらいました。
その中で「志村さんの利き腕は?」という質問が。
答えは右、だったのですが、これは私も疑問に思っていたところです。
証人尋問で実演したところで右手で右の尻のところに包丁を隠していた一方で、加東証言ではかけつけたときに包丁は左手にありました。さらに、実演では1回目に刺された後に被告人の右手を押さえたのは自分の右手でした。そうすると、いつどうやって左手に包丁を持つことができたのだろう、という疑問が浮かんだのです。

でも実際酔っていた上に興奮もあるので、皆正確には覚えていないでしょうし、志村さんも刃物で対抗した、という証拠もない(被告人は傷を負っていないし、包丁にはタオルが巻いたままだった)ので、被告人が志村を刺した(刺さったのではない)というのが事実に近いようにも思えます。
この辺「名探偵コナン」の謎解きじゃないんだからあまり細部のつじつまにこだわってもいけないのかなあ、などとも考えました。

その他2、3の質問があって、最初の証人尋問は終了しました。

(つづく)

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